Microsoft Store sign.(Turag Photography, Unsplash) , Illustration by The HEADLINE

なぜゲーム会社の買収が相次いでいるのか?Microsoft、Activision Blizzardを巨額買収

公開日 2022年02月09日 19:46,

更新日 2023年09月13日 12:25,

有料記事 / ビッグテック

米・Microsoft は1月18日、Call of Dutyなどのゲームを展開する Activision Blizzard を買収することを発表した。買収額は687億ドル(約7兆8,700億円)で、Xboxを展開する Microsoft のゲーム事業やゲーム業界全体にとっても過去最大のM&Aとなる見込みだ。また Play Station を提供するソニーグループのソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、ソニー)も、1月31日にデスティニー(Destiny)シリーズを展開する米・ゲーム会社のバンジーを買収すると発表している。

このように大手テック企業がゲーム会社を買収する動きが目立つが、実際に近年のゲーム業界におけるM&A件数は上昇傾向にあり、ゲーム業界全体で構造変革が起きているといえる。

ではその構造変革はなぜ起きているのだろうか?それを理解するために、近年のゲーム市場の動向と特徴を概観する。次に Microsoft やソニーが展開するゲーム事業の共通性や相違点を確認し、ゲーム業界の構造変革と直近のM&A の理由を明らかにする。最後に、こうした M&A 動向を踏まえてゲーム業界の今後の動きを探る。

モバイル化と「億ゲー」

オランダの調査会社 newzoo によると、2021年のゲーム市場の収益規模は1,758億ドル(約20兆円)で、ユーザー数は約29億人まで達した。ゲームをプレイするハード機器に欠かせない半導体の供給遅れといった、サプライチェーンの混乱により2021年のゲーム市場の伸び率(前年比)は縮小となったものの、2020年は在宅時間の増加などによる需要増加で、市場の成長は23.1%(前年比)増を記録し、過去最高の伸び率となっている。

こうした伸長において注目すべき変化は2つある。

プレイ端末の変化

まずは、ゲームをプレイする環境や機器が変化し、スマートフォンの普及に伴ってモバイル端末でゲームをプレイする人々が増えたことだ。

ゲーム機器の歴史を振り返ると、ゲームが家庭でプレイされるようになったのは1980年代のことだ。任天堂のファミリーコンピューター(通称ファミコン)やセガの SG-1000 といったハード機器が安価で発売され、据え置き型のゲーム機器が普及することとなる。

1990年代には携帯型ゲーム機が登場する。中でも任天堂が発売したゲームボーイ(GB)は、「テトリス」「ポケットモンスター赤・緑」といったソフトが人気を博し、携帯型ゲーム機市場を圧倒した。のちに発売されたゲームボーイカラーと合わせると、ゲームボーイは発売から約10年で1億台を売り上げている

同じく90年代には、ソニーが据え置き型ゲーム機 Play Station (PS)を発売した。当時主流だったカセットタイプのソフトではなく、CDタイプのソフトを採用したことで安価な供給が可能となり、PSは2004年に据え置き型ゲーム機として初の出荷台数1億を達成した。

任天堂とソニーが、ニンテンドーゲームキューブや PS2 といった後継機を続々とリリースする2000年前後にMicrosoft は Xbox の販売を開始した。この時期から据え置き型ゲーム機は、任天堂・ソニー・Microsoft の3社による競争となっていく。

その後は任天堂が Wii シリーズ、ソニーがPS シリーズ、Microsoft が Xbox シリーズを展開していったが、これらのゲーム環境に共通しているのは、一つには GB や PS といったソフトを読み込むためのハード機器と、カセットやCD/DVDといった外部のソフトが必要だったこと、もうひとつは、プレイ環境が家庭に限られたことだ。

モバイル端末の登場

こうした環境が変化するきっかけとなったのが、スマートフォンなどのモバイル端末の普及だ。モバイル端末でゲームをプレイする場合、外部ソフトは必要なく(*1)、バージョンに対応しているモバイル機器やアプリのみが求められる。つまり、モバイル端末の登場によって、据え置き型ゲーム機や携帯型ゲーム機よりも手軽にゲームをプレイできるようになり、場所の制限が無くなっていったのだ

ゲーム端末の市場シェアを見てみると、2012年には45%を占めていた据え置き型のゲーム機器は、2021年に28%までシェアを落とし、2012年に約20%弱だったモバイル機器は、2021年に52%を記録している。 ただし、ゲーム機器のシェアは低下しているが、売り上げは漸増しているのも事実だ。そのため、ゲームのプレイ環境が据え置き型からモバイルへ移ったというよりも、プレイ環境の選択肢が横に広がった、と考える方が現実的だろう。

(*1)任天堂が展開するNintendo Switch は据え置き型・携帯型どちらの特性も備えるゲーム機であり、ソフトも外部ソフトタイプのパッケージ型、外部ソフトがいらないダウンロード型がある。PS5 も同様で、光学ディスクドライブがついているタイプとそうでないタイプの2種類が展開されている。

「億ゲー」の誕生

2つ目の変化は、ゲームプレイ環境が変化するに伴う、1つのゲームをプレイする人々の数だ。最も顕著な例は、「億ゲー」と呼ばれる、月間の登録者やプレイユーザーが1億人を超えるゲームが登場したことだ。

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✍🏻 著者
ウォーリック大学政治学修士課程
The HEADLINEリサーチャー. ウォーリック大学(英国)政治・法理論修士課程. 関心領域は、平等論やケイパビリティアプローチ、倫理と公共政策、ホームレス問題など.
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