マッキンゼーによる新型コロナウイルスによる世界経済への影響についてのメモ

政治・国際関係

公開日 2020/04/01 03:37,

更新日 2020/04/03 22:04

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新型コロナウイルスについては、信頼できる正確なニュース・情報を日々手に入れることも重要だが、経済・社会的な影響について今後のシナリオを把握しておくことも求められる。

その意味で、コンサルティング企業McKinsey & Company(マッキンゼー)による「COVID-19:Briefing materials」は必読だろう。

以下、同資料のメモである。

免責事項:本記事はあくまで一部を抜き出したメモである。訳は一部不正確な可能性があり、いくつかの重要なセクションについても触れていない。変化する状況から今後のシナリオを把握するための覚書として活用いただきたい。

生命と生活を守る

われわれがおこなうべきは、我々の生命を守ること生活を守ることの2つ。それぞれ3つのポイントがある。

1.私たちの生命を守る

1a. できるだけ早いウイルスの制御
1b. 治療および検査能力の拡大
1c. 治療、薬、ワクチンなど「治療法」の発見

2.私たちの生活を守る

2a.  ロックダウンの影響を受けた人々・企業へのサポート
2b. ウイルスが沈静化した際、安全に仕事へと戻るための準備
2c. -8%から-13%まで予想される景気の谷からの回復に向けた準備

世界経済が直面する3×3のシナリオ

以下、本スライドの引用元となっている資料の文言もあわせて参照していく。

  • 高い不確実性に直面した時、人々は思考停止するか「これはインフルエンザのようなものだ」などの短絡的な答えを出してしまう
  • 世界経済への影響は、ウイルスの拡大と公衆衛生上の対応で3つ、波及効果と経済政策上の対応で3つ、計9つのシナリオが考えられる
  • A1-A4が経済への壊滅的被害は回避されたシナリオであり、B1-B5が極端なシナリオである。現実的なシナリオは前者であるが、欧米で患者が急増している中で後者の可能性も排除できない。

ウイルスの拡大と公衆衛生上の対応によって規定される3シナリオ

① 強力な公衆衛生上の対応により、2〜3か月以内に各国での拡大を抑制。ソーシャル・ディスタンシングもすぐに終了(中国、台湾、韓国、シンガポールなどが実現)
② 当初は公衆衛生上の対応が成功するものの、ウイルスの再発を防ぐためソーシャル・ディスタンシングが数か月継続
③ 公衆衛生の対応は失敗し、ワクチンの開発や集団免疫の獲得までウイルスを制御できない

波及効果と経済政策上の対応によって規定される3シナリオ

④ 経済政策の無効:拡大する景気後退がスタート。広範囲にわたる破産および信用不良。潜在的な銀行危機。
⑤ 部分的な効果:政策対応が、経済的損害をある程度相殺。銀行危機は回避。しかし、高失業率と倒産は景気回復を弱める。
⑥ 非常に効果的:強力な政策対応により、経済への構造的なダメージを防ぐ。ウイルスが制御された後に強い反発を引き起こし、経済を危機前のレベルと勢いに戻す。

9つのシナリオのうち、現実的だと評価されているのが⑤と組み合わせた、①と②のシナリオである。すなわちA-3とA-1である。

A3:ウイルスの封じ込め

  • このシナリオは、経済政策には⑤部分的な効果があり、ウイルスについては②公衆衛生上の対応が当初は成功するものの、ウイルスの再発を防ぐためソーシャル・ディスタンシングが数か月継続する
  • 2020年の世界経済は、1.5%のマイナス成長。景気回復は2020年第2四半期からとなる。

A1:回復の遅れ

  • このシナリオは、経済政策には⑤部分的な効果があり、ウイルスは①強力な公衆衛生上の対応により、2〜3か月以内に各国で抑制される。
  • 2020年の世界経済は、4.7%のマイナス成長。景気回復は2022年第3四半期からとなる。

A1であってもA3であっても、第二次世界大戦以降の不況を上回ると見られている。

セクター別の影響

  • オイル&ガス、航空宇宙・防衛産業、航空・旅行、医療保険料支払人などの企業が打撃を受けている
  • 反対にコンシューマーサービス、小売、医薬品、医療提供機関などの打撃は少ない

5つの計画・実行

リーダーは新型コロナウイルスを受けて、下記5つを計画・実行する必要がある。

決断(resolve)、レジリエンス(resilience)、ビジネスの回復(return)、新たな価値・規範への再考(reimagination)、変革(reform)

個人的見解

以上、重要な部分を抜き出した。以下では、本レポートを受けた個人的見解について。

  • 多くの人が短期的な症例数・検査数などに注目しているが、新型コロナウイルスがもたらす社会的・経済的インパクトや今後想定されるシナリオに目を向けるべきである。その意味で本レポートの意義は大きい。
  • 第二次世界大戦後の不況を上回るという部分は、前期のピークと比較しているためグラフの落ち込みのみを見てしまうのはミスリーディングかもしれない。特に近年は好景気が続いていたため。
  • A3シナリオでは2020Q2に底をつけて回復するシナリオになっているが、EUと米国の感染状況次第ではQ3にずれ込むかもしれない
  • イタリアやアメリカなど欧米での感染拡大ピークは、1週間後から1ヶ月後まで様々な見解が出ている
  • もし1ヶ月後にピークがやってくるならば、A1シナリオが現実味を帯びてくる
  • 検査能力の拡大が挙げられているが、日本でも3月中旬頃と状況が変わっており、こちらが現状最大の課題ではないだろうか(例えば東京都は1日最大340件しか検査できないため、早晩限界が来るかもしれない
  • 強力な公衆衛生上の対応と一口に言っても、中国モデルや韓国モデルのように対応は分かれるため、権威主義国家ではなく民主主義国家の方法(具体的には韓国)から学ぶ必要があるだろう

反響があれば、今回取り上げた部分以外についても紹介していく。

注意事項

  • 日本語版の資料として「COVID-19: ビジネスへの意味合い」という要約レポートが2月28日に公開されているものの状況は変化しており、最新の知見が反映された英語資料が望ましい
  • (シミュレーションなどの社会科学的手法は存在するが)シナリオを予測することは科学ではない、あくまで蓋然性の高い予測を選択する意思決定である
  • 誤訳やミスリーディングな箇所があれば、筆者のTwitterまでご連絡いただきたい

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著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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