メタバースとはなにか?Facebookら続々投資する「次のインターネット」?

公開日 2021/10/07 20:41,

更新日 2021/10/07 20:42

有料記事 / テクノロジー

  • 目次
  • メタバースとは
  • 7つの構成要素
  • メタバースは何ではないか
  • 「より自然なかたち」でインターネットに関わる
  • 8つの論点・ハードル
  • メタバース領域で注目される企業・サービス 有料
  • メタバースの課題・懸念 有料

2021年8月、Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグは、傘下のVR企業Oculusにおいて、仮想空間の会議サービスHorizon Workroomsのベータ版を提供開始することを発表した。

Horizon Workroomsは、Oculus社のVRハードウェアOculus Quest 2向けの専用ソフトだ。ユーザーはアバターとしてVR空間上のバーチャルオフィスに入り、会議に参加したり、一緒に仕事をしたりすることができる。バーチャルオフィスにはビデオ通話でも参加できて、最大50人までの接続が可能となっている。

Facebookが同サービスを発表した背景には、メタバースと呼ばれる新たなテクノロジー分野の勃興がある。今年の8月には、Facebookが「(モバイル・インターネット企業から)メタバース企業に移行する」方針を明らかにしており、Horizon Workroomsは、Facebookによるメタバース実現の一環として提供されていると見られている

また、Microsoft CEOのサティア・ナデラが、2021年7月の決算会見で「エンタープライズ向けメタバース」に言及し、Fortniteで知られるEpic Games CEOのティム・スウィーニーは同社が「SFに出てくるメタバースのようなもの」の構築を目指していると述べるなど、大手テック企業がにわかにこの分野へ熱視線を向けていることが分かる。

メタバースとは何であり、どのようなサービスがあるのだろうか?そして、なぜ今注目されているのだろうか?

メタバースとは

「メタバース」とは、インターネット上に構築される多人数参加型の3次元仮想世界を指す言葉だ。初出はニール・スティーヴンスンによる1992年の米国のSF小説『スノウ・クラッシュ』で、小説内に登場する仮想空間を示す名称として使われた。

メタバースでは、その特性から現実と同様に、コミュニティ運営、教育、広告、販売、エンタメなど様々な展開の可能性が指摘されている。ザッカーバーグ氏は、メタバースを指して「具現化されたインターネット」で「モバイルインターネットの後継」とまで言い切っており、冒頭で述べたように他の大手テック企業も注目していることから、ビジネス面での期待も高い。

メタバースの要素が反映されているサービスは、すでに存在している。Epic GamesのバトルロワイヤルゲームFortniteや、ゲームをプレイ・開発できるゲーミングプラットフォームであるRoblox、Minecraftや「あつまれ どうぶつの森」のような、オンラインソーシャルゲームはその代表例だ。

こうしたゲームでは、ユーザーが自身のアバターを作ってひとつの仮想空間に集まり、ゲーム内で共通のバトルやイベントに参加したり、通話やチャットでコミュニケーションを取るなどのアクティビティをおこなっている。

またハード面では、前述したFacebookのOculusや、MicrosoftのHoloLensのようなVRデバイスが徐々に普及を見せている

さらに、3D世界も描画することができるゲーム開発プラットフォームのUnityや、メタバース関連技術の普及後に必要となる高性能半導体の需要を狙うNVIDIAなど、周辺レイヤーのプレイヤーの動きも活発になってきた。

このように、通信環境や端末の性能向上、3DCG技術の進化によって、仮想的に作られたコンテンツと現実の世界の融合は徐々に進んできている。

7つの構成要素

しかし、現在見えているメタバースの片鱗はごくわずかなものにすぎないと、この領域に詳しいベンチャーキャピタリストのマシュー・ボール氏は述べる

1982年に2020年のインターネットを想像することが難しかったように、(そして、インターネットに「ログイン」したことのない当時の人々にそれを伝えることがさらに難しいように、)メタバースをどのように説明したらよいのかはよく分かりません。

