ナショナリズム団体「日本会議」の危険性:エコノミスト紙や仏誌が相次いで指摘

政治・国際関係

公開日 2015/06/17 03:38,

更新日 2015/06/17 03:38

無料記事

英・The Economist紙や仏・L’Obs誌などが相次いで、日本の危険な右翼団体「日本会議」が、安倍政権の政策に大きな影響を与えていると報じている。

民族主義の思想を掲げた、日本で最も強力なロビー団体

The Economist紙は「Right side up」と題した記事で、「ナショナリズムを掲げた、日本で最も強力なロビー団体」として日本会議を紹介している。
記事によれば、日本会議は第二次世界大戦において、西洋人の植民地主義から日本がアジアを解放したと主張し、再軍備や、左翼教師によって洗脳された生徒への愛国心の鼓舞、戦前における天皇崇拝の復活などを求めている。

安倍政権に多大な影響力

日本会議のメンバーは、国会議員の大半を占めるばかりではなく、安倍政権の閣僚の多くを構成しており、安倍首相自身も同団体の特別顧問として名を連ねている。

The Economist誌は、2012年に自民党が発表した新たな憲法草案は、多くが日本会議の思想に基づいていると指摘しており、彼らの存在は、韓国や中国の民族主義者に日本の軍国主義の高まりを主張させる根拠になり得る、と述べている。

戦後に押しつけられた歴史を塗り替える

一方で、 L’Obs 誌もまた、日本会議を「国際社会からそれほど注目されていないものの、影響力のある団体」と紹介する、「Japon:la face cachée de Shinzo Abe」と題された記事を掲載した。

記事では、安倍首相は新自由主義者でありながら、ロシアのプーチン大統領やインドのナレンドラ・モディ首相、そして岸信介元首相を賞賛する国粋主義的な傾向を持つと紹介。

The Economist紙と同様に、L’Obs誌もまた、日本会議がアメリカによって、戦後に「押しつけられた」価値観から決別し、第二次世界大戦の勝者によって「書き換えられた歴史を取り戻す」ことを目指していると述べている。

記事は、日本会議が南京大虐殺や慰安婦問題などに対して歴史修正主義的な態度を見せるとともに、歴史教科書の書き換えを目指しているが、こうした動きがどこまで強固に現れるかは、第二次世界大戦終結70周年記念となる8月15日に明らかになるだろうと結ばれている。

日本ではほとんど報じられず

このように、世界的にも影響力の高い雑誌が、次々と日本会議に危機感を表明してるにもかかわらず、その報道は日本国内においてはそれほど目立たない。

The Economist紙は、「奇妙なことに、この集団は政府中枢部への強い影響力が拡大しているにもかかわらず、日本のメディアからはほとんど注目されていない」と述べている。

果たして戦後70周年となる8月15日に、安倍首相はいかなる発言をおこなうのだろうか。先日、韓国・朴槿恵大統領は「慰安婦問題、交渉は最終段階」と発言して、様々な憶測を呼んでいる。

こうした中で、安倍首相は日本会議の影響力を露わにするのか、あるいはそのナショナリスト的な言動を抑えることで国際社会からの信頼を得ることができるのか、大きな注目を集めている。

この記事は、ライセンスにもとづいた非営利目的のため、あるいは社会的意義・影響力の観点から無料で提供されているコンテンツです。

良質なコンテンツを取材・編集して翻訳を届けるため、コンテンツをサポートをしてくださいませんか? みなさまの有料購読は、良質な記事をライセンスして届けるための重要な収益源になります。

月額3,200円で有料購読をはじめる
著者
株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
おすすめの記事
政治・国際関係

ニュース解説:カリフォルニア州雇用法案AB-5の成立は、「搾取との闘い」か?

有料記事

9月18日、米カリフォルニア州で、ギグ・エコノミーの労働者をこれまでの「独立した請負労働者」ではなく、「従業員」として再分類する可能性のある法案が成立した。2020年1月1日より施行予定の同法案は、上···
塚本 大
管理者
政治・国際関係

ナイジェリア国民、南アフリカから一斉退避:その背景は?

有料記事

南アフリカの最大都市ヨハネスブルクや首都プレトリアなど起きた移民排斥を背景とする暴動によって、アフリカの二大経済大国であるナイジェリアと南アフリカに緊張が生じている。暴動が激化する中、9月9日にナイジ···
管理者
政治・国際関係

なぜ平和の少女像を「日本国民の心を踏みにじる行為」と感じる人びとがいるのか?

無料記事

国際芸術祭『あいちトリエンナーレ2019』の企画「表現の不自由展・その後」をめぐって、現在も議論が続いている。混乱の発端には、平和の少女像の存在もあった。一部の政治家は、平和の少女像が展示されることを···
石田 健
政治・国際関係

強制投票は実現可能か、それは”良いもの”か?

無料記事

HEADLINEでは、今秋より月額3,200円の有料会員サービスを開始します。この記事は、サービスの開始後は有料記事となる予定です。もし、この記事に"読むべき価値がある"と感じられたら、ぜひ記事下部か···
石田 健
政治・国際関係

フェミニズムとは何か?:なぜ女性の権利ばかりが主張されるのか

無料記事

わたしたちは、フェミニズムの時代に生きている。フェミニズムを時代性やブームのように捉えることに異論はあるかもしれないが、#MeTooムーブメントや韓国の書籍『82年生まれ、キム・ジヨン』のベストセラー···
石田 健
編集長より

職が減っていく文系院生は、今後いかにサバイブしていくべきか

無料記事

将来を有望された研究者が、自ら命を絶つという痛ましい事件が話題を集めた。「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた:朝日新聞デジタル下記記事にある通り、この事件は経済的困窮を苦にしただけでな···
石田 健
政治・国際関係

ニュージーランドの移民政策:経済的事情とリベラルな国家、そして移民抑制

無料記事

十分な時間が経過していないため、断定することは危険性があるものの、白人至上主義者によるムスリムを標的としたヘイトクライムという見方が強まっている。この事件を理解するためには、ニュージーランドの移民政策···
石田 健
政治・国際関係

文化の盗用とは何か:所有/簒奪という二項対立を乗り越える

無料記事

文化の盗用、あるいは文化の簒奪と訳される「Cultural Appropriation」という概念が注目を集めている。6月25日、アメリカの著名セレブであるキム・カーダシアンが「Kimono」と名付け···
石田 健
政治・国際関係

ポリティカル・コレクトネスの時代とその誤解:なにが「ポリコレ疲れ」を生んでいるのか?

無料記事

アメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが勝利したことは、全世界で多くの衝撃を持って受け止められている。なぜトランプが勝利したのか?あるいは、なぜ事前調査で優勢と見られていたヒラリー・クリントンが敗北し···
石田 健