Fukushima Daichi Nuclear Power Station(IAEA, CC BY-SA 2.0) , Illustration by The HEADLINE

なぜ政府は「反対」を押し切り、処理水の海洋放出を決めたのか?

公開日 2023年08月24日 18:53,

更新日 2023年09月06日 18:22,

有料記事 / 国内 / 環境

この記事のまとめ
💡政府、福島第一原発処理水を海へ放出

⏩ 放出には全漁連や中国が反対を表明
⏩ 反対ではあるものの、全漁連の態度は軟化
⏩ 中国は、日米韓の接近を妨害する狙いか

東京電力は8月24日13時ごろ、福島第一原子力発電所に保管していた処理水の海洋放出を開始した

今回、海に放出されるのは、多核種除去設備(通称:ALPS)によって、高濃度の放射性物質を含む汚染水からトリチウム以外の放射性物質を除去した「処理水」だ。また、放出にあたっては、処理水を海水と混ぜることでトリチウムの濃度を薄め、海底トンネルを経由して沖合1キロほどの海へと放出する。

なぜ処理水の海洋放出に反対する声があるのか?汚染水との違い、トリチウム以外の問題も
有料記事 / 社会

この海洋放出計画をめぐっては、今年7月に国際原子力機関(IAEA)が「国際的な安全基準に合致している」と評価した包括的な報告書を公表これによって、科学的な安全性は担保される形となった。

しかし、8月22日に政府が海洋放出の具体的な日程を決定して以降、大手新聞社などは海洋放出の決定を批判する論調を強めている。背景にあるのは、海洋放出によって福島県近海で水揚げされた海産物などへの風評被害が強まることへの懸念だ。

たとえば、朝日新聞は8月23日付の社説で、8月21日に岸田首相と面会した全国漁業協同組合連合会(以下、全漁連)の坂本雅信会長が「反対」の立場を表明しているなかでの海洋放出決定を批判した

また、日本の水産物の主要輸出先である香港と中国が、日本産水産物の輸入規制を強めているなかでの決定であったことも批判されている。日本産水産物の輸出先として4割以上のシェアを占める香港および中国は、日本政府が示す計画の科学的安全性が信用できない等と批判。海洋放出の実施を受けて、中国政府は8月24日から日本産水産物の輸入を全面的に停止する。こうした中国などの対応を踏まえ、8月23日付の東京新聞は社説で「拙速な放出開始は将来にさらなる禍根を残す」と批判している

漁業者を代表する全漁連や、最大のマーケットである中国が明確に「反対」の立場をとるなかで、なぜ政府は海洋放出に踏み切ったのか。当然、処理水の保管タンクの容量が満杯に近づくなか、放出をためらう時間的猶予がなかったことは大きな理由の1つだ。東京電力の推定では、処理水の保管タンクは早ければ2024年2月に満杯になると見込まれている

しかし、全漁連や中国による「反対」の実態を詳しく検討すると、政府が「反対を押し切った事情」について別の見え方も浮かんでくる。

海洋放出実施までの経緯

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
北海道大学大学院農学院博士後期課程。専門は農業政策の決定過程。一橋大学法学部卒。
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