ピアソンが、既存株主に対してThe Economist株の50%を売却。
普通株27.8%をアニェッリ一族の投資会社Exor(エクソール)に2億2750万ポンドで売却。残りはEconomist Groupが買い取り。
日本では、このExorがサッカーの強豪ユヴェントスのオーナーでもあるため、このあたりも注目されているようです。
ジョン・エルカーンについて
しかしやはり注目は、Exorの若干39歳のオーナーであるジョン・エルカーン。
イタリア自動車最大手フィアットをなんと若干32歳で引き継ぎ、故ジャンニ・アニェッリの孫として、90年代に業績低迷に陥っていたフィアットを回復させた御曹司。
彼の結婚式には、イタリアの問題児ベルルスコーニ元首相も出席するほどで、「イタリアのケネディ」の異名にふさわしい活躍です。
そんなエルカーンですが、なんと大学在学中の21歳にはフィアットの役員に抜擢されています。当時は「アニェッリの孫」という点のみで、その手腕は未知数でしたが、見事に業績回復に貢献。
同社では、ファッショニスタとしても知られる、弟ラポ・エルカーンも活躍していました。
さて、米GEなど国際的な企業でも経験を積んでいる兄エルカーンですが、 News Corpのボード・メンバーでもあります。同時にイタリア最大の日刊紙ラ・スタンパ(La Stampa)のチェアマンでもあります。
ここは個人的な関心ですが、エルカーンはBrookings Institution や MOMA にもかかわっています。
つまり、エルカーンやExorは、メディア経営の経験もあるわけです。同時に、若い御曹司であることから、単にNews Corpのようなメディア経営を進めるわけではないことも予想されます。
今回の売却の行方は?
では、この売却は成功するのか?という点ですが、個人的には期待が大きいです。
「若い経営者と伝統メディア」という組み合わせで言えば、Facebook創業者クリス・ヒューズとThe New Republicを思い出す人も多いでしょう。
アメリカの大統領専用機にも載せられる名門雑誌TNRですが、経営は低迷。ヒューズが経営に参画しましたが、そのクオリティは下がっていると言われています。
その意味で、この組み合わせには成功しなかった前例もあるわけです。
一方、エルカーンの手腕はすでに多くの人が認めていますし、Economistにとっては長期的な視座で、ブランドを守りつつ経営を進めていくには最適なパートナーに見えます。
MEDIA HACKでは何度も入っていますが、Economistは単なる雑誌ではありません。自由主義という1840年代のイギリスが生み出した時代精神を継承するブランドです。
その意味で、今回の買収には注目せざるを得ません。
http://www.theguardian.com/media/2015/aug/12/pearson-sells-economist-stake-exor