ガーディアン、元MSNBCのサイト責任者をUS版コラムニストに起用

テック, メディア

公開日 2015/12/17 04:22,

更新日 2015/12/17 04:22

無料記事

イギリスを代表する日刊紙の一つであるガーディアン。最近では、2013年のスノーデン事件に関する報道でピューリッツァー賞を受賞するなど、アメリカでの評価も高まってきています。

そんなガーディアンですが、12月15日、ガーディアンUS版のコラムニストとして、今年の11月までアメリカのニュース専門チャンネルのMSNBCで、ウェブ版エクゼクティブエディーターを務めた、ジャーナリストのリチャード・ウルフ氏を起用することが明らかになりました。

この起用の背景には、MSNBCの親会社であるNBCニュースの方針転換により、MSNBCを離れることになったウルフ氏と、アメリカでの事業の拡大を進めたいガーディアン、双方の利害の一致が関係していると思われます。

著名ジャーナリストのリチャード・ウルフ氏

2013年の10月から、アメリカのニュース専門チャンネルであるMSNBCのウェブサイト「MSNBC.com」のエクゼクティブエディターを務めていたウルフ氏。

2013年当時のMSNBCは、三大ネットワークのひとつであるNBCの傘下でありながら、リベラルな主張を持つジャーナリストや活動家(公民権運動家のアル・シャープトン氏)を番組のホストやアンカーに起用するなど、リベラル色を強く打ち出していました。

ウルフ氏もリベラル色のジャーナリストであったことから、「MSNBC.comに、リベラルな考え方を反映したサイトにする」と公言していました。

しかし、視聴率低迷が続いていたMSNBCの状況、そして地上波の「NBCナイトリーニュース」のアンカーだったブライアン・ウィリアムズ氏が、虚言発言騒動をきっかけとして、今年2月にNBCのアンカーを降板し、MSNBCに移籍することが決まったことなども重なり、NBCの経営陣は、MSNBCとNBCの統合を図ることを決断。

「NBCとのMSNBC統合化」を進める経営陣の新たな方針によって、MSNBCは平日の日中の番組を中心として、これまで放送されてきたリベラル色の強い番組を今年の秋に一斉終了。

この方針転換はMSNBCのサイト運営にも反映され、MSNBCのサイトは、NBCニュースのサイト運営部門と統合されました。

このような経緯もあり、MSNBCとNBCの差別化を推進してきたウルフ氏は、MSNBCを離れることになったのです。

ガーディアンが進めるアメリカでの事業拡大

MSNBCを離れたウルフ氏に目をつけたのが、アメリカでの事業拡大を進めているガーディアンです。

ガーディアンは、アメリカの読者に特化した新聞を発行してはいませんが、2011年からニューヨークに拠点を置いて「Guardian US」として、アメリカのニュースに重点を置いたサイトを運営しています。

スノーデン事件の報道も、このニューヨークの拠点から生まれました。

そんなGuardian USでは、ここ一週間様々な動きが既に見られていました。

先週の金曜日にはテクノロジー部門の西海岸地域(シリコンバレーなど)特派員として、「The California Sunday Magazine 」出身の記者、「SF Weekly」出身の記者、「ウォール・ストリート・ジャーナル」出身の記者など、計3名の記者の採用が発表されています。

また、今週の月曜日には、Viceなどにも記事を寄稿するライターとして知られるデーブ・シリング氏を、 Guardian USの新たな編集主任として迎え入れることも発表されています。

ウルフ氏のコラムニストとしての起用も、このような動きの中で決まったモノであるといえます。

また、ガーディアンは、イギリス本国では中道左派(アメリカの基準ではリベラル左派)の論調のメディアとしても知られていることから、リベラル派のウルフ氏とは政治的な立場が近いということも起用の背景にあるのかもしれません。

ウルフ氏はハフポストの取材に対し、「ガーディアンはアメリカや世界各国で成長し続けており、ジャーナリズムと評論を上手く融合させた素晴らしいメディアだ。才能豊かなチームと共に、(特にアメリカの政治が重要な局面を迎えているこの時期に)コラムニストとして働くことを楽しみにしている」とコメントしています。

来年には大統領選もあるアメリカですが、ガーディアンはアメリカのメディア業界の中で存在感を放つことができるのでしょうか?

