BuzzFeedがスゴい3つの理由(前編):BuzzFeedとは何か

テック, メディア

公開日 2015/08/20 06:57,

更新日 2015/08/20 06:57

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BuzzFeedが、いよいよ日本に上陸することを明らかにしました。

日本においては、すでにバイラルメディア狂騒が落ち着いてきた所以か、それほど騒がれていない印象ですが、いよいよ彼らの動向が本格的に日の目を見ることとなります。

http://jp.techcrunch.com/2015/08/18/20150817buzzfeed-japan/

このブログを見てくださっている方は、BuzzFeed芸人こと佐藤慶一氏の名前を聞いたことがあるはずなので、BuzzFeedについても、彼のブログを見ていることでしょう。

そのため、改めてBuzzFeedとは何かについて説明する必要はないかもしれません。

http://media-outlines.hateblo.jp/entry/buzzfeed-japan

そこで今回は、BuzzFeedとはどんな企業であるかについて簡単に触れた上で、なぜ彼らがすごいのかという点を個人的な視点から整理してみたいと思います。

結論を先取りするならば、彼らのすごさは「バイラルを引き起こすこと」でも、「ネイティブ広告で収益化していること」でもありません。むしろ、それに注目することで、「日本のバイラルメディアの先駆け」としてBuzzFeedを理解してしまっては、そのイノベーティブなポイントを見誤ってしまうことになるでしょう。

彼らのすごさは、大きく3点あると思います。

1つは、伝統的メディアと新興メディアが溶け合う狭間、その最前線にいること。

もう1つは、彼らをその位置に押し上げている、シェアに関する思想について。

そして最後の1つは、その思想によって定義された”サービス”が、彼らと伝統的メディアとの接近をよりナチュラルなものへと変化させていることです。

BuzzFeedとは何か?

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まずBuzzFeedとはどのような企業でしょうか。主要なデータのみを抜き出すと、以下のようになります。

  • 創 業:2006年(正式には2008年)
  • 本 社:New York
  • 創業者:ジョナ・ペレッティ(Jonah Peretti)、ジョン・ジョンソン(John Johnson)
  • サイト:http://www.buzzfeed.com
  • 調達額:2億9630万ドル

2億9630万ドルという驚異的な資金調達総額ですが、そのラウンドは以下のとおりとなります。

Private Equity($200M)
日 付:2015年8月18日
投資家:NBCユニバーサル(Lead)

Series E($50M)
日 付:2014年8月10日
投資家:Andreessen Horowitz

Series D($19.3M)
日 付:2013年1月3日
投資家:New Enterprise Associates (Lead) 、Kass Lazerow、Lerer Hippeau Ventures、Michael Lazerow、RRE Ventures、SoftBank Capital

Series C($15.5M)
日付:Jan 9, 2012年1月9日
投資家:New Enterprise Associates (Lead) 、Hearst Ventures 、Lerer Hippeau Ventures 、 RRE Ventures、SoftBank Capital

Series B($8M)
日 付:2010年5月12日
投資家:RRE Ventures (Lead) 、Founder Collective、Hearst Ventures、John Johnson、 Ken Lerer、Ron Conway、SoftBank Capital、SV Angel

Series A($3.5M)
日 付:2008年7月9日
投資家:Hearst Ventures (Lead)、John Johnson、Ken Lerer、SoftBank Capital

18日に発表されたのが、NBCユニバーサルによる投資ですが、こちらがなんと2億ドル。評価額はおよそ15億ドルにまで達しました。

本ブログでは何度か登場していますが、NBCユニバーサルはNBCやユニバーサル・ピクチャーズなどを保有する企業で、アメリカ最大手ケーブルテレビのコムキャスト(Comcast)傘下にあります。

他にも有力VCであるAndreessen Horowitzや、SoftBank Capitalの名前が目立ちます。

ジョナ・ペレッティとジョン・ジョンソンについて

では、これほどまでに巨大な企業をつくった2人の創業者はどのような人物でしょうか。

まずジョナ・ペレッティはよく知られた人物です。カンフェレンスやメディアに登場するのは、主にペレッティです。

彼の名前は、日本でもおなじみThe Huffington Postの共同創業者の1人として知られています。

ペレッティは、1974年1月1日生まれの現在41歳。カリフォルニア州オークランドで育ち、大学はカリフォルニア大学サンタクルーズ校出身です。学部時代は、環境学を学び、ミシェル・フーコーやカント、そしてマルクスにロラン・バルトといった思想家を読んでいました。(イケてますね)

