米国政府機関がウクライナのクーデターに資金提供を行っていた

公開日 2014/03/05 15:43,

更新日 2014/03/05 15:43

無料記事 / 政治・国際関係

編集部注:本記事は翻訳家・平井和也氏の寄稿。同氏は、人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳をおこなっている。

米国政府機関が資金提供を通じて今回のウクライナのクーデターを支援していたという事実が明らかになり、ネットを中心に大きな話題になっている。この事実は、在日ロシア大使館の「米国政府はUSAID等の資金を活用して、今回のウクライナのクーデターを支援していました」というツイートを通じて国内にも広まることとなった。

米国政府はUSAID等の資金を活用して、今回のウクライナのクーデターを支援していました。 http://t.co/vsC50RZA9u

— RusEmbassy in Japan (@RusEmbassyJ) March 3, 2014

 

この事実を暴いたのは米国サンフランシスコに拠点を置く「The Pando Daily」というサイトの記者たちだ。このサイトに書かれている内容を以下にまとめてみた。

米国政府は、米国国際開発庁(USAID=開発途上国の資金・技術援助を行う国務省管轄の政府機関)を通じて今回の革命前からウクライナの反政府グループに資金援助を行い、重要な役割を果たしていた。さらに、反政府グループには他にも資金援助を行っていた者がおり、その人物とはなんとオークションサイト「eBay」の創設者であり会長でもあるピエール・オミダイア氏なのだ。

この革命は米国に支援されたクーデターとは言えないが、資金援助がヤヌコビッチ政権の転覆を目論むグループの多くにとって大きな力になったことを表わす明確な証拠が見つかっている。

今回のウクライナの革命ではネオファシストが中心的な役割を果たしたが、本当の政治の実権はウクライナの親欧米派のネオリベラリストにかかっており、その一人が2004年のオレンジ革命のリーダーであるビクトル・ユシチェンコ氏の右腕だったオレグ・ルィバチュク氏だ。

ルィバチュク氏は欧米の支援を受けているNGOや運動を管理しており、そのNGOや運動の中にはNew CitizenやCenter UA、Chesno、Stop Censorshipなどが含まれている。これらの団体および運動は、ウクライナ各地で反汚職キャンペーンを展開し、ヤヌコビッチ前大統領を支持する政治家たちに働きかけ、力を強めた。

このNGOの活動が功を奏し、ウクライナ政府に対してNGOを閉鎖するために汚い手段を使ったことに関して批判の声があがった。しかし、2月初めにウクライナ内務省の経済関係部局がこのNGOに対して大規模な資金洗浄の容疑で捜査を行ったのだった。ところが、NGOはこの圧力に屈しないだけの強さ、つまり、カネを持っており、政権交代に向けた活動を続けることができた。

 

その資金源はどこなのか?

『キエフ・ポスト』の報道によると、ピエール・オミダイア氏のオミダイア・ネットワークがCenter UAの2012年の予算500,000ドルの36%(約200,000ドル)を出資しており、USAIDは54%を出資しているという。その他の出資機関には、米国政府の支援を受けているNational Endowment for Democracyがある。

さらに、オミダイア・ネットワークは2011年にNew Citizenに対して335,000ドルを出資している。New Citizenとは、ルィバチュク氏が代表を務めるNGOであるCenter UAを通じて運営されている反ヤヌコビッチ運動の一つだ。当時、オミダイア・ネットワークはNew Citizenへの資金提供を通じてウクライナにおける公共政策の形成に力を発揮できると宣言していた。そして、かつてオレンジ革命を陰で支えたルィバチュク氏は、2012年3月に第二のオレンジ革命の準備をしていると宣言したのだった。

資金の流れを詳細に記録した文書を見ると、オミダイア・ネットワークはルィバチュク氏の反ヤヌコビッチ・キャンペーンであるChesnoを主にウクライナ語圏の西部および中部の地方都市に広めるための資金も提供していることがわかる。

 

ルィバチュク氏とはどんな人物なのか?

ソビエト時代、ルィバチュク氏は軍の言語プログラムを受けた経験があり、このプログラムを修了した人たちの半数はKGBで働いていた。同氏はウクライナ保安庁(SBU)の上層部と緊密な関係を築いており、2004年のオレンジ革命の時にはSBUから不正投票と暗殺計画に関する機密情報を受け取っている。

ソ連崩壊後の1992年にルィバチュク氏は新設されたウクライナ中央銀行の渉外部門の責任者に就任し、この時に中央銀行の総裁を務めていたのが後にオレンジ革命のリーダーになったビクトル・ユシチェンコ氏だったのだ。ウクライナ中央銀行の時代に、ルィバチュク氏は欧米諸国の政府関係者や経済支援団体、ジョージ・ソロス氏などと緊密な関係を築いたのだった。

2005年にオレンジ革命のリーダーであるユシチェンコ氏がウクライナの大統領に就任しルィバチュク氏を副首相に任命し、EU、NATO、その他の欧米の機関との関係構築を任せた。2010年にユシチェンコ氏が大統領職を失い、ヤヌコビッチ氏が新大統領に就任すると、その一年後にルィバチュク氏はオミダイア氏とUSAIDから資金提供を受けるようになり、第二のオレンジ革命の準備を始めた。

オミダイア氏の資金の中には、ウクライナの地方都市でルィバチュク氏が展開しようとしている議会の汚職追放を目指すNGOの設立資金をまかなうために特別に用意されたものもあった。昨年11月に反政府運動が噴出した直後に、ウクライナ内務省がルィバチュク氏の管理するNGOに対して資金洗浄の容疑で捜査を開始し、オミダイア氏の名前が政治闘争の渦の中に飛び出したのだった。

2月10日付けの『キエフ・ポスト』は、「ルィバチュク氏の民主主義を推進するためのNGOに愚かな捜査の手が」と題する記事を掲載しており、次のように報じている。

Center UA(欧米の出資者から資金提供を受けている公共部門の政府監視機関)によると、ウクライナ警察が資金洗浄の容疑で捜査を行っているという。同団体の代表であるオレグ・ルィバチュク氏はこの捜査に対して、政府当局がウクライナにおける民主主義、透明性、言論の自由および人権を促進させるために活動している他のNGOに警告を発しているようだと語っている。

Center UAによると、ウクライナ内務省のキエフ経済犯罪捜査部が12月11日に捜査を開始したという。しかし、当局の捜査は最近になって強化されており、約200名の人たちに対して取り調べを行っている。Center UAの2012年の年次報告書によると、同団体は500,000ドル以上の資金提供を受けており、そのうちの54%はPact Inc.からのものだ。Pact Inc.とは、米国国際開発庁(USAID)から資金が出されているプロジェクトだ。

また、36%はオミダイア・ネットワークからの提供であり、オミダイア・ネットワークは「eBay」の創設者であるピエール・オミダイア氏とその妻によって創設された財団だ。さらに、資金提供元の中には、ジョージ・ソロス氏が巨額出資しているInternational Renaissance Foundationと米国議会が巨額出資しているNational Endowment for Democracyも含まれている。

この記事を読み、裏舞台でこういうカネが流れ、人脈が動いていたのだと思うと、改めて国際政治の泥臭さを感じさせられる思いだ。

 

【参照記事】

Pierre Omidyar co-funded Ukraine revolution groups with US government,documents show

 

Photo : Twitter

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著者
平井和也 | 1973年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。人文科学・社会科 学系の翻訳者(日英・英日)。F1好き。 Twitter:@kaz1379/ブログ:http://entrans221.blog38.fc2.com/
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