NFTとは何であり、なぜ今注目を集めているのか?

公開日 2022年01月11日 15:53,

更新日 2022年01月11日 16:29,

有料記事 / テクノロジー

2021年を通じて、NFT に関するニュースが日本中で話題となり、英辞典『Collins』による2021年の「Word of the Year(今年の単語)」にも NFT が選ばれた。2021年に販売された NFT は、第3四半期で107億ドルとなっており、第1四半期の12億ドルおよび第2四半期の13億ドルから急増している。

狂騒の中心にいる NFT には「デジタル消費主義について何か深い示唆を与える文化的プロダクトなのか、馬鹿げた金額を稼ぐための皮肉な何かなのか」という相反する目線が向けられている。一体、NFT とは何なのだろうか?

NFTとは何か

NFT とは「非代替性トークン(Non-Fungible token)」のことを指し、ブロックチェーン技術を用いて発行されたトークンのことだ。そのトークンに紐付けられたデジタルアートやデジタルコンテンツなどを含めて NFT と呼ぶこともあるが、両者は正確に言えば別物だ。

まず「非代替性」および「トークン」について、それぞれ見ていこう。

非代替性(Non-Fungibility)と代替可能性(Fungibility)

非代替性(Non-Fungibility)とは、代替可能性(Fungibility)の対義語だ。

「非代替性を持つ資産」とは、経済的な文脈においてそれぞれが唯一無二の価値を持つ資産や貨幣を指しており、たとえばピカソによる絵画作品が挙げられる。どれほど精巧な模写やレプリカであっても、ピカソ本人によって描かれた作品を代替することは出来ない。またピカソによる絵画作品であっても、時代背景や来歴(所有者の履歴)、作品サイズや保存状態によって作品ごとに経済的価値は異なる。このように絵画をはじめとするアート作品は、非代替性を持つ資産の代表例だ。

また、不動産も非代替性を持つ資産の1つだ。不動産の経済的価値は建物の形状だけでなく、周囲の騒音や治安、経年劣化、設計者の評価など様々な要素によって評価される。そのため1つとして同じ資産は存在せず、非代替性を持っている。

一方、1万円札などの貨幣は代替可能性を持つ資産だ。誰が持っている1万円札であっても、経済的価値が同等であることが前提とされ、そのため簡単に交換・取引することが可能となっており、貨幣の重要な要件となっている。また株式や貴金属についても同様に、同じ単位の資産であれば代替可能性を前提として、交換することができる。

非代替性を持つ資産、代替可能性を持つ資産
非代替性を持つ資産 代替可能性を持つ資産
絵画・彫刻
ピカソ《泣く女》など
法定通貨・貨幣
1ドル札、1万円など
不動産 仮想通貨
Bitcoin など
NFT 原油
  貴金属
金・パラジウムなど

このように資産には、非代替性を持つものと代替可能性を持つものがある。

ただし、ある特定の資産であっても、非代替性を持つ場合と代替可能性を持つ場合がある。たとえば、Aさんが所有する自動車をBさんに貸したとする。その場合、Bさんは別の自動車を手に入れて、返却することは出来ない。もちろんそのような契約も理論上は可能だが、一般的にはAさんから借りた自動車を返却する必要がある。この場合、Aさんの自動車は非代替性を持っているが、大量生産されている自動車そのものは代替可能であるため、対照的な性質を有している。

同じ様に、石油は一般的に代替可能性を持つ資産と見做されるが、輸送の制限や安全保障上の制限、OPEC(石油輸出国機構)の政治性などから非代替性を持つ資産だという指摘もある。

このように資産の代替可能性は、決して自明のものではない。たとえば1万円札も、実際にはアルファベットと数字から成る「記番号」が記載されているため、それぞれの紙幣は区別可能だ。その上で、古い紙幣や特殊な「記番号」が付く紙幣は高値で売買されることもあり、その場合は非代替性を持っているとも言える。(*1)

また、流動性のある資産はすべて代替可能性を持つが、代替可能性を持つ資産の全てが流動性を持つとは限らないこともポイントだ。代替可能性のある資産は、同じ価値を持つアイテムと交換することができるが、それが市場で簡単に売買できるとは限らない。

(*1)この議論について、資産の代替可能性と非代替性を決定するのは「使用価値」であり「技術的特徴」ではないという指摘がある。

トークン

トークンとは、ブロックチェーンを用いて発行された暗号資産(*2)であり、中でも特定の発行者・管理者が存在するもの指す(ただしトークンの定義は曖昧であり、管理者・発行者が存在しない Bitcoin などを含めるケースもあるが、ここでは狭義の意味で扱う)

ブロックチェーン技術を用いて取引される暗号資産には Bitcoin(ビットコイン)があるが、Bitcoin が特定の発行者を持たないことに対して、トークンは個人や法人などの発行者がいる。トークンは、あるサービスや組織において報酬のように用いられる場合もあれば、運営に参加するための株式のように用いられる場合もある。またトークンを交換することで、利益を得ることもある。