そんなペレッティは大学卒業後に、とある高校で教員をしながら、コンピューターを基軸にしたユニークな授業をおこなっていました。その後、縁あってMITメディアラボに入学した彼ですが、とある事件を引き起こします。

それはNIKEのスニーカーに自由なプリントを施すサービスに、「sweatshop(搾取工場)」とリクエストしたことです。これがNIKE側から拒否され、同社とのメールのやり取りをネットで公開したところ、大きな反響が集まります。

彼は一躍時の人となり、”バイラル” に関心を持つことになるのです。

その後ペレッティは、The Huffington Post を経て、サイド・プロジェクトだったBuzzFeedに専念。その後の躍進は、言うまでもありません。

では、もう1人のジョン・ジョンソンとは誰でしょうか?

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(Photo : BuzzFeed

実は彼は(日本では)ほとんど脚光を浴びることのない人物ですが、個人的には非常に面白い経歴を持っている人物だと思います。

彼とペレッティの出会いは、ニューヨーク・マンハッタンのチェルシー地区にある「Eyebeam Art + Technology Center」でした。この研究ディレクターに応募してきたのがペレッティだったのです。

この聞き慣れないマルチメディア・センターは、世界的な製薬・ヘルスケアコングロマリット企業ジョンソン&ジョンソンを創業した兄弟の1人ロバート・ウッド・ジョンソン(Robert Wood Johnson I)の財団の相続人であるジョン・ジョンソンによってはじめられました。

彼は、この団体で若いアーティストや技術者を支援したり、インディペンデント映画のための奨学金を提供していました。

名前からも想像出来る様に、BuzzFeed共同創業者のジョン・ジョンソンとは、ジョンソン&ジョンソン創業者の子孫なのです。

個人的には、こうしたつながりは現代アメリカにおいて興味深いものだと思いますし、単に金持ちの道楽と侮るわけにはいきません。ロバート・ウッド・ジョンソンの子孫には、映画界やアート界に貢献をしている人物が何人か見られますが、ジョンソンもその1人なわけです。

ちなみにこのあたりは、完全に個人的な趣味ですが、関係はこんな感じです。

————

ロバート・ウッド・ジョンソン(曽祖父)

=1845~1910年。ジョンソン&ジョンソン創業者。

ジョン・シュワード・ジョンソン1世(祖父)

=1895~1983年。フロリダアトランティック大学のハーバーブランチ海洋研究所(HBOI)の創設者。

ジョン・シュワード・ジョンソン2世(父)

=1930年~。彫刻アーティスト。「フォーエバー・マリリン」や「無条件降伏」などの作品で知られる。

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(フォーエバー・マリリン、Photo: www.kcet.org)

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(無条件降伏、Photo : nyclovesnyc.blogspot.com)

ジョン・ジョンソン(ジョン・シュワード・ジョンソン3世)

=BuzzFeed共同創業者。Eyebeam設立者。

こちらも与太話ですが、どうやらシュワード・ジョンソン一家は、女性関係などの家庭内問題でよく揉めているようです。財産をめぐっての訴訟もちらほら確認できました。そのうち、関係図でも書きます。

————

いずれにしても、このマルチメディア・センターでは、ジョンソン曰く「アートの世界と初期のインターネット文化が衝突する瞬間」について研究されていました。

ジョンソンは、コロンビア大学で社会科学における方法論や定量的研究に関する研究で修士号を取得していますが、この研究所にもコロンビア大学関係者が数多く関わっています。例えば、Yahoo! で主任研究員を務めている、コロンビア大学のダンカン・ワッツもその1人です。

このグループは、「アイデアがソーシャルネットワークを介して、いかに伝播していくのか?」ということを研究していましたが、ペレッティもその議論に関心を持ちます。

ここまで、長々とジョンソンの経歴についてお話ししてきた理由をお分かりいただけましたでしょうか。BuzzFeedの萌芽はここにあるのです。

もともと哲学的な問題や社会的な話題に関心の深かったペレッティですが、ニューヨークでジョン・ジョンソンらのグループと出会ったことで、その方向性が決定します。その実験プロジェクトがBuzzFeedなのです。

