実はマイノリティ?男子校についての意外な実態

政治・国際関係

公開日 2013/09/29 15:03,

更新日 2013/09/29 15:03

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この記事を見る人のうち、どれほどの人が男子校に通ったことがあるだろうか。そもそも、あなたの身の回りには男子校があっただろうか。現在、23県には男子校が一校も存在しない。

正確に言えば、「男子のみ在籍」の高校が存在しないということなので、男子しか生徒募集をしていないという意味での男子校が存在しない県はこれよりさらに多い。つまり、日本の半数近くの都道府県には男子校がないのだ。

現在、男子校は、全国の小学校・中学校・高校1のうちで141校ほど存在する。そして、このうちの6割近い82校が関東地方2に集中している。ついで近畿地方3に24校あるものの、これを見て明らかなように、男子校はかなり偏った地域にしか存在しないのだ。

もちろん、かつて男子校が多数存在した地域もある。代表的なのは東北地方だろう。旧制中学校の名残を残した公立の男女別学校、いわゆるナンバー・スクールが戦後も残り、近年ついに「半世紀遅れの男女共学制移行」4がなされた東北地方だが、特に有名なのは宮城県のケースだろう。少し長くなるが、共学化の流れを書いていくことにしよう。

宮城県における共学化の流れ

1999年の県議会で、(奇しくも仙台二高の出身である)浅野史郎知事が「男女共同参画社会の実現」を県の重要な施策であるとし、全県立高校の共学化の方針を打ち出した。これを受けて県の教育委員会は2001年に「県立高校将来構想」を策定した。

この構想において、県立高校振興のための課題として、「生徒の多様化への対応」「中学卒業者数の減少への対応」「地域社会との連携」「男女共同参画社会に向けた取り組み」が挙げられているが、その背後には、少子化(および過疎化)に伴う高校統廃合問題の解決を図る狙いがあったという。

こうした行政の動きに対し、仙台市内の伝統校および各校の同窓会を中心に「県立高校の画一的共学化反対」運動が盛り上がりを見せたものの多数派にはならず、2005年に共学化計画の見直しと別学支持を謳って当選した村井嘉浩知事(現職)も共学化の動きを止めることは出来なかった。

現在、公立男子高校は全て共学化され、宮城県内の男子校は私立東北学院中学校・高等学校だけとなっている。

賛成論と反対論

ここで、簡単にではあるが宮城県の共学化をめぐる賛成論と反対論について紹介したい。まず賛成論だが、男女が学校を共にすることが自然であるという本質論から、性別によって公立高校の受験機会の制限がなされることや男女共同参画時代にふさわしくないことへの批判などがある。

つぎに反対論だが、別学で行う教育的価値の有効性や伝統の保持、別学でも男女共同参画社会に寄与できる、多様な選択肢の一つとしての別学などの理由が挙がっている5。こうした共学化反対論に対し、共学出身者からは別学による利点とされる教育効果は共学でも育つと反論がなされ、むしろナンバー・スクールのもつエリート意識やその温存などへの批判があがることとなった。

マイノリティーとしての男子校

ともあれ、現在では公立の別学校は埼玉県、栃木県、群馬県の北関東3県にわずかに残るのみとなった。もちろんこれらの県でも共学化の議論は起こっており、実際に共学化した学校もある。ちなみに現在、国立の男子校は筑波大学附属駒場中学校・高等学校が1校のみとなっている。

さて、ここまで国公立の男子校がいかに少数しか存在しないかを見てきたが、私立の男子校についてはどうだろうか。結論から先に言うと、私立の男子校もまた、減少の一途をたどっている。全国の男子校のほとんどは私立校6だが、少子化に伴う生徒数の減少を受け、経営上の理由から共学化に至るケースも増えている。