参考記事

http://www.huffingtonpost.com/entry/guardian-us-former-msnbc-exec-richard-wolffe-2016_56704568e4b0fccee16ff52e?utm_hp_ref=media

http://www.huffingtonpost.com/entry/nbc-msnbc-digital_56393682e4b0411d306ebee7

http://www.huffingtonpost.com/2013/10/11/msnbc-website_n_4086096.html

http://www.politico.com/blogs/media/2015/07/msnbc-cancels-3-shows-amid-transition-211561

http://www.theguardian.com/gnm-press-office/guardian-unveils-us-url

http://www.theguardian.com/guardian-us-press-office/2015/dec/14/humorist-and-writer-dave-schilling-joins-guardian-us-as-writer-at-large?CMP=share_btn_tw

http://www.vice.com/author/dave-schilling

http://blogs.lse.ac.uk/politicsandpolicy/the-political-affiliations-of-the-uks-national-newspapers-have-shifted-but-there-is-again-a-heavy-tory-predominance/

この記事は、ライセンスにもとづいた非営利目的のため、あるいは社会的意義・影響力の観点から無料で提供されているコンテンツです。

良質なコンテンツを取材・編集して翻訳を届けるため、コンテンツをサポートをしてくださいませんか? みなさまの有料購読は、良質な記事をライセンスして届けるための重要な収益源になります。

月額3,200円で有料購読をはじめる
著者
headline 主管理者
おすすめの記事
政治・国際関係

ニュース解説:カリフォルニア州雇用法案AB-5の成立は、「搾取との闘い」か?

有料記事

9月18日、米カリフォルニア州で、ギグ・エコノミーの労働者をこれまでの「独立した請負労働者」ではなく、「従業員」として再分類する可能性のある法案が成立した。2020年1月1日より施行予定の同法案は、上···
塚本 大
管理者
政治・国際関係

ナイジェリア国民、南アフリカから一斉退避:その背景は?

有料記事

南アフリカの最大都市ヨハネスブルクや首都プレトリアなど起きた移民排斥を背景とする暴動によって、アフリカの二大経済大国であるナイジェリアと南アフリカに緊張が生じている。暴動が激化する中、9月9日にナイジ···
管理者
テック, メディア

NYTによる衝撃のFacebook暴露記事:その内容とポイントは?

無料記事

11月15日、米・New York Times(NYT)紙に衝撃的な記事が登場した。この記事は「Delay, Deny and Deflect: How Facebook’s Leaders Foug···
石田 健
テック, メディア

月は誰のものか? 宇宙を専門とする弁護士が回答する

無料記事

この写真は、おそらくこれまで撮影された国旗の中で最もよく知られたものだ。APOLLO 11 MOON LANDING / AP PRESSバズ・アルドリンが、月に立てられた初のアメリカ国旗を横にして立···
石田 健
管理者
政治・国際関係

フェミニズムとは何か?:なぜ女性の権利ばかりが主張されるのか

無料記事

わたしたちは、フェミニズムの時代に生きている。フェミニズムを時代性やブームのように捉えることに異論はあるかもしれないが、#MeTooムーブメントや韓国の書籍『82年生まれ、キム・ジヨン』のベストセラー···
石田 健
政治・国際関係

なぜ平和の少女像を「日本国民の心を踏みにじる行為」と感じる人びとがいるのか?

無料記事

国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画「表現の不自由展・その後」をめぐって、現在も議論が続いている。混乱の発端には、平和の少女像の存在もあった。一部の政治家は、平和の少女像が展示されることを···
石田 健
編集長より

職が減っていく文系院生は、今後いかにサバイブしていくべきか

無料記事

将来を有望された研究者が、自ら命を絶つという痛ましい事件が話題を集めた。「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた:朝日新聞デジタル下記記事にある通り、この事件は経済的困窮を苦にしただけでな···
石田 健
政治・国際関係

ニュージーランドの移民政策:経済的事情とリベラルな国家、そして移民抑制

無料記事

十分な時間が経過していないため、断定することは危険性があるものの、白人至上主義者によるムスリムを標的としたヘイトクライムという見方が強まっている。この事件を理解するためには、ニュージーランドの移民政策···
石田 健
政治・国際関係

文化の盗用とは何か:所有/簒奪という二項対立を乗り越える

無料記事

文化の盗用、あるいは文化の簒奪と訳される「Cultural Appropriation」という概念が注目を集めている。6月25日、アメリカの著名セレブであるキム・カーダシアンが「Kimono」と名付け···
石田 健