Googleのエンジニア、本当に「多様性否定する文書」を書いた?

テック, メディア

公開日 2017/08/13 03:50,

更新日 2017/08/13 03:50

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今月7日、Googleのエンジニアを勤めていたジェームズ・ダモア氏が解雇されました。ダモア氏は3日に、「グーグルの思想的エコーチェンバー(英文)」と題するメモを公開していますが、この内容が性差別的だという理由です。

多くのメディアは、ダモア氏のメモについて「女性差別発言(ハフィントン・ポスト)」や「多様性否定する文書(ロイター)」などと報道しています。

本当に「女性差別」のメモか

しかしダモア氏のメモは、本当に女性差別を謳うものなのでしょうか。

実際にメモを見てみると、男女平等に対するステレオタイプが一方的に書き連ねられた内容ではないことがわかります。ダモア氏が主張するのは、「男性よりも女性に見られる傾向がある」以下のような論点です。

1. 男性が「物事」に関心を持つのに対して、女性は平均的に、より「人間」に関心を示す
2. 女性はより協調的であり、競争を好まない
3. 女性は平均的に、より不安を感じやすい
4. 女性は平均的に、よりワーク・ライフバランスを求める傾向がある

ダモア氏は、決して「すべての女性はこういうものだ」と主張しているわけではなく、こうした傾向には個人差があることも注意深く付け加えています。

彼のゴールは(少なくともメモを見る限り)、決して多様性を否定するものではなく、女性比率を高めようとするGoogleの取り組みが、むしろ意味をなしていないことへの真面目な提言であるように見えます。

しかしメディアの報道を見た限り、このメモは内容について議論する以前に、女性差別発言や多様性の否定といった言葉で、黙殺されている印象です。

ギズモード「全部彼の感想」

個人的にかなり酷いと思うのが、「職場の男女平等を批判する文書(ギズモード)」という記事です。

でも彼が言う「女性と男性の生物学的な違い」は、基本的に全部彼の主観的な感想です。

たとえば彼は、男性がモノに興味を持つのに対し、女性は人間とか美に対する興味の方が強く、そのため男性がシステム化を要するコーディングを好むに対し、女性は開発の中でもフロントエンドを好むのだと言っています。また女性は社交的で、感じよく振る舞おうとするため、給与や昇格の交渉や意見の表明、リーダーシップの発揮といったことが苦手になるのだと主張しています。さらに女性は神経質で不安感になりやすくストレス耐性が低いとも言っていますが、どれも明確な根拠を示してはいません。

ギズモードの記事は、ダモア氏のメモについて「明確な根拠を示していない」と述べていますが、それは端的に間違っています。ダモア氏のメモには、学術論文へのリンクが幾つも貼られていますし、メモの書き方からも彼が真摯な議論をしようとしたことが伺えます。

むしろギズモードの態度は知的に誠実だと思えませんし、議論を「炎上」とまとめた上で、「一見それなりに根拠のある合理的な主張」だが「全部主観的な感想」と述べるなど、悪意を感じます。

結論として、「テック部門の多数派である白人男性にはうっとうしがられている内情が噴出してしまいました」とまとめているのも議論をかなり矮小化しています。

Googleの対応は不適切

ダモア氏の主張そのものが適切か、という点については議論の余地があるでしょう。男女間の違いに関しては様々な研究があり、同じテーマであっても全く異なった結論を出しているケースも少なくありません。

しかしわたしたちは、学問的な作法に従った誠実な議論である限り、どのような問題であっても議論することを妨げるべきではないでしょう。

例えばもし、「女性はマネージメント職に就くことを好まない傾向にある」や「黒人は白人に比べてIQテストの結果が悪い」といったポリティカル・コレクトネスに反する研究があったとして、それが学問的な調査・研究であれば、「ステレオタイプ」だと切り捨てる前に、方法論や論理的構成といった「議論の内部に生じている誤り」に目を向けるべきです。

その意味で、今回のGoogleによる対応は誤りだったと言えます。世界で最も知的な会社がこうした態度をとることは決して望ましくありません。

補足

英語圏ではすでに、GoogleのCEOサンダー・ピチャイ同社の対応を批判するコラムも出てきています。

Google側は、ダモア氏のメモが同社の行動規範と照らし合わせて「一線を越えている」と述べていますが、具体的にどの部分が問題であったのかが不明瞭であることも問題視されています。

またダモア氏は、ジョナサン・ハイト氏の研究から影響を受けたと語っていますが、早速ハイト氏らも記事を公開しています。

 

アイデンティティ・ポリティクスや文化戦争の波は、シリコンバレーにも到達していますが、こうした問題に関する議論はあまりにも非科学的な論争になっているように見えます。

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著者
株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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