これは余談ですが、こういうエピソードがもう少し広まると良いなと思います。それは、僕が政治思想で修士号を取得した後に、ウェブ・メディアの仕事をしているという個人的なバックグラウンドとも無縁ではありませんが、(人文学のようなあまり役立たそうな)研究がいかに実社会とか関わっていくかという問いについて、興味深いケース・スタディーになるからです。

現在のBuzzFeed

では具体的に現在のBuzzFeedは、どれほどのインパクトを持っているのでしょうか?彼らの最近の発表からそれを見てみましょう。

  • アメリカ国内における月間ユニーク訪問者8240万人(2015年7月)
    comScoreによる調査。そのうち半数が、18-34歳のミレニアル世代。
  • グローバルでの月間ユニーク訪問者2億人(2015年8月)
    BuzzFeedによる発表、これは昨年のほぼ2倍。
  • 月間再生数10億回(2015年3月)
    BuzzFeedの動画スタジオ(BuzzFeed Motion Picture)による動画の月間再生数が、10億回を突破。

そして、こちらが2014年の1年間を通じた数字です。

  • 5万8655年分の滞在
    人々がBuzzFeedで2014年に過ごした時間の合計。
  • 160億PV、2億シェア、50万コメント
    2014年に読まれた記事の合計。
  • 5つの言語
    BuzzFeedは現在、英語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語・スペイン語で読めます。
  • 25の地域からレポート、4つの新たなブランチ(オフィス)
    新たなブランチは、シドニー・ベルリン・ムンバイ・サンパウロです。

2014年は動画についても積極的な投資を行いました。

  • 1500の新たな動画
    1日5本のペースで新たな動画が公開されているとは、なかなか驚きです
  • 合計再生数45億回
    この数字は先ほどの月間再生回数と比べると面白いです。2014年を通じて、45億回だった再生回数は、わずか3ヶ月で月間10億回に達しています。そのペースならば、月間100億回にも届くでしょう。
  • 10の新たなセット
    ハリウッドに新たな10箇所のスタジオを用意したそう。本格的な撮影に余念がありません。

もちろん彼らの収益源であるネイティブ・アドも順調です。

  • 435のクライアントと841のプログラム
    相変わらず順調な販売が目立つネイティブ・アドですが、かなりの数のクライアントを抱えているようです。
  • 2億7000万PV
    クライアントのためにつくったコンテンツも、通常コンテンツの様にバズらせるのが、彼らの特徴
  • クライアントのためにつくった動画は65個
    こちらはまだまだ数字が伸びそう

いずれも素晴らしい数字です。

とはいえ、もはや単なるトラフィック面での成果以上に、最近のBuzzFeedがアピールしているのは、ニュースの充実と動画の強化です。彼らのプレスリリース一覧を見ると、そのメッセージが明らかです。

http://www.buzzfeed.com/press/releases

例えば、最近では前Guardian US編集長だったジャニー・ギブソン(Janine Gibson)をBuzzFeed UKの編集長に。バラク・オバマ大統領へのインタビューと合わせて、BuzzFeed Motion Pictureによる動画も制作されました。

WIREDからはマット・ホーナン(Mat Honan)を引き抜いていますし、もちろん大きなインパクトを持っていた人材獲得といえば、2012年にPoliticoからやってきた編集長ベン・スミス(Ben Smith)です。

クリエイティブ面でも人材の獲得が進んでいます。ペプシコの前CMOだったフランク・クーパー(Frank Cooper)は、新たなChief Marketing Officer 兼 Chief Creative Officer に。

このようにBuzzFeedはもはや、数字としては成熟しつつあり、ニュースや動画の強化、そしてそれを推し進める人材の獲得によって、新たなフェーズに入っていくと言えるのでしょう。

ということで、BuzzFeedの概観をお伝えしましたが、 なぜ彼らがスゴいのか?という点をお伝えする前に、かなり長文になってしまいました。続きはまた別の記事で書こうと思いますので、そちらもチェックしてください。

追記:後編をアップしました(https://theheadline.jp/39)

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著者
株式会社マイナースタジオ代表取締役CEO。同社を創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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