今年、日本の文部科学省が、国立大学に対して求めた、「文系の学部(研究科)の廃止・配置転換」。
この文部科学省の動きは、政府の決定した政策そのものへの是非という議論だけにとどまらず、「人文系の学問は役に立つのか?」という是非を問う議論に発展した側面もありました。
参考記事
http://president.jp/articles/-/15406?page=2
http://newclassic.jp/23916
http://www.asahi.com/articles/ASH8M3G3FH8MUCVL005.html
こうした、人文学削減の動きは世界的な潮流となっていますが、新たにアメリカのシンクタンク「バーグルエン研究所」は、新たに「哲学ノーベル賞」を創設することを明らかにしました。
バーグルエン研究所とは
バーグルエン研究所は、投資家で博愛主義者としても活動しているニコラス・バーグルエン氏によって、2010年にカリフォルニア州に設立された民間のシンクタンクです。
21世紀に統治機構(主に国家や地方の政府など)が直面する課題についての研究を進めてきましたが、新たに、「哲学と文化」を研究する機関が研究所に開設されました。
統治機構の課題、そして哲学と文化を研究するシンクタンクを設立した理由について、バーグルエン氏はフォーブズの取材で以下のように答えています。
「政治というのは、とても重要なものです。朝鮮半島や、旧東西ドイツをみれば分かるように、同じ民族であっても、異なる政治体制の下で暮らしていると、その生活は大きく変わります。
政治こそ、人々の生活に最も大きな変化をもたらすことができるのです。だから政府のような統治機構を研究会しているのです。
また、文化というのは、社会を形作る重要な要素となっています。そしてその文化は宗教や哲学の要素から成り立っています。そのような事を考慮し、文化と哲学の研究も始めたのです。
私たちのように、世界中から優秀な人材を集め、問いを立て、提案や改革を実行していく。そのような研究機関はまだあまりないでしょう。
私たちは研究を通じてアイディアを出し、世界にとってプラスになる変革をもたらしたいと思っています。」
「哲学ノーベル賞」について
今回、バーグルエン研究所が創設した、「哲学ノーベル賞」について、バーグルエン氏はこのように語っています。
「文学や経済学、化学に対してはノーベル賞がありますが、哲学者に対してノーベル賞はありません。しかし、あらゆる意味において、哲学者ほど私たちに影響を与えている人はいないでしょう。
私たちの世界は、未だにソクラテス、孔子、イエス・キリスト、カール・マルクスらから大きな影響を受けています。私たちは、思想・哲学には力があるということを認める賞を創りたかったのです。それが今回、賞金100万ドルの”バーグルエン哲学賞”を創設した理由です。」
研究所を運営する上での課題
バーグルエン氏は、研究所を運営する上での課題についても、以下のように語ります。
「最も大きな課題は、斬新で価値があり、真のインパクトをたらすアイディアを生み出すことです。これは、現在の社会では特に困難なことだと思います。
西洋社会では、短期的な視点のみで動いている大衆迎合、短期的なサイクルで動いているメディアが横行しているかと思えば、東洋社会はどんどん保守化していますので」
バーグルエン研究所の意義とは
上記のように課題を示しつつも、バーグルエン研究所での研究は社会にとっても重要なモノであるとバーグルエン氏は指摘しています。
「世界はどんどん多極化が進んでいます。そのような世界では、あらゆる文化への理解を深め、新たな発想や思想を発展させていくことが急務となっています。
異なる集団との違いというのは、これからもこの世に存在し続けるでしょう。しかし、その違いが好きであろうがなかろうが、私たちはそれを理解するよう努めなければなりません。
新たな思想、そこから生み出された解決策を実行に移せば、社会に変化をもたらすことができるでしょう。
そして、私たちは、他ではあまりやられていない政治改革の研究にも取り組んでいます。私たちの研究は無党派的で、各国の文化に対しても敬意と尊重の念を持ちながら、経験豊富な人々が研究に携わっています。」
バーグルエン研究所は今後5年間で、社会にとって意義のある発想や思想を見出していきたいとしています。
また、アメリカとヨーロッパで政治改革の研究や、中国と欧米諸国の架け橋になるような事業も展開していきたい、とも語っています。
参考記事
http://www.forbes.com/sites/miguelforbes/2015/11/23/berggruen-institute-launches-1m-nobel-prize-for-philosophy/
http://berggruen.org/about