トランプは、2020年大統領選挙で再選する:デフォルト効果が支配するアメリカ政治

政治・国際関係

公開日 2017/05/15 01:29,

更新日 2017/05/15 01:29

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ほとんどのアメリカ国民は、トランプのことを好んでいない

しかし彼は、2020年に再選される可能性が高い。

この相反する事実は、どのように現実となるのだろうか?

一般的に、現状に不満を抱いている人々でさえも、その状況を変えようと思うことはほとんどない。私の研究分野である認知・行動科学において、これは「デフォルト(初期値)効果」として知られている。

ソフトウェアおよびエンターテインメント企業は、この効果を利用することで消費者からできるだけ多くのデータを収集したり、ストリーミング番組で「もう1つ番組を見る」ためにユーザーを椅子から離さない。企業によって収集された情報がどのように利用され、人々の選択に影響を及ぼしているのかという懸念が広がっているにもかかわらず、全ユーザーのうち5%しか初期設定を変更していないのだ。

このデフォルト効果は、アメリカ政治を強力に形づくっている。

もう4年

FDR-June-28-1934フランクリンD.ルーズベルト

フランクリン・D・ルーズベルトは、大恐慌から第二次世界大戦に至るまでアメリカ大統領として4期連続で選出された。未来のリーダーが無期限に権力を固めて、保持することを防ぐため、合衆国憲法修正第22条が可決され、後の公職者は最大2度の任期までに制限された。

それ以来、11人の大統領が選出されてきた。

そして8つの政権が、再選してきた。ハリー・トルーマン、ドワイト・アイゼンハワー、ジョン・F・ケネディ/リンドン・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ロナルド・レーガン、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ。

3つの例外でさえも、一般的な大統領の在職期間を強調しているに過ぎない。

フォードは1976年に勝利したが、それは共和党にとって3期連続での勝利であった。もしジョージ・H・W・ブッシュ大統領が1992年に勝利していれば、それは共和党にとって4期連続での勝利となっていただろう。

1932年以来、ホワイトハウスの在籍が8年未満となった唯一の政党は、1976年から1980年までジミー・カーターが大統領を努めていた民主党だ。

したがってトランプが、アメリカ政治で当然のごとく受け入れられていることは大きな問題だ。単純なデフォルト効果によって、彼は再選される可能性が高い。

人気は過大評価される

Hillary_Clinton_(24552133881)ヒラリー・クリントン

トランプは、記録的に低い支持率にもかかわらず、それよりも僅かに人気の劣るヒラリー・クリントンに勝利を収めて、大統領として最初の任期を獲得した。彼はおそらく、この芸当を繰り返すことができる。

大統領は引き続き、彼をホワイトハウスに送り込んだ有権者から支持を集めるだろう。彼は、最初の100日間でバラク・オバマと比べて2倍となる数百万ドルを再選のために調達した。彼はすでに、その業績を喧伝したり、政治的ライバルを批判する上で重要な州において、その広告費用を投入している。

大半の人がトランプを好きでもなければ信用もしていないが、世論調査によれば、これまでのところ彼はアメリカ国民の期待に応えている。実際、ABCニュース/ワシントンポスト紙による世論調査では、もし4月下旬に選挙が再度おこなわれれば、その支持率が低下したにもかかわらず、トランプは選挙人投票で勝利を収めるばかりでなく、一般投票も獲得するだろう。

このことを強調するには、議会の再選パターンを考慮するべきだ。

第二次世界大戦以降、現職の再選率は下院で80%、上院では73%となっている。2016年の選挙において、議会の支持率は僅か15%に過ぎなかったが、実際には、その再選率は通常よりも高くなり下院で97%、上院では98%だった。

デフォルト効果により、特定の議席にサイクルが生まれるようになり、共和党は主要な議会地区を通じて州政府を支配するようになった。そして民主党にとっては、2018年に上院で単独過半数を獲得することが極めて困難になった。ホワイトハウスは言わずもがなだが

トランプ、あるいは誰か…?

