フィデリティ・インベストメンツのCEOアビゲイル・ジョンソンは、今年5月にニューヨークで開催された世界最大の仮想通貨カンファレンス「Consensus 2017」の席上で、同社がビットコインなどのマイニングに携わっており、ジョンソン氏自身も仮想通貨を「愛している」とスピーチしました。
同社は8月に仮想通貨の専門情報サイト「コインデスク」と提携するなど、仮想通貨市場への参入を進めていますが、米国を代表する資産運用の超大手が仮想通貨に注目する理由とはどのようなものでしょうか。英紙フォーチュンが同社に取材しています。
フィデリティ・ラボのハドレー・スターン氏によると、米国を拠点として進められているマイニング規模は現時点で「控えめ(modest)」であり、その具体的な成果は開示していないものの、ジョンソンCEOがCeonsensus 2017で言及したように仮想通貨の急成長によって「多くのマネー」を得ているとしています。
しかし、フィデリティがマイニングに携わる真の理由は、そうした取引利益ではなく、激変する仮想通貨マーケットを理解するためであるとのこと。
「一つの実験のようなものです。マイニングを始め、現在でも続けている理由は、ネットワークがどのようにはたらき、コンセンサス・アルゴリズムがどのようなもので、採掘難易度(ディフィカルティ)がどの程度ものなのか、そういったことを知るためです」
スターン氏はまた、大量の専用コンピューターを電気代が安い環境で稼働させている中国のマイニング業者などには及ばないものの、例えば仮想通貨のトランザクションに関してしばしば問題になるフォーク(fork)など、マイニングを通じて価値ある学びを得続けているとコメントしています。
さらに、こうしたマイニング事業にとどまらず、同社の基金部門であるフィデリティ・チャリティズで2015年から行っているビットコインを使ったチャリティ事業では、寄付を行った顧客に対するインタビューを実施するなど、利用者の視点に関しても様々な知見を集めているとのことです。
Still thinking about #Bitcoin. No conclusion – not endorsing/rejecting. Know that folks also were skeptical when paper money displaced gold.
— Lloyd Blankfein (@lloydblankfein) October 3, 2017
先日には、ゴールドマン・サックスのCEOが「ビットコインについて考えている。承認か拒絶か、結論は出ていない。紙幣が金の代わりに導入された時も人々は懐疑的だったことを忘れてはならない」と語るなど、金融大手の仮想通貨に対する動向が注目されています。
既設のツールやインフラを利用した運用だけにとどまらず、その技術原理にまで立ち返るアプローチを進めているるフィデリティのような企業が仮想通貨市場に本格参入してくるタイミングは、そう遠くないのかもしれません。