(中略)

メタバースが機能するためには、数え切れないほどの新しいテクノロジー、プロトコル、企業、イノベーション、発見が必要になります。そして、それは突然出現するものではなく、明確な「メタバース以前」と「メタバース以後」は存在しません。それとは逆に、様々な製品やサービス、機能が統合され、融合されることで、時間をかけてゆっくりと出現してくるでしょう。

彼はこのように断った上で、メタバースの核となる性質として次の7つを挙げる

  1. 永続性
    「リセット」や「一時停止」や「終了」がなく、永久に続く。
  2. 同期性
    リアルタイムで物事が進む。
  3. 参加の自由
    誰もが個人の主体性を持ってメタバース上のあらゆるイベントに参加できる。
  4. 経済性
    個人や企業が物事を創造・所有・投資・販売することができる。その「仕事」に対して報酬を得ることができる。
  5. 超越性
    「デジタルとフィジカル」、「プライベートとパブリック」、「オープンとクローズ」など、境界を超えた体験ができる。
  6. クロスプラットフォーム
    一つのIDで複数のサービスを利用できる。例えば、「どうぶつの森」のアイテムをFortniteでも使うことができる。
  7. 分散性
    独占的な企業がコンテンツや体験を提供するのではなく、個人から企業までの様々なプレイヤーが運営に参加している。

加えてボール氏は、インターネットアクセスの手段がデスクトップコンピュータからスマートフォンに移ったことでより継続的かつ持続的なものになったことになぞらえて、メタバースの行く末を説明する。

つまり、メタバースに近い社会では、インターネットなどの技術がより身近で自然なものとなり、ユーザーが意識せずとも、人間の周囲のあらゆる場所で利用されているような環境が実現されるとした

メタバースは何ではないか

一方で、より具体的な説明のために、ボール氏はメタバースが何ではないかという方向性からも説明を加えている。彼によれば、以下はメタバースの一部ではあるかもしれないが、メタバース自体ではない

バーチャルリアリティ

バーチャルリアリティ(VR)= メタバースという理解は、最も典型的な誤解のひとつだ。バーチャルリアリティはメタバースを体験するための手段に過ぎず、VRデバイスがなくてもメタバースに参加することはできる。同様に、VRコンテンツやVR体験施設もメタバースの一部でしかない。

仮想世界

仮想世界もメタバースを構成する要素の一部にすぎない。仮想世界を表現したゲームなどは以前から存在しているが、この場合の仮想世界は単一の目的(例えばゲーム)のためだけに設計された世界で、メタ的(クロスプラットフォーム)ではない。

ゲーム

例えばFortniteは、以下のようにメタバースの要素を多く含んでいる。

  • IPをマッシュアップしている
  • PlayStation、モバイルアプリ、Nintendo Switchのように、複数のプラットフォームにまたがる
  • ゲームのみならず、純粋にソーシャルな目的(イベント参加やプレーヤー同士のコミュニケーションなど)でも利用できる
  • コンテンツを作ることでクリエイターが報酬を得られる

しかし、次の点で必ずしもメタバースの性質を満たしているとは言えない。

  • 基本的にはゲーム参加が目的となる側面が強い
  • 参加者に上限がある。例えば、Fortniteが1200万人以上の同時接続を実現している時、各ユーザーは12万以上の異なるインスタンスに参加しておりそれぞれは完全には同期していない
  • ゲーム内通貨はプラットフォームをまたいで使えない。例えば、Nintendo Switchで購入したゲーム内通貨はPlayStationやPCでは使えない
  • 入手したゲーム内通貨を現実世界で現金化することはできない
  • ゲーム内で獲得したアイテムを他のゲームやサービスで使うことはできない

UGCプラットフォーム

メタバースは、Robloxのような仮想世界のUGCプラットフォームとして理解されることがある。しかし、この比喩は適切ではない。

メタバースにとってのRobloxは、インターネットにとってのブログプラットフォームサービスや動画投稿サービスに類するものであり、あくまでもメタバースを構成するサービスのひとつでしかない。

