IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事がイングランド銀行主催のカンファレンスで、仮想通貨について「目を背けるべきではない」と語りました。
『仮想通貨・新たな金融仲介モデル・AIという3つのイノベーションがもたらすインパクト』というテーマで語られたスピーチの中で、ラガルド氏は、ビットコインを始めとした仮想通貨が現時点で既存の通貨に取って代わるようなものにはなっておらず、また中央銀行の機能を代替できるようなものではないとコメントしています。
課題があるからと言って仮想通貨を退けるべきでない
しかし一方で、急激に進んだモバイルシフトの例について『少し前には、専門家の中にも「パーソナルコンピューターが使われなくなるような事は決して有り得ず、タブレットは高価なコーヒートレイに使われるのがせいぜいだ」と語っている人もいた』と述べ、様々な課題を抱えているからといって仮想通貨を退ける(dismiss)ことが利口な事とは思わない、としています。
さらに、こうした状況にあって中央銀行が取るべき最良の姿勢は、生まれたばかりのアイデアや新たなに対してオープンでありながら効果的な金融政策を実施していくことだとしており、IMFに対する直接的な影響として「特別引出権(Special Drawing Rights, SDR)」について言及しています。
SDRは、米ドル、円、ユーロ、スターリングポンド、人民元の5つの通貨で構成され、加盟国の通貨危機などが起こった際に独自のレートに基づいて配分するためにIMFが管理している準備資産ですが、レガルド氏はこのSDRを将来的にデジタル化するような状況も視野に入れつつ、変化に対して柔軟である必要があると語っています。
金融業界でも別れる見解
第二次世界大戦以降、国際経済は米ドルを基軸通貨として発展を続けてきましたが、すでにアフリカの新興国などでは米ドルのような他国の通貨の代わりにビットコインを始めとする仮想通貨を導入する動きが出始めています。
最近では、J.P.モルガンのCEOがビットコインについて「詐欺的」であるとした一方で、モルガン・スタンレーのCEOが「単なる流行りではない」とコメントするなど、金融業界でも意見が分かれている仮想通貨ですが、国際通貨の元締めとも言うべきIMFの理事が比較的前向きなコメントを出したことで、今後さらなる注目を集めることになるかもしれません。
なお、今回のラガルド氏のスピーチは、IMFのウェブページ上で全文が公開されています。