Facebook、レバノンのテロで安否確認をしないことへの批判を認める:社会とメディアの役割について

本誌で先ほど、「日本のメディアがパリの事件をきちんと伝えていない」という批判に関する記事を掲載しましたが、個人的には、メディアと社会の関係について、こうした批判とは異なる視点で考える必要があると考えています。

その1つが、すでにアメリカでは議論となって、Facebookが批判を受けていた安否確認機能「Safety Check」です。

この機能は、パリに住む人が自分の身が安全であることをプッシュすることで、家族や友人に知らせることができるものです。パリのテロに際して同機能をオンにしたFacebookですが、その前日に起きた、レバノン首都ベイルートでのテロでは、機能をオンにしなかったことが批判を受けています。

こうした声を受けて、CEOのマークザッカーバーグ氏は「世界では、他にも重大な紛争が生じているという批判の声は正しい」と認めるコメントを発表。社内での方針を見直していく姿勢を明らかにしました。

メディアと社会の関係について

Facebookの対応は適切なものだと言えますが、一方で日本における「メディアと社会の関係」については考える必要はあるでしょう。論点はいくつかありますが、まず本当に「日本のメディアは、十分にテロを伝えていない」という批判は正しいのか?という問いです。

これは東日本大震災に際して顕著に見られていましたが、「メディアが報じていない!」という批判は、その人の見落としであるケースも少なくありません。

また、ネットメディアなのか、テレビなのか、あるいは新聞なのか、そしてそれぞれどのメディアなのかという個別のケースを無視して、「日本のメディア」として一括りにすることも危険な議論です。

そして最後に、メディアであっても営利企業であることは無視できません。彼らは、消費者のニーズがそちらに向かっている限り、より娯楽的なコンテンツに向かっていくことは、不可解なことではありません。わたしたちが、パリのテロに関するニュースを欲しているならば、”Quality Content is not Free” という事実を再確認する必要があります。

むしろ「日本のメディアは云々」という議論にばかり注目が集まり、Facebookの「Safety Check」が孕んでいる議論や、なぜ東京タワーやスカイツリーが、シリアやレバノン国旗ではなく、フランス国旗に彩られるのか?という議論が霞んでしまうとすれば、それは新たな問題です。

より有意義な議論に向けて

Facebookのプロフィール画像をフランス国旗に変えることには意味がありますし、個々人の判断に基づく自由な意思表明です。言うまでもなく、プロフィール画像変更をすべてのテロにおいて実施するべきだ、と主張したいわけでもありません。

大切なことは、「日本のメディアは不十分だ!」と主張することだけではなく、なぜその構造が生じているのか?そして、その構造はネットなどの新たなメディアによって、変化することが可能なのか?という具体的な因果関係を持った問いかけでしょう。

そして我々が、英語圏のメディアや社会から学ぶべきポイントの1つは、こうした感情的なやり取りになりやすい事件に際しても、Facebookに対する批判が適切になされ、そこに対するレスポンスがきちんとおこなわれていることでしょう。

もちろん今回のテロに際して、西欧社会と中東社会を極端に二分化して議論を進めるような論考や、対立を煽るような言説も、英語圏においていくつか見られました。それはソーシャルメディアやredditのような掲示板といったレベルから、大手メディアのレベルまで、様々なレベルにおいてです。

しかし一方で、英語圏のメディアがこうしたメタ的な議論にも目を配っていることも事実で、その数は日本語圏のメディアよりも、(割合で考えても)多いような印象を受けます。

シャルリーエブド編集部襲撃事件を振り返ってみてもわかるように、最近の一連のテロや国際テロ組織ISの台頭は、アメリカ・欧州など西洋諸国のシステムや理念に突きつけられた攻撃です。こうした背景から、よりメタ的な議論が希求されているという経緯は間違いなく存在するかと思いますが、一方で日本において不十分な視点であるようにも覚えます。

こうした点を踏まえた議論が、日本のメディアや社会に広まっていくことこそ、我々が1市民としてより “国際的な” 空間に参加できる1つの契機になると考えますし、それを支えるメディアの役割についても、有意義な議論が進んでいくステップになるのではないかと考えています。

参考記事

http://www.latimes.com/world/europe/la-fg-paris-attacks-facebook-safety-check-20151114-htmlstory.html

AUTHOR

石田 健

石田 健

株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。Twitter : @ishiken_bot