自民党総裁選のポイント・候補者の政策は?

公開日 2021年09月11日 19:56,

更新日 2021年09月11日 19:56,

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(*)本記事は、各候補が出馬の正式表明・政策発表をおこなう度にアップデートしていく。

自民党総裁選が、今月17日に告示されて29日に投開票を迎える。自民党は国会で過半数の議席を持つため、次の自民党総裁はそのまま第100代総理大臣(首相)となる。総裁選の後におこなわれる衆院選の結果次第で状況も変わるものの、次期首相の任期は2024年9月末までとなっており、コロナ対策や落ち込んだ景気の回復などを担うこととなる。

次期首相になるのは誰と予想されており、各候補者はどのような政策を掲げているのだろうか?

出馬を表明・噂される候補者

現時点で出馬を正式表明したのは、表明順に以下の3名だ。

岸田文雄

岸田氏は、1957年生まれの64歳。2014年に発足した第2次安倍改造内閣で外務大臣に就任した他、党三役の自民党政調会長にも就任している。2020年の総裁選では菅首相に敗れている。先月26日、記者会見で出馬の正式表明をおこなった。

高市早苗

高市氏は、1961年生まれの60歳。2014年に発足した第2次安倍改造内閣で、女性初となる総務大臣に就任しており、2019年の第4次安倍再改造内閣でも総務大臣に就任している。今月8日、記者会見で出馬の正式表明をおこなった。

河野太郎氏

河野氏は、1963年生まれの58歳で、行政改革担当相やワクチン接種推進担当相などを務める現職の閣僚だ。これまで防衛大臣や外務大臣などを歴任しており、今月10日に出馬の正式表明をおこなった。

派閥・支援者

その上で、今回の選挙を見ていく上での基本的なポイントを抑えておこう。

今回の総裁選は、自民党の国会議員(衆参両院議長を除く)による383票、全国約113万人の党員・党友による票を比率として反映させた383票、両者を合わせた「フルスペック」と呼ばれる選挙がおこなわれる。前回の総裁選は、安倍前首相が任期中に退任したため、党所属国会議員と47都道府県連代表による投票のみがおこなわれており、フルスペックの選挙は3年ぶりの実施となる。

派閥とは?

フルスペックの選挙の場合、国会議員だけでなく地方議員からの支持も重要となり、選挙結果が読みづらくなるが、それでも重要なのが派閥の存在だ。派閥とは、政策や利害に基づいて行動をともにするグループで、細田派・麻生派・竹下派・二階派・岸田派・石破派・石原派に分かれる。

公式なグループでもない、政策などに関する任意の勉強会ではあるが、「派閥政治」と呼ばれるほどに強い影響力を持っており、派閥ごと方針やその中心的な議員に従って若手議員などが動くため、国会議員票の行方を見ていく上では重要なポイントとなる。

今回の選挙では「支援する候補を一本化できたのは会長の岸田文雄氏を推す岸田派くらい」で、派閥の結束の弱さが指摘されているものの、それでも各派閥や有力な支援者が誰を支持するかは大きなポイントだ。

細田派 = 高市氏?

森喜朗や小泉純一郎などの首相を輩出してきた細田派(96人のメンバー、以下同)は、安倍前首相が強い影響力を持っているとされる最大派閥だ。アベノミクスや歴史認識などで近い立場にある高市氏を安倍前首相が支援したことで、派閥の動きに注目が集まっている。ただし、高市氏は同派閥を退会した経緯もあり、派閥内には支援への慎重論もある。

麻生派 = 河野氏?高市氏?

麻生太郎元首相が代表を務める麻生派(53人)は、河野太郎氏が派閥の一員となっている。ただし麻生元首相は「河野氏に本格的な長期政権をやらせるのはまだ早い」と考えており、盟友である安倍前首相と歩調を合わせて高市氏を支援する可能性も指摘されている。一方で岸田氏を推す声もあり、派閥の動きはまとまっていない。

竹下派・石原派 = ??

竹下派(52人)は、現時点で支持候補を固めていないが、派閥として足並みを揃えていくことを確認している。派閥のメンバーである茂木外相は、安倍前首相や麻生元首相とも良好な関係を築いている。また石原元幹事長が率いる石原派(10人)は、候補者の政策が出揃った時点で、こちらも派閥として足並みを揃えると述べている。

二階派・石破派 = 河野氏?

