ガスプロムがウクライナのガス未払い金の支払いと値引き打ち切りを要求

政治・国際関係

公開日 2014/03/04 00:10,

更新日 2014/03/04 00:10

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編集部注:本記事は翻訳家・平井和也氏の寄稿。同氏は、人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳をおこなっている。

AFP通信は、ロシア大統領府が土曜日に治安回復に向けたクリミアからの支援要請を無視しないとの立場を明らかにしたと伝えている。ウクライナ南部クリミア自治共和国の親ロシア派のアクショノフ新首相は、ウクライナ新政権との対立が続く中で、プーチン大統領に対して、治安回復のための支援を要請している。この支援要請を無視しないというロシア政府の態度表明は、ロシアの主要な通信社全社が大統領府の情報筋からの情報として伝えたものだ。

 

ウクライナのガス未払い金の支払いを要求するガスプロム

また、ロシアの国営ガス輸出企業ガスプロムも土曜日に、ウクライナのロシアからのガス輸入に対する巨額の未払い金の支払いを求めている。同社の広報官はノーボスチ・ロシア通信社の取材に対して、現在ウクライナとの関係は良好で、ガスの輸送に問題はないが、未払い金が15億4,900万ドルに上っており、現行の市場価格に対する割引価格を維持することはできない、と発表している。1

この報道からほどなくして、ロシアはウクライナへの軍事介入を開始した。現状ではロシアが優勢に事を進めているようだ。実際、ウクライナ東部の親ロシア系住民が1日ロシアを支持する数千人から1万人規模の抗議デモを行ったという報道がある。また、Russia Today(RT)の報道によると、ウクライナ海軍のベレゾフスキー総司令官が寝返り、親ロシア派のクリミア自治共和国に忠誠を誓ったとされている。

さらに、ノーボスチ・ロシア通信社の報道によると、今年に入ってから675,000人のウクライナ人がロシアに移住しており、ロシア連邦移民局によると、ロシアの市民権を求めるウクライナ人の申請件数が急増しているという。ロシア専門家の佐藤優氏はウクライナ問題について、西ウクライナとそれ以外の地域の問題だという基本的な認識を示しており、次のように説明している。

第二次世界大戦後、ソ連によって併合された西ウクライナ(ガリツィア地方)では、伝統的に反ロシア感情が強く、排外主義的な民族主義団体が存在する。また、ガリツィア地方出身者がカナダのエドモントンに多く居住しており、ウクライナの民族主義団体に資金援助を行っている。ロシアは、これらの動きがウクライナに反露政権を樹立する動きであると認識し、警戒感を強めている。

佐藤氏の見立てに従えば、今後のウクライナがどういう行く末をたどる可能性があるのかを考える上で、一つの判断材料になるのではないか。クリミアが独立した政府を持つことの是非を問う住民投票が3月30日に実施されることが決まったが、ここでもしロシア帰属が認められれば、クリミアのロシア併合を求める流れに弾みがつくだろう。実際、モスクワ・タイムズの報道では、ロシア系住民が多く居住するクリミアでは、多くの人たちがウクライナ東部との併合を望んでいるとされている。

 

複雑な背景を抱える問題

ただ、問題はそんなに単純なものではないだろう。クリミアは複雑な歴史的・民族的背景を抱える地域であり、特にかつてスターリンによって中央アジアやウラル地方へ強制移住させられた過去があるイスラム系のタタール人はロシアとの統合に脅威を感じており、ウクライナへの残留を望んでいる、とロイター通信は伝えている。そういう中で、ロシア系住民とタタール人の衝突の可能性もある。

また、経済の面では、経済危機に直面するウクライナにとって今回のガスプロムによるガス未払い金の支払い要求および値引き打ち切り宣言は切迫した課題だ。このウクライナのガス問題はEU諸国にとっても他人事ではない。ロシアから欧州へ天然ガスを送るパイプラインはウクライナを経由しており、AFP通信の報道ではその割合はガス輸入の66%に達しているとされている。個別に見ると、ドイツが37%、イタリアおよびフランスが27%という数字だ。2006年と2009年には、料金の支払いをめぐる対立を背景にガスプロムがウクライナへのガス供給を停止し、その影響で欧州各国へのガスの供給も止まるという事態が発生している。

ただし、ブルームバーグが3日に報道した内容によると、ロシアのウクライナ経由でのEU向けのガス輸出の割合は、以前よりは減っているということだ。その理由は、ロシアからバルト海を抜けてドイツにつながるノード・ストリームと呼ばれるルートが2011年に開通したことであり、EUはこれによってウクライナ経由のガス輸入の割合を80%から約50%に減らすことができたとされている。また、ウクライナを迂回してロシアから黒海を抜けてEUにガスを輸送するサウス・ストリームというパイプライン建設のプロジェクトもある。

 

Photo : commons.wikimedia.org
  1. http://www.afp.fr/en/news/topstories/russia-says-will-not-ignore-crimea-leaders-request-help []

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著者
平井和也 | 1973年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。人文科学・社会科 学系の翻訳者(日英・英日)。F1好き。 Twitter:@kaz1379/ブログ:http://entrans221.blog38.fc2.com/
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