Wantedlyによる「写真を無断利用」の論理について:インターネットにおける画像引用

編集長より

公開日 2017/08/26 00:34,

更新日 2017/08/26 00:34

無料記事

すでに話題になっていますが、ウォンテッドリー社が「画像の無断使用はやめていただきたい」として、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて、Google・Twitterに同社を批判したブロク記事の削除を申し立てました。

問題の是非とは別に、個人的に「インターネットにおける画像の引用」という問題は非常に難しいと考えています。

カーラ・デルヴィーニュの画像は?

01

例えば、ウォンテッドリー社が主張している「画像の無断利用」ですが、同社の仲CEOも自身のプロフィールページでカーラ・デルヴィーニュの画像を利用しています。

カーラ側が「無断利用」と主張し、DMCAが適用されることは考えづらいですが、もし同社の主張が通るのであれば、カーラの画像を使うことは許されなくなってしまいます。

ウォンテッドリー社の論理はかなり無理筋な気がしますが、こうした申し立てでDMCAが機能してしまえば、多くのコンテンツが検閲される危険性を孕んでいます。

MERYもBuzzFeedもパクり?

21 Pictures That Will Restore Your Faith In Humanity
そもそもインターネットにおける画像引用についての議論は、非常に複雑なものです。

以前問題となった女性向けメディアMERYですが、彼らの無断引用について「DeNAの「MERY」が写真をパクり、それを他サイトがパクる」と厳しく報じていたBuzzFeedは、アメリカ国内では画像引用について批判を受けています。

Gawkerによれば、例えばBuzzfeedのこの記事は、Nedhardyという怪しげなサイトのこれこれを(控え目に言って)リミックスしたものです。

BuzzFeedはベン・スミス氏が編集長に就任して以来、引用や無断盗用に厳しい内部規定を設け、報道メディアとしての地位を確立していますが、同時に過去に作られた大量の「出典だけを張った画像まとめ記事」も数多く残っています。

Buzzfeed Japanの古田編集長は、「ネット上の写真だったら取ってきて、引用元を書いておけばいいでしょって思ってる人がいますけど、そんなに単純ではない」と述べていますが、自身のサイトにもimgurやRedditなどで誰がアップしたのかが分からない(権利者が不明な)画像が沢山まとめられており、議論の余地はあるでしょう。

「どっちもどっち」ではない

この話は「どっちもどっち」や「◯◯が指摘する権利はない」という結論ではありません。既存の画像を使って新たなコンテンツを生み出すことは、インターネットが生み出したミームの1つではありますし、報道など、適切な範囲で画像を利用することは広く認められています。

また国によっての慣習・慣例も異なるため、一概に言えないところも難しい理由の1つです。

そのため画像引用についての議論で最も重要なことは、「個別具体的に考えていく必要がある」ということです。昨年はWELQ問題が大きな話題になりましたが、彼らを批判するメディアすら、画像の扱いで他メディアを批判するには心許ない感はあります。

確実に言えるのは、今回ウォンテッドリー社がおこなったように、著作権やDMCAという仕組みを恣意的に解釈して、自社に都合の良い様に利用することは決して望ましいものではありません。未だ未整備で、議論の余地があるインターネットの著作権だからこそ健全な議論が求められますし、仕組みの悪用は決して認められるものではないでしょう。

この記事は、ライセンスにもとづいた非営利目的のため、あるいは社会的意義・影響力の観点から無料で提供されているコンテンツです。

良質なコンテンツを取材・編集して翻訳を届けるため、コンテンツをサポートをしてくださいませんか? みなさまのメンバーシップは、良質な記事をライセンスして届けるための重要な収益源になります。

メンバーシップについて知る
著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
おすすめの記事
社会

アフター・コロナに生じる変化 - 3つの分類による検討 -

無料記事

前回、ニューノーマルについて「変化が起きるには時間がかかり、問題は従来から起きていた経済的格差である」という主張をおこなった。今回は、その変化について詳細に検討していく。すでに「アフター・コロナ後の世···
石田健
政治・国際関係

コロナによるニューノーマル、その批判と新しい「大きな政府」

無料記事

ニューノーマルという単語が注目を集めている。「新たな常態」を意味するこの言葉は、アフター・コロナとともに、新型コロナウイルスが終息した後の世界が全く新しい常態に生まれ変わるのではないか?という、ある種···
石田健
編集長より

パパ活試論 - 2

無料記事

前回述べたとおり、哲学者らは「売買春が倫理的に許されるのか?」という問題に、どのような説明を与えているのか?彼らの説明は、大きく3つに分かれる。1つは売春婦たちの自由意志を尊重するリバタリアン的な立場···
石田健
編集長より

パパ活試論 - 1

無料記事

2017年にテレビドラマの名前として冠されるなど、パパ活という言葉は人口に膾炙した感がある。一方、その定義は曖昧なままである。ただの「善意による援助」なのか、「下心を含めた投資」なのか、はたまた援助交···
石田健
社会

韓国、衝撃の「n番部屋」事件とは

無料記事

今月17日、韓国で衝撃を呼んでいる「n番の部屋」事件の首謀者として1人の男性が逮捕された。すでに筆者は、本事件について下記YouTube動画を公開しているが、動画では扱えなかった事件の全貌について、現···
石田健
政治・国際関係

フェミニズムとは何か?:なぜ女性の権利ばかりが主張されるのか

無料記事

わたしたちは、フェミニズムの時代に生きている。フェミニズムを時代性やブームのように捉えることに異論はあるかもしれないが、#MeTooムーブメントや韓国の書籍『82年生まれ、キム・ジヨン』のベストセラー···
石田健
編集長より

職が減っていく文系院生は、今後いかにサバイブしていくべきか

無料記事

将来を有望された研究者が、自ら命を絶つという痛ましい事件が話題を集めた。「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた:朝日新聞デジタル下記記事にある通り、この事件は経済的困窮を苦にしただけでな···
石田健
テック, メディア

なぜMCNは死に、UUUMは成功したのか?

有料記事

The HEADLINEでもYouTubeチャンネルを開設しているが、加熱するYouTubeビジネスはどこに向かっていくのだろうか?5Gが本格化する中、動画ビジネスはますます伸びていきそうな気もするが···
石田健
政治・国際関係

強制投票は実現可能か、それは”良いもの”か?

無料記事

HEADLINEでは、今秋より月額3,200円の有料会員サービスを開始します。この記事は、サービスの開始後は有料記事となる予定です。もし、この記事に"読むべき価値がある"と感じられたら、ぜひ記事下部か···
石田健