Editor’s noteを開始します:テクストと作者、あるいは立体的なメディアについて

公開日 2015/10/13 14:36,

更新日 2015/10/13 14:36

無料記事 / オピニオン / 編集長より

MEDIA HACKにおいて新たに「Editor’s note」というコーナーを開始することにします。メディアに関する備忘録的な話題から、全く関係のないように見えるトピックまで、幅広く書いていくブログのような位置付けです。

「メディア」を扱うこのメディアにおいて、なぜ一見すると関係のないような事柄まで扱っていくのでしょうか?

メディアの定義

それは僕が、メディアとは「誰がどんな思想において、その情報を切り取っているのか?」というファクターと密接な関わりをもっていると考えるからです。

ネットにおけるメディアの定義は、非常に幅広いものです。

例えば人材紹介サイトも求人メディアですし、不動産仲介サイトもメディア、新聞社のニュースサイトも、アグリゲーションサイトもメディアなわけです。

その中でも求人や不動産は、基本的には募集する人の条件や不動産のスペックなどが掲載されたInformationの集合体です。

一方で、新聞社のサイトであっても、単にストレート・ニュースを掲載するようなページから、記者の方が想いを持って情報を足で集めた記事もあります。

このページで、「メディア」と呼んでいるのは後者の方になります。

Informationと思想の介入

その上で、ストレート・ニュースが単にInformationそのものかというと、事実としてはそうなのですが、メディアとしてパッケージ化されることで、ある種の取捨選択が働くわけです。

LGBTに関心のある編集者ならば、その話題がフロントページに掲載されやすくなるかもしれませんし、エンタメニュースが人気のサイトならば、そうしたニュースの割合が増えるかもしれません。

そのため、これは単なるInformationの集合体といっても、掲載位置やニュースの切り取り方というポイントにおいて、記者や編集者の思想が介入しており、タブラ・ラーサ(tabula rasa:白紙状態)の空間ではないのです。

立体的なメディア

すなわち、この「Editor’s note」というのは、読者の方が、このメディアをより立体的に把握していただくための、補助線であると言えます。

なぜ石田は、このニュースを取捨選択し、それが大事だと考えているのか?というポイントは、なるべく記事本文中に盛り込みたいと考えています。しかし、その背景にある大きな思想やものの見方を「Editor’s note」に時折記すことで、大枠の概念をより深く共有できるのではないかと考えているのです。

ちなみに「Informationの集合体がダメで、立体的なメディアが良い」という話ではありません。単に僕は、後者の方が好きというだけです。

昨日もFacebookで、バイラルメディアの感動話のシェアが(いまだに!)流れてきましたが、ああいうものよりは、ほんの少しだけでも、思考の痕跡が残っている物語を読みたいわけです、僕は。

テクストと作者について

とはいえ、テクストと作者の関係は、想像するよりも困難なものです。

例えば、フランスの哲学者ミシェル・フーコーが同性愛者であったことと、彼の研究成果そのものは、論理的には無関係であるはず(そして、そのように捉えられるべき)ですが、しばしばその関係は過剰に結びつけられようとします。

あるいは、江戸時代に生まれた「国体」という思想を内在的に解読しないまま、その後の日本が辿ってきた歴史の歩みと無批判に結びつけることで、思想そのものを「戦前」とともに埋葬することは、戦後歴史学の大きな課題として残存しました。

すなわち、ある思想やテクストは、かならず作者や時代性、社会性から逃れられないものであり、その逆も然りである、という暗黙の前提は、時にテクストを牢獄に閉じ込めてしまうのです。

ひとたび「作者」が遠ざけられると、テクストを<解読する>という意図は、まったく無用になる。あるテクストにある「作者」をあてがうことは、そのテクストに歯止めをかけることであり、ある記号内容を与えることであり、エクリチュールを閉ざすことである。(ロラン・バルト「作者の死」、『物語の構造分析』みすず書房、1979年)

では我々は、ポストモダン主義者が、あたかもその様に振る舞ったと思われているように、テクストと作者のアイデンティティーを完全に分断させるべきなのでしょうか?

おそらくそのこともまた危険な行為であり、ポストモダンを代表する(と目される)ジャック・デリダの意図ですらないことも明白です。

だからこそ、僕が目指しているのは、それら−すなわちテクストと作者が交差する位相−を浮かび上がらせるメディアにあるわけです。

テクストのみがInformationとして提示されているメディアは退屈ですが、一方で、そのInformationの読解が、過剰に要請されているメディアもまた、権力性から自由ではないことは明らかです。

「Editor’s note」によって、MEDIA HACKがより読解可能性に開かれたものとなると同時に、事象への理解を規定する位相が、よりクリアなものとなることを願っています。

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著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に東証一部上場企業に売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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