すでに話題になっていますが、ウォンテッドリー社が「画像の無断使用はやめていただきたい」として、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて、Google・Twitterに同社を批判したブロク記事の削除を申し立てました。
問題の是非とは別に、個人的に「インターネットにおける画像の引用」という問題は非常に難しいと考えています。
カーラ・デルヴィーニュの画像は?
例えば、ウォンテッドリー社が主張している「画像の無断利用」ですが、同社の仲CEOも自身のプロフィールページでカーラ・デルヴィーニュの画像を利用しています。
カーラ側が「無断利用」と主張し、DMCAが適用されることは考えづらいですが、もし同社の主張が通るのであれば、カーラの画像を使うことは許されなくなってしまいます。
ウォンテッドリー社の論理はかなり無理筋な気がしますが、こうした申し立てでDMCAが機能してしまえば、多くのコンテンツが検閲される危険性を孕んでいます。
MERYもBuzzFeedもパクり?
そもそもインターネットにおける画像引用についての議論は、非常に複雑なものです。
以前問題となった女性向けメディアMERYですが、彼らの無断引用について「DeNAの「MERY」が写真をパクり、それを他サイトがパクる」と厳しく報じていたBuzzFeedは、アメリカ国内では画像引用について批判を受けています。
Gawkerによれば、例えばBuzzfeedのこの記事は、Nedhardyという怪しげなサイトのこれとこれを(控え目に言って)リミックスしたものです。
BuzzFeedはベン・スミス氏が編集長に就任して以来、引用や無断盗用に厳しい内部規定を設け、報道メディアとしての地位を確立していますが、同時に過去に作られた大量の「出典だけを張った画像まとめ記事」も数多く残っています。
Buzzfeed Japanの古田編集長は、「ネット上の写真だったら取ってきて、引用元を書いておけばいいでしょって思ってる人がいますけど、そんなに単純ではない」と述べていますが、自身のサイトにもimgurやRedditなどで誰がアップしたのかが分からない(権利者が不明な)画像が沢山まとめられており、議論の余地はあるでしょう。
「どっちもどっち」ではない
この話は「どっちもどっち」や「◯◯が指摘する権利はない」という結論ではありません。既存の画像を使って新たなコンテンツを生み出すことは、インターネットが生み出したミームの1つではありますし、報道など、適切な範囲で画像を利用することは広く認められています。
また国によっての慣習・慣例も異なるため、一概に言えないところも難しい理由の1つです。
そのため画像引用についての議論で最も重要なことは、「個別具体的に考えていく必要がある」ということです。昨年はWELQ問題が大きな話題になりましたが、彼らを批判するメディアすら、画像の扱いで他メディアを批判するには心許ない感はあります。
確実に言えるのは、今回ウォンテッドリー社がおこなったように、著作権やDMCAという仕組みを恣意的に解釈して、自社に都合の良い様に利用することは決して望ましいものではありません。未だ未整備で、議論の余地があるインターネットの著作権だからこそ健全な議論が求められますし、仕組みの悪用は決して認められるものではないでしょう。