「より自然なかたち」でインターネットに関わる

ザッカーバーグ氏が語るメタバースのビジョンも、ボール氏の意見に近いものだ。The Vergeのインタビューで彼は、「Facebookは、SF映画のような、究極の相互接続で絡み合った世界の構築を目指している」と述べている。

具体的には、現在のモバイルインターネットの問題点として、オンラインでのコミュニケーションが「小さく光る長方形」を介した「スクリーン上の格子状の顔」を見ながらの「非人間的な」やり取りに限られていることを引き合いに出し、メタバースの実現を通じて人々が「より自然なかたち」でインターネットに関われるようになると主張した。

その上で、メタバース上での新たなデジタル経済の構築や、他の多くの企業・開発者との協業が展開されるだろうという見通しも語っている。

8つの論点・ハードル

しかし、このような「広大なメタバースのビジョン」を実現するまでのハードルは非常に高く、「数十年にわたるインフラ整備と数十億ドルの投資が必要」との指摘もある。

この点についてもボール氏は具体的な論点をまとめており、メタバースの本格的な発展に向けては以下の8つが検討されるべき主要なテーマとなっているという

ハードウェア

ひとつめの主要なトピックは、メタバースを開発したり、メタバースにアクセスするためのハードウェアだ。

スマートフォンやスマートウォッチ、VRヘッドセット、ARグラス、ゲーム機などのデバイスはこの分野において年々進歩しており、ユーザーの没入感や感覚の拡張に貢献しているが、普及までのハードルは依然として高い。

この点についてはザッカーバーグ氏も「スーパーコンピュータを厚さ5ミリほどのメガネのフレームに収める」ことが必要であると認めている

ネットワーク

メタバースにおいてはネットワークもこれまで以上に重要になる。バーチャル・シミュレーションの複雑さが増すにつれ、必要となるデータ通信量が飛躍的に増加するからだ。

特に、メタバースの主要な構成要素であるリアルタイム性を担保するためには遅延がほとんど許されない。例えば、アバターがバトルに参加するとき、動きが遅延したり、固まってしまうと、途端にリアリティがなくなり、ユーザーが幻滅してしまうという事態も起こりうる。

つまり、何百万人もの人々が自在に仮想世界にアクセスして生活するというメタバースの可能性を最大限に引き出すためには、超高速・低遅延のインターネットが必要だ。しかし、その技術的なハードルは高い。現在の4G回線の帯域幅では、メタバースには対応できず、5Gや6Gの回線が必要になるとされている。

続きを読む

この続き: 6,819文字 / 画像0枚

この記事を読むためには、メンバーシップの参加か単品購入が必要です。持続可能で良質なメディアをつくるため、ぜひメンバーシップにご参加ください。(メンバーシップを詳しく

スタンダード・メンバー

すべての有料記事が楽しめるプランです。10日間無料で、いつでも簡単に解約できます。

初回10日間無料・月額980円(税込)

スタンダード・メンバーに参加

プレミアム・メンバー

有料記事以外にも、編集部のSlackや定期開催のイベントに無料参加できます。

月額3,200円(税込)

プレミアム・メンバーに参加

または、記事を単体購入する

メンバーシップに関するご質問、決済や支払い方法などについては、「よくある質問」をご覧ください。

著者
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社マイナースタジオの立ち上げに参画。関心領域は、政治思想や東南アジアの政治経済など。Twitter : @akabaneshuta
投げ銭でサポートする

本記事が気に入ったら、投げ銭でサポートできます。ログインなしで、応援コメントも可能です。

¥10,000 - 加藤さん

いつも記事拝見しています!頑張ってください!

インターセクショナリティとは何か?

これまでのサポート一覧
最新情報を受け取る

ニュースレターやTwitterをチェックして、最新の記事やニュースを受け取ってください。

おすすめの記事