反トラスト法とは何か?Googleは分割されるのか?

テクノロジー

公開日 2020/10/22 13:58,

更新日 2020/10/22 18:00

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米・司法省は20日、Google社がインターネットにおける検索や広告において、独占的な地位を利用して適切な競争を妨げているとして、反トラスト法違反の疑いで提訴した。

Googleは、なぜ提訴されたのだろうか?そして、同社を始めとするテック大手が分割されることは、現実的にあり得るのだろうか?現在分かっていることを簡単に整理する。

なぜ今か?

まず今回の出来事は、寝耳に水の出来事ではない。2019年7月から司法省は、Googleをはじめとした大手テクノロジー企業について調査を行なっていた。

1年以上に渡って調査が進む中、今年の9月頃から、提訴が現実的なものだと市場関係者の間では囁かれはじめた。最終的に10月20日に提訴されたのは、11月の大統領選挙前に成果を示したい共和党の意向を汲んだと言われているが、当局は「選挙前に提訴を急いだことはない」と主張している。

ただし、提訴が「政治的なジェスチャー」だという指摘もあり、司法省とともに提訴に踏み切った11州の規制当局は、いずれも共和党の司法長官となっている。

Google、なぜ提訴された?

司法省による提訴の理由は、次の一文が象徴的だ。

― 今日のGoogleは、インターネットにおける独占的なゲートキーパーであり、世界で最も裕福な企業だ。

日本における「独占禁止法」の名称から、その規模に対して規制がかけられるイメージがあるかもしれないが、そうではない。司法省は、Googleが巨大であるからではなく、ゲートキーパーとして適切な競争を阻害していることを問題視している。

司法省は、主に

  • Appleをはじめスマートフォンのメーカーなどに年間最大120億ドルを支払い、Googleが自社の検索エンジンをデフォルト設定させていること
  • これにより同社の検索エンジンは、市場シェアの8-90%を誇り、実質的に競合他社が存在しない状況を生み出していること
  • 結果として、消費者はGoogleの検索結果のみを受け入れざるを得なく、競争がないことでイノベーションが阻害されていること
  • Googleの独占的な地位により、プライバシーとデータ保護の品質は下がり、広告の入札費用も価格競争が起きずに高止まりしていること

などを指摘している。

すなわち、Googleが不当な競争によって独占的な地位を得て、消費者と広告主にとって有害な結果がもたらされているかが、今回の争点だ。

提訴されなかった問題はなにか

反対に、今月はじめに米議会下院・司法委員会で報告された論点などは、今回提訴された内容からは漏れている。

たとえば、Yelpのレストラン・レビューやExpediaのフライト検索結果よりも、Googleが自社サービスを優先して検索結果に表示した問題や、潜在的な競争相手を買収することで将来的な競争を事前に排除する手法、あるいは広告領域における独占的な地位の問題などは、今回の提訴では対象となっていない。

反トラスト法とは何か

今回、Googleが提訴された反トラスト法とは単一の法律ではない。1890年のシャーマン法、1914年のクレイトン法、同年の連邦取引委員会法の3つの法律を中核として、複数の法律によって、カルテルや価格操作、談合、不当な価格設定などを規制している。

また独占そのものが違法なのではなく、不当な競争によって獲得された独占的な支配である場合にのみ、それが問題視される。検索などのGoogle製品の多くは無料で提供されていることから、司法省は、Googleが消費者にサービスを提供する上での商慣習が不当なものであり、それが消費者にとって不利益を生んでいることを示す必要がある。

例えばMicrosoftの事例では、同社のOSとインターネット・ブラウザを抱き合わせで販売したことが、「不当な競争」と見なされた。Microsoftは当時、PCにおける圧倒的な支配を背景として、OSとブラウザをセットで販売する契約をPCメーカーと締結した。これにより、Operaなど他社のブラウザが品質や価格で競争しても、到底太刀打ちできない不当な競争環境が生まれたと結論づけられた。

Apple製のiPhoneに、デフォルト検索エンジンとしてGoogleが設定されていることや、AndroidにおいてGoogle製のアプリが全面に押し出されていることが、「不当な競争」に該当するかは現時点ではわからない。ただし、下院・司法委員会の報告書によれば、Googleをはじめとするテック大手が現行法に違反している可能性は「著しく薄い」とも指摘されている

Googleの反応は?

Googleは、司法省の判断に真っ向から反対している。同社はすぐさま、「訴訟には重大な欠陥がある」と述べて、自らの正当性を強調した。

同社のブログによれば、消費者は簡単にデフォルト以外の検索エンジンを選択でき、「不当な競争」をもたらす商慣習は存在しないという。また、Googleが市場を席巻しているのは、反競争的行為ではなく、自社製品の高い品質が原因であると主張する。

Googleは、店頭で目立つ棚を手に入れるためシリアル企業が費用を払っている事実を引き合いに出して、Appleなどとの契約が正当な商慣習だと強調している。

今後、何がおこるか

Googleの選択肢は、自らの主張を押し通して戦うか、和解するかの2つだ。

ただしいずれの場合でも、事業の見直しや事業分割の可能性は排除できない。「テック大手を分割せよ」と主張する急先鋒は、民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員だが、こうした考え方は決して荒唐無稽ではない。

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著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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