プライム市場など新設。東証の市場区分見直しがもたらす影響は?

公開日 2022年01月31日 16:39,

更新日 2022年01月31日 18:55,

有料記事 / ビジネス・経済

東京証券取引所(以下、東証)は今月11日、株式市場区分再編後の全上場企業の所属先を公表した。この市場区分見直しは今年4月4日に実施されるもので、現行の市場区分に代えて「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場が新設される予定となっている。新市場区分への移行に先立ち、上場会社には昨年末を期限とした市場選択期間が与えられており、その選択結果が公表された形だ。

東証の中核市場に及ぶ再編は、東証二部を新設した1961年以来、60年ぶりとなる。2018年から議論がおこなわれてきた経緯があり、株式市場のみならず、日本経済全体に影響を与える大きな変更として注目を集めている。

一体なぜ東証で市場区分の再編がおこなわれるのだろうか?それはどのように進行しており、今後どのような変化が起きるのだろうか?

再編のポイント

今回の市場区分見直しの最大のポイントは、現行の5つに分かれた市場区分が、3つの区分に再編されることだ。

東証は現在、東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQスタンダード、JASDAQグロースの5つの市場区分に分かれている。これが、2022年4月以降は、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに再編される予定だ。

これを踏まえて、まずは具体的な変更点と再編の狙いを見ていこう。

4つの変更点

市場区分再編に伴う主な変更点は、以下の4つだ。

  • 市場コンセプトの設定
  • 上場基準の見直し
  • コーポレートガバナンス・コードの改訂
  • TOPIX改革

市場コンセプトの設定

東証は、新設される3つの市場について、それぞれ次のようなコンセプトを掲げている

プライム市場:多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場

スタンダード市場:公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場

グロース市場:高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場

上場基準の見直し

各市場区分のコンセプトに応じて、①流動性、②コーポレート・ガバナンス、③経営成績・財政状態に基づいた定量的・定性的な上場基準(新規上場基準と上場維持基準で原則として共通)が設けられている。

例えば、プライム市場では「流通株式時価総額が100億円以上」(現在、東証一部では5億円未満で上場廃止)、「流通株式比率が35%以上」(同、5%未満で上場廃止)などが上場の条件だ。算出に使う流通株式の定義も厳しくなり、安定株主の保有分は原則として非流通株式とみなされるようになる

そして、この基準に抵触し、改善期間内に改善がおこなわれなかった場合、企業はその市場区分に所属できなくなる。上場基準は、各市場のコンセプトに表現されている通り、プライム、スタンダード、グロースの順に厳しい

コーポレートガバナンス・コードの改訂

コーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」も改訂される。

特にプライムでは、高いガバナンス水準も求められるようになる。コーポレートガバナンス・コードの全原則が適用され、「社外取締役は取締役の3分の1以上とすること」(現行は2人以上)、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)またはそれと同等の枠組みに基づく開示をすること」などが必要となるからだ

新制度への移行にあたっては、上場会社は移行先となる市場区分を主体的に選択できることとなっており、2021年9月1日〜12月30日が上場会社の市場選択期間として設けられていた。そして、各企業の選択結果が2022年1月11日に公表されたかたちだ。

なお、企業は必ずしも自社が基準を満たす市場を選択しなければならないわけではない。つまり、現在プライム基準を充たす企業もスタンダード・グロース市場を選択することが可能であり、逆に、現在プライム基準を充たさない場合でも、一定の条件(後述)をクリアすれば新規上場または上場維持ができる。

TOPIX改革

東証の市場再編と並行して、東証株価指数(TOPIX)の改革も行われる。

TOPIXはもともと、景気動向を表す経済指標として東証が1969年から算出を開始したもので、東証一部上場の全企業が構成銘柄となっている。

しかし、新しいTOPIXの枠組みでは、市場区分とTOPIXが切り離される予定だ。一旦は、現在一部に所属する企業はTOPIXに継続採用されるが、流通時価総額100億円未満の企業は、段階的にウェイトが逓減され、最終的には2025年1月にTOPIXから外れることとなる。

課題と目的

それではなぜ、今回の市場再編はおこなわれるのだろうか。

市場再編の狙いとしてまず押さえておくべきポイントは、今回の証券取引所の再編が、安倍晋三元首相の下で始められた、外国人投資家を東京市場に呼び込むための長期的な政策の一環であるということだ。

外国人投資家は日本の株式市場のメインプレイヤーであり、売買代金は市場全体の6割を超え、株式保有率も30.2%を占めるが、これらの投資家から長期的な投資をさらに呼び込みたいという狙いがある。金融庁における議論の過程の中でも、何度も「国際的に投資を行う機関投資家」の対象となる市場を目指すことが確認されており、海外の投資家の視線を多分に意識していることは間違いない。

その上で、現在の市場構造をめぐる問題点として、東証の議論では主に以下の3つの課題が挙げられている

  • 各市場のコンセプトの曖昧さ
  • 企業価値向上の動機付けの不足
  • 投資対象としての機能性と市場代表性を有する指数の不足

これらの課題を解消するため、今回の再編では以下のポイントが論点となった。

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著者
シニア・エディター
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社マイナースタジオの立ち上げに参画し、同社を売却。その後、The HEADLINEの立ち上げに従事。関心領域は、政治思想や東南アジアの政治経済など。
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