2020年、菅政権が誕生した自民党総裁選での功労者となった二階幹事長が代表を務める二階派(47人)は、河野氏を支持する声高まっている。ただし混戦模様の総裁選で、前回のように「勝ち馬に乗る」のが困難という見方も出ており、派閥としての方向性は定まっていない。

また石破派(17人)についても、当初は石破元幹事長が出馬を検討していると報じられたが、現時点では出馬見送りの上、派閥内には河野氏を推す声もあるという。

この他、岸田派は当然ながら岸田氏を推しているが、以上のようにほとんどの派閥が内部で支持者について足並みを揃えていない状態だ。最大派閥の細田派をはじめ麻生派と竹下派の動きに注目が集まるが、派閥の動きに縛られない若手議員や、菅首相のように派閥に所属していない議員の動向にも注目が集まる。

党員・党友票は?

フルスペックの選挙では、票の半数を占める党員・党友票も重要だが、こちらについては現時点で数字を読むことが難しい。共同通信の世論調査では次期首相にふさわしい人物として河野氏、石破氏、岸田氏の名前が挙がっており、読売新聞の世論調査でも同じ結果となっている。しかし、これらは全国の有権者に対する調査であるため、党員・党友票は「世論を反映しやすい」とは言われるものの、この結果がそのまま反映されるわけではない。

このように、派閥に代表される国会議員票も党員・党友票も、現時点ではその趨勢を判断することは難しいというのが状態だ。

各候補の政策

しかしながら、最も重要なのは次期首相となる各候補者がどのような政策を掲げているかだ。各政策に絞って、各候補の主張を概観していこう。

経済(金融・財政)政策

岸田氏は、8日に経済政策を発表しており、

  • 再分配による格差是正を軸とする「令和版所得倍増」計画
  • 大胆な金融政策・機動的な財政政策・成長戦略というアベノミクス路線の継承

などが軸となっている。株式譲渡益や配当など金融所得への課税率が1億円を超えると下がっていく、いわゆる「1億の壁」についても「考え直す必要がある」と述べるなど、「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」として中間層の拡大を掲げる。

金融緩和や財政出動などで経済成長を目指すアベノミクス路線は堅持しつつも、政府による中間層への分配強化が必要という見解から、これまでの自民党路線との差別化を図っている。

また高市氏も、自身の経済政策をサナエノミクス名付けた上で、

  • 金融緩和・機動的な財政出動・成長投資というアベノミクス路線の継承
  • 物価安定目標2%の達成までは、税収などによる財政の黒字化、いわゆる基礎的財政収支(プライマリー・バランス)は重視せずに、財政出動を優先

する考えを述べている。岸田氏による金融所得の課税強化についても著書で触れているが、当面はおこなわない考えを示している。

岸田・高市両氏とは異なり、河野氏はアベノミクスとは距離をおいている。2%の物価上昇については、コロナ禍で経済が低迷する足元の状況では「達成が難しい」と指摘しており、金融政策についても日銀に「ある程度任せる」という立場を取っている。また両氏が認める財政出動についても河野氏は、「有事の財政(支出)は避けられない」としつつも「規模も大事だが、未来を見据えどこに出すべきか議論が必要」だと述べる。

また消費税増税については、岸田氏高市氏河野氏ともに当面での引き上げは検討していないと述べた。

岸田・高市両氏であれば安倍・菅両首相が続けてきた大胆な金融緩和・機動的な財政出動が継続されるが、河野氏であれば従来の金融・財政政策を重視した経済政策からの転換が進んでいく可能性がある。

コロナ対策

コロナ対策については、岸田氏は

  • 「健康危機管理庁」(仮称)による感染症対策の一元化
  • 数十兆円規模の経済対策をおこない、家賃支援給付金や持続化給付金の再支給
  • 野戦病院のような臨時医療施設の設置による「医療難民ゼロ」

などを掲げた

一方で高市氏は、ロックダウンを可能にする法整備の必要性について言及した。また7日に出演した番組では、

  • 自宅療養者ゼロ
  • 国内における治療薬生産体制の整備

などを政策として挙げた他、後者について具体的には、抗体カクテル、レムデシビル、バリシチニブなどの治療薬を国内で十分に確保する必要性を訴えている。

河野氏は、これまでワクチン担当相として接種を推し進めてきた実績から

  • ワクチン接種の迅速な進行、3回目接種の準備
  • ワクチン2回接種後の経済・社会の平常化プログラム
  • 思い切った人流抑制による感染拡大の抑制

などを訴えている。高市氏と同じく、ロックダウンの実施に向けた法整備が必要だという立場を示している。ロックダウンにむけた法整備や自宅療養者の解消に向けた具体的政策、持続化給付金の再給付などが論点となっていくだろう。

