知識人とは何か?[コラム]

政治・国際関係

公開日 2017/04/05 06:41,

更新日 2017/04/05 06:41

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ここ数日、以下のような記事を立て続けに読んだ。

人文学は何の役に立つのか?

人文学は何の役に立つのか?

季刊誌「考える人」休刊 消える「ユルい」思想誌

個人的には、人文学系の意義については問題意識や「問題を脱構築する系の回答」に対する批判などは1番上のブログに同意するし、役に立つシチュエーションとしては2番目のブログが指摘する内容に同意する。

歴史や倫理は国のあり方、政策(例えば再分配)なんかを考える上で大いに役立つし、ブログでも指摘されているように官庁のペーパーには、ロールズやアマルティア・センの議論が引かれていたりする。

また、個人が人文学を学んで”お得”かというと、そもそも無理にその意義を強調する必要もないし、費用対効果が高い学問なんて限られそうな気もする。

知識人とは何か

そんな最中に1番下の記事を読んで、ふと頭をもたげた疑問があった。要は、「知識人とはなんだろうか」ということだ。

一番上のブログでは、内田樹が槍玉に挙げられていたが、同時に内田は、メディアの「知識人」枠として人文学系代表として登場することも少なくない。

「それっぽいことを言う人代表」として内田樹が長らく消費されていたことの議論はさておき、人文学の意義が問われている中で、知識人とは何なのだろうか?

最初のブログでも述べられていたが、内田樹の議論には

議論の前提を “問い直して””脱構築”してみたり議論に使われている用語についてグダグダと掘り下げてそもそもの議論を曖昧にして誤魔化そうとする

傾向が見られる。

より掘り下げて言うと、議論の前提を問い直したり脱構築するのは内田樹の自由だが、例えばその結果として、「だから、成長しなくて良いんだ」という乱暴な結論になると社会にとってあまり有益とはいえない。

どんなに粗雑で不正確な議論を展開しても、「これは物語で..」とか「記号としての…」と言われてしまえば、それがPost-Truthなのか傾聴に値する議論なのかが分からなくなってしまう。

内田樹が知識人として認識されているならば、彼の議論を信じてしまったり、その発言が取り上げられたメディアの内容に賛同する人も出てくるだろう。彼に好き勝手なことを言う権利はもちろんあるが、それが知識人として誠実な態度だとは思えない。

抽象的な議論と個別具体的な議論

では内田樹が抽象的な議論をするのと対象的に、個別具体的な議論をするべきなのだろうか。

知識人というのは、個別具体的な話はせずフワフワと大きな話をするもので、社会からもその役割を求められているイメージはある。その意味では「個別具体的な話をする人」は知識人のイメージとは外れるが、これからの知識人というのは、その能力が欠かせないと思っている。

AIや自動運転、バイオテクノロジーなどが盛んになる中で、倫理や哲学的な判断はこれから一層重要になっていく。

しかし倫理や哲学的な話をする人の中には、具体的なテクノロジーが全く想像できておらず、非常に非現実的なストーリーの中で議論していたりする。こうした時に、個別具体的なケースによって大きな議論の方向性が間違っていないかを判断することは有益だろう。

内田樹の議論も、抽象的な話に終始していれば特に害悪はないが、具体的な政策だったり経済的な問題に関わってくると問題が生じてくる。

これまでの知識人というのはあまり個別具体的な話題が苦手だった気がするし、そうした知識人はますます世の中から必要とされなくなるだろう(一番下の記事のように)。対称的に、個別具体的なケースから大きな議論を導いたり、大きな議論の中で個別具体的なケースを判断できる人文学系の人々は、これから重宝されていくのではないだろうか。

というわけで、知識人とはなんなのだろうか?という質問に対して、抽象的な議論と個別具体的な議論を往復できる人というのが個人的なイメージに近い。

この関係は、ロールズのいう往復均衡法に似ている気もするが、いずれにしても人文学は何の役に立つのか?という質問を考える上で、少し興味深い話題だろう。

補足

以下のツイートを見かけたが、まったくもってそのとおりだと思った。

 

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著者
株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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