Worldcoin Orb(Worldcoin Twitter) , Illustration by The HEADLINE

世界で話題沸騰、Worldcoin(ワールドコイン)とは何か? = サム・アルトマンが主導する暗号資産の新プロジェクト

公開日 2023年08月01日 19:24,

更新日 2023年09月12日 22:57,

有料記事 / Web3・暗号資産 / 金融

この記事のまとめ
💡人間であれば暗号資産を配布されるプロジェクト、ワールドコインが開始

⏩ OpenAI のサム・アルトマンが主導する計画
⏩ 世界の貧困解決と AI による雇用喪失に備えたユニバーサル・ベーシック・インカムの構想
⏩ 目の虹彩スキャンをする技術、計画の理念には疑問の声も

2023年7月24日、Worldcoin Foundation(ワールドコイン財団)は、生体認証を使って AI と人間を区別し、人間だけに ID を発行する取り組みを正式に始めると発表した。 ユーザーはデータ提供の対価として、暗号資産を手にすることができる。

Worldcoin は、ChatGPT で知られる OpenAI の創業者サム・アルトマン(Sam Altman)氏が、理論物理学と機械学習の専門家アレックス・ブラニア(Alex Blania)氏と共に開発を進めるプロジェクトだ。同プロジェクトは「すべての人間は人間であるというだけで」暗号資産のシェアを受け取る資格があると宣言し、世界の貧困解決と AI によって雇用が喪失した未来に備えるとしている。

Worldcoin が提供する暗号資産は、生体認証、具体的には人々の眼球をスキャンすることと引き換えに配布される。オーブと呼ばれるバスケットボール大のデバイスをのぞき込むと、自らの眼球がスキャンされ、固有の ID が発行される仕組みだ。ユーザーはデータ提供の対価として、プロジェクトと同名のトークン Worldcoin(WLD)を獲得する(*1)

今回の発表後、世界のいくつかの都市でオーブが配置され、サインアップをしようというユーザーが列をなした。東京もその1つであり、アルトマン氏は東京で撮影された行列の動画をアップしつつ「世界中でクレイジーな行列。現在、8秒に1人が認証を受けています」とコメントした。

Worldcoin のプロジェクトに参加すれば、無料で誰でも暗号資産を獲得できるとあって、同プロジェクトはユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の実現にもつながる野心的な構想として、期待が寄せられている。

しかし一方で、 Worldcoin は開発当初から懐疑的な声にさらされ続けてきた。プライバシーの保護に関するものから、テスト段階における途上国での詐欺的な手法、プロジェクトの理念自体への疑義など枚挙にいとまがない。

また、多くのトークンを得ようとして抜け穴探しに必死なユーザーも後を絶たない。過去には眼球のスキャン画像が闇市場で売買される事件が発生したほか、チワワの眼球をスキャンしようとする者もいたという

ほとんどの暗号資産スタートアップが「干上がっている」、「注目に値する例外」とも言われる Worldcoin は、なぜ熱い視線を集めているのだろうか?

(*1)以下、特に注意がない限り、単に Worldcoin と言うときにはそのプロジェクトを指すこととする。トークンに言及する必要がある場合は、WLD と表記する。

Worldcoin とは何か?


Worldcoin(同社HPより)

Worldcoin とは、米・サンフランシスコとドイツ・ベルリンに拠点を構えるテック企業 Tools for Humanity が手がける暗号資産プロジェクトであり、そのサポートを担うのが非営利組織の Worldcoin Foundation(ワールドコイン財団)だ。

Worldcoin の構想は大きく3つのから形成されており、具体的にはユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)の配布、暗号資産の普及、数十億の眼球データの記録に分かれる(詳細は後述)。

Worldcoin は、2021年10月に2,500万ドル(約35億円)の資金調達を受け、2022年3月には著名VC の Andreessen Horowitz(a16z)や、LinkeIn の共同創業者であるリード・ホフマン氏などから1億ドル(約140億円)を調達したことが報じられた。さらに2023年5月、Blockchain Capital の主導するラウンドで1億1,500万ドル(約160億円)を調達している

2021年中頃からチリ、インドネシア、ノルウェーなどでテストを開始した Worldcoin は、2023年1月時点で、ベータ版の登録者数が100万人を突破した。その後もインド、ケニア、ウガンダを含む世界中の国々で目をスキャンしてきた結果、同年7月13日には200万人のサインアップを完了したいう

正式なローンチ後、日本では新宿歌舞伎町にあるゴジラ像をはじめ、東京都内の8カ所にオーブが設置され、サインアップのために人々が列をなした。今後夏から秋にかけて世界20カ国以上、35を超える都市に1,500個以上のオーブを展開する予定だ。

なお、Worldcoin が政府とどのように連携するのか、あるいは、どのように収益を上げているのかなど、詳細な点の多くは不明のままだ。

すでに人々の注目の的になっている Worldcoin だが、いつ頃からどのような経緯で設立されたのだろうか。

設立までの経緯

Worldcoin のアイデアは、アルトマン氏が2019年に思いついたという

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。
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