成長戦略

成長戦略としては、岸田氏が

  • 10兆円ファンドによる「クリーンエネルギー戦略」の策定などの科学技術立国
  • 経済安全保障の推進
  • デジタルの地方実装

などを掲げている。また高市氏も

  • 核融合炉や、量子コンピューターの開発
  • 自然災害に備えた公共事業など危機管理投資、経済安全保障の実現

を上げており、両氏ともに科学技術への投資および経済安全保障を軸とした戦略を掲げていることが分かる。一方で河野氏は「デジタルおよびグリーンをイノベーションの核」として推進すると述べている。

外交・安全保障

岸田氏は、安倍政権において5期・4年半あまりに渡って外務相を努めた。8日の記者会見でも「日米同盟の強化をはじめとする外交政策は大きな方向性として間違ってなかった」と述べており、「自由で開かれたインド太平洋」をはじめとする、大枠の外交・安全保障政策としては継承していくことが予想される。ただし国家安全保障戦略の改定やインテリジェンス機能の充実などは明言している。

靖国参拝の継続を明言し、強硬な立場(タカ派)として知られる高市氏は、防衛費の増額については意欲を示しており、欧米並みの国内総生産(GDP)のうち2%となる、10兆円規模を視野に入れていると語った。また安全保障について、電磁波や衛星などを使って敵基地攻撃を可能とする法改正に取り組む考えや、サイバーセキュリティなどの強化に向けた経済安全保障包括法の成立にも取り組むと述べている。

河野氏は、新たな脅威に対応する国家安全保障戦略の見直しと防衛力の整備・強化を宣言しており、台湾や日本南部の島しょ部周辺への中国の進出に対して対応するとみられる。河野氏は、防衛相時代の2020年9月にも「中国は安全保障上の脅威」と踏み込んだ発言をしている。

エネルギー政策

今年1月、菅首相がカーボンニュートラルを宣言するなど、各国は2050年までの脱炭素社会に向けて動きを進めている。特に日本は、福島第一原発事故により脱原発の声もある中、エネルギー政策は今後の政治的課題になっていく。

岸田氏は「大きな柱は再生可能エネルギー」としながらも、原発についても「まずは再稼働を進めるべきだ。そこから先は国民と対話していく」と述べている。

高市氏は「天候で変わる太陽光の発電量を補う電源として火力を挙げ、再生エネのさらなる導入と原子力の平和利用」を主張するなど、火力や原発についても前向きな姿勢を見せている。

そして再エネ導入に強い意欲を持っている河野氏は、「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策を進める」して現実路線へと転換にした。総裁選での争点化を避け、党内での支持拡大を目指す考えだ。

人権・憲法改正

選択的夫婦別姓や同性婚、LGBTQなど性的マイノリティーに関連する政策について、自民党としては後ろ向きな姿勢だが、各候補者によって立場の違いが明らかになっている。

まず選択的夫婦別姓について、「選択的夫婦別姓(別氏)制度の早期実現を目指す議連」に参加している岸田氏は、今回の総裁選にあわせた取材に対して「引き続き議論をしなければならない」と述べるにとどめた。高市氏は、「クタバレ『夫婦別姓』」と題された雑誌の企画に参加するほどの強固な反対論者だ。また河野氏は2020年12月に、選択的夫婦別姓は「あってもいい」と肯定的な立場を示している。

同性婚・パートナーシップ制度については、岸田氏は2020年の自民党総裁選で「性的少数者の方が生活していく上で、不利益や不自由を感じない制度が必要」と前向きな姿勢を示しており、河野氏も同性婚の実現について賛成する姿勢を見せている。一方で高市氏は、2017年の調査で同性婚について「どちらかといえば反対」という立場を示している。

そして憲法改正については、岸田氏高市氏が必要と明言した他、河野氏も必要と認めつつもタイミングなどは今後検討していくと述べた

森友問題など

その他、今回の総裁選にあわせて指摘されているのが学校法人・森友学園の国有地売却問題についてだ。

岸田氏は過去に「国民が納得するまで説明する」という発言をしていたが、その後は「再調査するとは言っていない」とトーンダウンした。元発言によって安倍前首相が高市氏への支援を決めたという報道もあり、前首相への忖度ではないかとの声もあがっている。また高市氏は、裁判中の案件については答えは控えるとしつつも再調査の有無は明言せず、河野氏は「必要ない」との立場を明確にした。

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著者
編集長
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。Abema TV『ABEMAヒルズ』、日テレ系『スッキリ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説をおこなう。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジア、テクノロジー時代の倫理と政治など。
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