GHW_Bush_presents_Reagan_Presidential_Medal_of_Freedom_1993ロナルド・レーガン

デフォルト効果において最も重要なことは、現職についてどのように感じているかではなく、最も可能性の高い対立候補者についてどのように感じているかだ。

カーターは支持率が低いばかりでなく、ロナルド・レーガンと戦わなくてはいけなかった。 「The Gipper」(レーガンのあだ名)は広く知られており、共感されやすく、メディアに精通していた。ワシントンのエリートたちは「ブードゥー経済学」という言葉で彼の政策を揶揄したが、大衆は彼がビジョナリーであり、インスピレーションに溢れた政治家であると考えた。

トランプの対立候補は、はるかに悪い状況だ。民主党はこの10年で有権者を失い、トランプや共和党に比べて、平均的なアメリカ国民と繋がることができなくなったと考えられている。民主党全国委員会の主要な人々は、いまだに党の政策戦略を変更することに抵抗している。そのため、彼らはどうやって団結し、党の侵食を防ぐのかという問題について、明確な答えを見い出だせないでいる。

トランプがカーターの足跡を辿ることはなく、その他の例を見れば、より説得力が増すだろう。

例えば、トルーマンは1948年の選挙を前にして、わずか39%の支持率だった。しかし対立候補であるトーマス・デューイとは、一般投票で200万票以上、選挙人団では114人の差をつけて勝利した。大統領は重要な州・地区で賑やかな集会を開いて、選挙終盤が近づくにつれ、それらはますます大きくなった。しかしトルーマンの支持は世論調査で上手く捉えられていなかったため、メディアはそのことを無視した。結果として、彼の勝利は多くの人にとって完全に驚くべきものとなった。どこかで聞いたことのあるような話ではないだろうか?

トランプの先駆者である、リチャード・ニクソンを見ても良いだろうだ。在任中のニクソン大統領は、メディアに嫌われていた。彼は妄想的で、自己愛が強く、そして狭量な男だと見られていた。にもかかわらずニクソンは、1972年にアメリカ史上最大となる票差で再選された。獲得投票率は22%以上、選挙人は500を超えていた。

もちろんニクソンは最終的に、弾劾の可能性がある中で辞任した。しかしそれは、彼が最高裁判事を大きく変える前の話ではなく、その後は世代を経て判事は保守化していった。トランプはすでに、この点において恵まれている

そしてニクソンのように、トランプが第2期に至るまで弾劾されることはまずあり得ない

弾劾は、議院で過半数の承認を必要とする。ホワイトハウスからトランプを追い出すためには、上院で少なくとも3分の2の支持が必要となるのだ。

ニクソンは、地滑り的な再選を果たした後だったが、民主党が両議院を支配していたことから弾劾の可能性に直面した。クリントンは1998年に共和党が支配する下院で弾劾されたが、上院では共和党がわずかに55議席多かったため、無罪となった。

共和党が2018年の選挙で大敗することがなければ、民主党はトランプを弾劾することはできず、来年の選挙でこの現実が変わることはないだろう。

言い換えれば、トランプは最初の任期を生き延びることができるはずで、2度目の任期も同様だ。

P7546-16Aジョージ・W・ブッシュ

トランプのように、一般投票では敗北したものの選挙人投票によって勝利したことで大統領となったジョージ・W・ブッシュの例を考えてみよう。彼の在任期間は、選挙キャンペーンで約束した内容から大きく外れていた。彼は恥ずべき失策を繰り返し、無知で不適任な人物だと酷評された。彼は選任されたわけではないアドバイザーに従って、近年のアメリカ史において最悪というべき外交政策の失敗をいくつも主導した。ホワイトハウスにおける彼の行動は、多くが法的にも疑問のあるものだった。しかし2004年、彼は公明正大に350万票を獲得して、再選を果たした。その理由の1つは、民主党員がジョン・ケリー候補を指名したためである。

疑いなく、ケリーは博識で非常に適任な人物であった。しかし彼は、それほどカリスマ的な人物ではなかった。政治における、彼の慎重で実用的なアプローチは、ブッシュと比べて弱々しく曖昧なように見えた。ワシントンにおける長年の職歴は、この見方をより悪化させた。彼の対立候補者たちは、ケリーが「フリップ・フロップ(意見が曖昧で一致しない人物)」であるとして、彼が確固たる信念や問題解決能力、ビジョンがないことを強調した。

もし民主党が2020年の総選挙を単純に別の「大人」を指名することで戦おうと考えているなら、ほぼ確実に敗北を期すことになる。

トランプを次のジミー・カーターにするには、彼の政権が失敗することを期待するだけでは不十分だ。民主党は、彼を敗北させるためには新たなロナルドレーガンを生み出す必要がある。これまでのところ、見通しは全く良くないが

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本記事は、下記記事の翻訳です。著者または配信元との提携・許可にもとづいて、正式なライセンスによって配信しています。

翻訳元の記事
Trump will likely win reelection in 2020
原著者
コロンビア大学ポール・ラザースフェルド特別研究員。専門は、知識社会学や認知社会学、社会心理学。
翻訳者
株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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