現在、もっとも国際社会の関心を集めている話題は「米中戦争」だろう。数年前、すなわちトランプ大統領の就任以前までは荒唐無稽の空想話であったが、現在は単なる笑い話ではなくなってきた。

なぜいま話題に?

「米中戦争」が話題となっているのは、以下の3点からである。

  • 米中貿易戦争は実際、その真っ直中にある。数ヶ月にわたってトランプ大統領と習近平国家主席は、脅しと関税による報復を続けてきた。
  • 一時は終結に向かうと思われたが、ファーウェイ創業者の娘が拘束されたことで複雑化。中国当局がカナダ関係者を拘束する事態となっている。
  • これは両国の政治的脆弱性による突発的なアクシデントではなく、構造的に不可避なものである。

米中間の緊張は、次の理由から「構造的に不可避」。

  • テクノロジーは安全保障の中心であり、各国の産業にとって重要。核や宇宙競争の時代とは異なり、コンシューマー向け製品と技術の重要性が増しており、GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)と中国BTA(Baidu,Tencent,Alibaba)らの競争も激化。
  • 中国にとって自国のテック企業の成功はテクノロジー競争の好材料となり、対照的にアメリカにとっては脅威となっている。
  • 中国による「一路一帯」や「中国製造2025」などの政策は、人工知能やロボット、量子コンピューター、グリーンエネルギーなどの競争激化を示唆しており、アメリカにとって経済・安全保障上のリスクである。

なにが特別なのか

現在の摩擦は、

  • トランプ大統領やBrexitなど、各国の政治的な脆弱性・リスクが高まっている。また中国にとっても自国経済の成長が鈍化しており、テクノロジー分野で競争力を強める願望は強い。
  • テクノロジー企業の影響力はかつてないほど肥大化しており、規制・保護の動きが出始めている。

という意味で、これまでと異なる。この変数が新たな「米中戦争」に説得力をもたせており、国際社会に懸念をもたらしている。

軍事衝突か新たな冷戦か?

何が起こり、どのような点に注目するべきだろうか。

  • 新たな「米中戦争」において、軍事衝突は起きない。しかし「戦後の国際秩序に挑戦する中国」という歴史的構図は、テクノロジーを基盤とした「見えない戦争」によって加速する。
  • この冷戦のシナリオは、アメリカが引き続き戦後の国際秩序維持にコミットし続けるか、によって決まる。
  • アメリカがコミットを弱めた場合、中国は国際社会の責任・規範よりも国家主権を重視する動きを強める。その結果、地域情勢が不安定になる可能性があり(南シナ海や旧ソ連、チベット)、国際社会の足並みはますます揃いづらくなる。

特に最後のシナリオについては、Foreign Affairs誌の「The Age of Uneasy Peace」が説得的である。

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石田 健

石田 健

株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot

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