2015年、一番面白かった記事。by 石田健 #HyperlinkChallenge2015

テック, メディア

公開日 2015/12/06 02:50,

更新日 2015/12/06 02:50

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THE STARTUPの梅木さんからご指名があったので、2015年に最も面白かった記事をご紹介しようかと思います。

他社媒体から1本、自社媒体から1本を選ぶというルールだそうです。

他社媒体でもっとも面白かった記事

まず、他社媒体でもっとも面白かったのは、「ピケティ『21世紀の資本』サポートサイト」の記事群。

「いや、、、えっ?」って感じかもしれませんが、至って大真面目です。

というか、訳者・山形浩生さんの「イギリス社会学のピケティへの反応は……イマイチ。」とか「ピケティ『21世紀の資本』訳者解説 v.1.1 」とか「アメリカ経済学会大会のピケティセッション:すばらしい。」とかは全部面白い。

なぜこれを「最も面白かった記事(コンテンツ)」にあげたかというと、単純に面白かったという事実と、ちょっとした”ネット文脈的なるもの”へのアンチテーゼがあります。

まず今年を代表するコンテンツとして、ピケティ『21世紀の資本』があったことは疑いようのない事実。分厚い学術書がベストセラーになるという前代未聞の事態に、色んな人がピケティを”利用”して色んなことを言っていますが、かといって、それが適切な言説かというと、首を傾げたくなるものも多数。

基本的に「それっぽいこと」を言ったもん勝ち・分かりやすくバズらせたもん勝ちなネット社会ですが、本当に良いコンテンツを消費しようと思うならば、膨大な下準備や労力が必要なんだぞ!ということを感じ取れると思います。

夏頃には、みんながSEALDsについてひとごと物申したそうでしたが、彼らを踏まえた居酒屋(政治)談義が湧き起こるのを見るたびに、ネットにおける議論の手続きが、いかに粗雑におこなわれているかを感じた人も多かったはずです。

政治・経済という、多くの人が関係ある、でも居酒屋談義に陥りがちなトピックについて、多くの時間や素材を使って考えることができるのが、本来であればネットの良いところの1つなわけです。その意味で、ピケティ周りの良質なコンテンツをタダで読めるというのは、実はスゴイこと。

1番バズったとか1番笑えた、という軸ではないですが、「数多くの良質なコンテンツが、ボリュームの制限なく、ハイパーリンクによって繋がり、我々の世界に対する理解を深める」という意味では、間違いなく素晴らしいコンテンツだと言うべきでしょう。

ちなみに山形さんは今年、ケインズ「平和の経済的帰結」を訳してくださっていますが、個人的には昔から好きなエッセイの1つだったので、こちらもオススメ。

自社媒体でもっとも面白かった記事

これは単なる自画自賛ですが、ニュークラから『文部科学省「人文学とか役に立たないんだから、その学部いらないっしょ」』と「慰安婦には旧日本軍の関与が実証されている」を選んでおきます。

前者はかなりバズったのですが、タイトルを煽った分賛否も多く、結果的には(日頃リーチしない層にも届いたので)よかったなと思います。

後者は、元記事である朝日新聞の記事が良かったのですが、 個人的にもわりと大事なことを言っていると考えているので、良ければもう1度。

自社媒体で言うことはあまりないのですが、よく「ニュークラはもうやらないのですか?」という声をいただきます。

弊社が新たに子会社化されたことで、残念ながら喫緊ではニュークラをやることはなさそうですが、その代わり個人プロジェクトとして(もしかしたら、このTHE MEDIA HACKをリニューアルする形で)ニュークラっぽいのはやると思います。

ちょっと間が空いてしまうかもしれませんが、またニュースを解説しつつ、時にはふざけつつ、新しいメディアをやっていくので、期待しててください。

面白いコンテンツってなんだ?

さてさて。

こういったコンテンツの選び方は、石田っぽいといえば石田っぽいのですが、やはり思うのは「ネットのコンテンツは、あんま面白くない」という点です。いや、もちろん面白いコンテンツはたくさんあるのですが、どちらかというとfunnyなものは多いけれども、interestingなものはそれほど多くないという感覚。

基本的にネットの「コンテンツが〜」みたいな議論において念頭に置かれているのは、「どれだけバズったか」とか「どれだけウケたか」という軸で、例えば「どれだけインサイトが深いか」という軸はそれほど多くないように思います。

いわゆるネット文脈みたいなものに乗って、それがどれだけのPVを呼び込み、ビジネス的にリクープしたのか?という部分がコンテンツの価値として重視されますが、一方で「どれだけ反直感的か?」「どれだけ新たな発見を生んだ思考をトレースしているか?」という点でコンテンツが評価されることは、それほど多くない様です。

多くの人が、ネット的な笑いを取りつつバズるようなヒット記事を目指しながら、同時に、安価で大量のコンテンツを生成していくという現状は、ビジネス的に考えれば別に間違った方向ではないと思いますが、それほど人類を進歩させてはいないでしょう。

もっとネットにinterestingなコンテンツが増えれば良いなと思います。その意味で、今回はあえて他社媒体でも自社媒体でも、ネット文脈とはわりと距離のあるコンテンツを選んだというわけです。

おわりに

これはまた別に書こうと思いますが、結局メディアをやる意味は極論2つしかないわけです。

1つは、儲かるから。そしてもう1つは、それを書かなくてはならない理由がある(から結果的にメディアをつくる)から。

前者の話は、すでに2015年までに多くの企業が買収され、ある程度の答えが出たはずです。

しかし一方で、後者については永遠に問い続け、問われ続けなければならない問題です。そして、それこそがコンテンツを最もinterestingにする要因のはずです。

なにか、それについて語らなければならない理由がある – そんな出発点を持ったコンテンツをつくれるように、来年も頑張っていこうと思います。

引き続き、弊社も、石田も、そして、THE MEDIA HACKもどうぞよろしくお願いします。

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著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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