学校基本調査を見ると、近年中学校や高校の総数が減少しているのに対し、私立中学校は1970年代後半からその数を増やし続けており、私立高校についても微妙な増減はあるものの、平成以降その校数は安定している。このことを鑑みるに、私立校での共学化や私立共学校の新設が進んでいるのではないかと考えられる。

進学校としての私立男子校

ところで、一部の私立男子校は難関大学への高い合格実績を誇っている。灘、開成、麻布、ラ・サールなどの名前は、大学受験をした人であれば耳にしたことがあるかもしれない。現行の教育制度においてマイノリティにもかかわらず、受験における男子校の存在感は大きいものがある7。こうした進学実績によって、今も多くの受験生を引き付ける難関男子校は、たしかに今後も生き残るかもしれない。

しかし、これらの学校を脅かすかもしれない動きがある。それは東京都における都立高校改革である。多くの私立名門男子校を擁する東京だが、受験に関していえば、こうした私立優勢の状況は1970年代半ば以降のものである。戦前の旧制時代、「一中—一高—帝大」という言葉が象徴的なように、都立のナンバー・スクールは旧制高校や帝国大学など最高学府への進学ルートとして盛んに喧伝されていた。戦後、新制になってからもこの傾向は変わらず、「番町—麹町—日比谷—東大」など、都立高校の優勢は維持されていた。わかりやすい例として、東京大学の合格者ランキングがある。1970年頃まで、東大の合格者は都立校や県立校など、公立校がランキングの上位を占めていた。

しかし、受験競争の過熱を受け、1967年の東龍太郎都知事時代、小尾乕雄教育長による都立高校入試に学校群制度が導入されたことをきっかけに都立高校の進学実績は軒並み低下し、これと入れ替わるような形で私立校が東大の合格者数ランキングの上位へと躍り出ることになった。こうした私立中高一貫校(その多くは男子校)による「エリート大学」の合格者寡占は、1991年の第14次中央教育審議会学校制度小委員会において問題化されたほどだった。

都立高校の復権?

その後、石原慎太郎都知事時代の2001年、「都立復権」をスローガンに「進学指導重点校」の指定を横山洋吉教育長のもとで行った。2003年には学区制度を完全撤廃し、2005年には附属中学校の開校により、都立校では初の中高一貫校の新設がなされた。その志願倍率は私立校のそれを上回り、現段階では進学実績において難関私立校の併願校として扱われてはいるものの、学費が安いこともあり、私立優勢の状況を変化させる可能性を含んでいる8のはたしかだろう。こうした受験動向の変化は難関私立男子校にも将来影響を及ぼしうるのではないだろうか。

以上で見てきたように、日本において男子校は数の上で圧倒的にマイノリティとなっている。おそらく、こうした共学化や男子校の減少は今後も継続していくことになるだろう。

受験動向の変化により公立校の復権が起これば、私立中心の男子校も共学化などによる広範な生徒獲得戦略を取らざるを得なくなるかもしれない。現在はまさに、男子校にとって、さらには日本の教育状況において過渡期と言えるかもしれない。

  1. 中学と高校については全日制・定時制・通信制、共学だが「男子のみ在籍」の高校も含む。 []
  2. 千葉県、茨城県は除く。 []
  3. 滋賀県、和歌山県は除く。 []
  4. 橋本紀子,2007,「東北地方における半世紀遅れの男女共学制移行」『教育とジェンダー』研究7:34-46. []
  5. 21世紀をひらくみやぎ女性のつどい,2003,『男女共学のハンドブック——ともに学びともに生きる——これからの社会に向けて』 []
  6. 小中高あわせて119校ほど現存する。これは全男子校の8割以上である。 []
  7. 例えばおおたとしまさ,2011,『男子校という選択』を参照。 []
  8. http://diamond.jp/articles/-/16637を参照。 []

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都内大学院に在籍中、社会学を専攻する。男性のジェンダー・アイデンティ形成に関する研究をおこなっているが、HIPHOPも愛して止まない。
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