つまりトークンとは、特定の価値を持っている資産としての性質を有したデジタルデータだと言える。

その上で、このトークンに非代替性を持たせたものが NFT だ。わざわざ「非代替性」と付けるのは「代替可能性トークン(Fungible token)」が存在するためだ。

たとえば、スマート・コントラクトを構築するためのプラットフォームであるイーサリアム内で用いられる仮想通貨である「Ether(イーサ)」は一種のトークンだ。また異なるブロックチェーンの相互運用を目指すプロジェクトであるPolkadot(ポルカドット)の「DOT」や、大手取引所 Binance が発行する「Binance Coin」もトークンだが、これらはいずれも「代替性を持つトークン」だ。

「代替性トークン」は取引所で交換することができ、たとえば誰が持っている1ETH(Ether の単位、現在は1ETH が約37万円)であっても価値が同等とみなされ、交換することが可能だ。代替性を持つからこそ法定通貨のように扱うことができ、「仮想通貨」と呼ばれることがある。

これに対して「非代替性トークン」は、絵画や不動産のように1つ1つのトークンが唯一無二の価値を持っている。仮想通貨のように同じ価値同士のトークンを交換できる「代替可能性トークン」と区別して、ピカソの絵画作品のように、1つとして価値のものが存在しないからこそ、直接的に交換できないトークンを「非代替性トークン」と呼ぶのだ。

ただし、ここまでの概念的な説明を聞いてもピンとこない人が大半だろう。NFT といえば、デジタル画像に何千万円もの価値が付いて取引されるイメージを持っているため、トークンの説明を聞いても要領を得ないかもしれない。ポイントとなるのは、次に見る「トークンと資産の紐付け」だ。

(*2)暗号資産という語は、仮想通貨と同義に用いられることも多いが、両者は区別する必要がある。なぜなら「仮想通貨」という用語は、ドルや日本円などの法定通貨のように通貨として送金・売買がおこなえるトークンを指しているが、「暗号資産」はより広い機能を含意しているからだ。たとえば代表的な暗号資産である Bitcoin(ビットコイン)は決済手段としても利用されており、モノやサービスを購入することが出来る。一方、それ以外の多くの暗号資産は Bitcoin と交換することが出来、それぞれ固有の価値を持っていたとしても、法定通貨のように扱うことは出来ない。 またガバナンストークンと呼ばれるトークンは、ある組織やサービスの運営に関する投票権が付与されている。何らかの貢献にトークンが付与されたり、購入・交換などで取得することが出来るが、こちらもモノやサービスの決済は出来ない。 つまり、これらは「資産」ではあるものの「通貨」とは言えず、こうした広範な機能・目的を念頭に置いて暗号資産という呼ばれ方をする。この背景から、金融庁も2020年に施行された資金決済法の改正によって「仮想通貨」という名称を「暗号資産」に変更している。

トークンと資産の紐付け

ここまで NFT について「非代替性」と「トークン」という2つの観点から見てきた。そして最も重要な点としてトークンには、デジタルアートやデジタルコンテンツなどのデジタル資産、もしくは不動産などの実物資産を紐付けることが出来る

「デジタルで作成した絵画や音楽などを唯一無二の作品として証明」できるのが NFT だと説明されることが多いが、それは「トークンと資産の紐付け」という性質から来ている。

「トークンと資産の紐付け」とは、端的に言えば「紐付けられた資産の情報が、トークンに記載されている」ことだ。よく NFT を絵画の鑑定書や証明書になぞらえる説明があるが、それはこのトークンの性質を表している。

キャンバスに描かれた絵画作品であっても、画像やテキストのようなデジタルコンテンツであっても、その作品の所有者や真贋判定(本物かを確かめること)などの情報があることで、多くの人が価値を理解できる。絵画作品であれば、精巧なレプリカが存在しても、特定の1枚が「本物」だと証明されれば、その1枚とそれ以外を区別することができる。またデジタルコンテンツは誰でも簡単に複製できるため、特にその区別が重要となる。

「トークンと資産の紐付け」の仕組み

具体的な事例とともに、「トークンと資産の紐付け」の仕組みを見ていこう。

去年3月、約75億円で落札されたデジタルアーティスト Beeple による作品《Everydays - The First 5000 Days》は、以下のようなデジタル画像だ。


Beeple《Everydays - The First 5000 Days》

同作品の「本物」は、この URL から誰でもアクセスできる(ただし非常に重いのでアクセスには注意)。これを「デジタル画像A」と呼ぶ。ちなみにURL に誰でもアクセスできるということは、誰でも閲覧・複製が可能ということだ。

その上で、本記事でアップされている同作品の「複製」を「デジタル画像B」と呼ぶ。ピカソの絵画作品を写真で撮影したデータと異なり、Beeple の作品自体もデジタル画像(jpegファイル)であるため、この「デジタル画像B」は限りなく本物に近いと言える。

しかしながら、この「デジタル画像B」には価値がない。なぜなら同作品に紐付けられたトークンには「デジタル画像A」のURLが記載されており、「デジタル画像A」こそが「本物」だと証明されているからだ。

トークンの情報は、Etherscan というサイトで閲覧できるが、そこから「デジタル画像A」のURLに辿り着くことができる。

では「紐付けられた資産の情報が、トークンに記載されている」という点について、NFT の規格をもとに詳しく見ていこう。

NFT の規格

大半の NFT は、イーサリアムと呼ばれるプラットフォーム上に「ERC721」と呼ばれる規格で構築されている。ERC721 には、以下の要素などが含まれている。

  • トークンID
  • 所有者の情報
  • メタデータ

このうち「トークンID」によって、そのトークンが唯一無二であること(一意性、非代替性)が示され、「所有者の情報」によってそのトークンを誰が所有しているか(所有権)が示される。そして「メタデータ」を通じて「紐付けられた資産」を参照することで、その「一意性」と「所有権」が資産と紐づく仕組みとなっている。(下図参照)

もう1つポイントとなるのが、NFT はブロックチェーンを用いた仕組みであるものの、必ずしも全ての情報がブロックチェーン上に存在しているわけではないことだ。ブロックチェーン上に情報が記録されている状態を「オンチェーン」、ブロックチェーン外にある状態を「オフチェーン」と呼ぶが、「紐付けられた資産」はデータ量の関係からオフチェーンであることが多い。「トークンと資産の紐付け」が必ずしもブロックチェーンで完結せず、外部のデータを参照する仕組みとなっていることは、NFT にリスクをもたらしているが、この点は後述する。

ここまでの内容をまとめると、以下のようになる。

  • NFT(非代替性トークン)とは、ブロックチェーンを用いて発行された「トークン」というデジタルデータのうち、それぞれが唯一無二の価値を持つもの
  • その「トークン」とデジタルコンテンツなどの資産と紐付けることで、資産の「一意性」や「所有権」を証明できる

デジタルコンテンツの資産化

ここまで「トークンと資産の紐付け」によって、資産の「一意性」や「所有権」が証明できることを見てきた。この「一意性」と「所有権」は、なぜ今 NFT に注目が集まっているかを考える上で重要な特徴となるため、そのことを確認しておこう。

実は NFT には不動産などの実物資産を紐付けることも出来るが、現在主に注目を集めているのはデジタル資産の NFT化 だ。そして、デジタル資産が高額で売買されている背景には、これまで「デジタルコンテンツは希少性がないため、資産化できなかった」という背景がある。

そもそも資産とは、個人や法人などにとって現在あるいは将来的に経済的利益をもたらす資源のことを指す。たとえば土地や不動産、金銭などが該当するが、Bitcoin や株式・債権も資産の一種だ。希少性があるもの全てが資産になるわけではないが、少なくともデジタルコンテンツの場合は、簡単に複製できる(希少性がない)性質によって、資産化することはなかった。

しかし NFT の誕生によって、デジタルコンテンツの「一意性」が示され、その「所有権」を証明できることから、一気にその資産化が実現した。Beeple の《Everydays - The First 5000 Days》は、誰でも URL にアクセスすれば本物を閲覧できるにもかかわらず、存命アーティストの作品としては3番目に高価な値が付いている。

いくら理論的に「一意性」があったとしても、誰でも閲覧できるデジタル画像を「所有したい」と考えることは、一見すると不可解に思えるしれない。NBA(全米プロバスケ)の試合のハイライト動画 を NFT 化した NBA Top Shot というサービスが人気を集めているが、なぜ YouTube で誰でも見れる動画を「所有」するのだろうか?

しかしよく考えてみれば、誰もが複製を入手できたり本物を閲覧できる作品であっても、それを「所有したい」という動機は普遍的だ。ピカソの絵画作品のレプリカは無数に存在するし、個人所有の絵画作品を誰もが閲覧できることは珍しくない。たとえば、3億ドルもの価値が付けられているウィレム・デ・クーニングの作品《インターチェンジ》を所有しているのは投資家のケネス・グリフィンだが、同作はシカゴ美術館で一般公開されている。

いずれにしても、NFT の誕生によって多くの人々が「本物」のデジタルコンテンツを「所有」しようと熱狂している。ただし「唯一無二の作品として証明できる」や「デジタルコンテンツの所有権」という概念には誤解やミスリードも多い。

そこで、こうした NFT の特徴を整理した上で、それぞれの注意点なども見ていこう。

NFTの特徴

NFT は、

  • 一意性(uniqueness)
  • 所有権(ownership)

という2つの大きな特徴と、

  • 不可分性(Indivisibility)
  • 透明性(Transparency)
  • 相互運用性(Interoperability)
  • プログラマビリティ(Programmability)

という4つの補足的な特徴から説明されることが多い。

続きを読む

この続き: 10,583文字 / 画像6枚

この記事を読むためには、月額980円のメンバーシップに参加するか単体購入が必要です。10日間の無料トライアルで、いますぐ読むことができます。

いますぐ無料トライアル

メンバーシップに関するご質問、決済や支払い方法などについては、「よくある質問」をご覧ください。

著者
編集長
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。Abema TV『ABEMAヒルズ』、日テレ系『スッキリ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説をおこなう。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジア、テクノロジー時代の倫理と政治など。
最新情報を受け取る

ニュースレターやTwitterをチェックして、最新の記事やニュースを受け取ってください。

おすすめの記事