⏩ ネイチャーポジティブ=生物多様性の回復
⏩ Uの生物多様性デューディリ、日本企業800社にも影響
⏩ 東証プライムなどでも今後、情報公開が義務化される可能性
今や、カーボンニュートラルは誰もが知る概念となったが、環境問題の世界では次なるキーコンセプトとして、ネイチャーポジティブが注目されている。
ネイチャーポジティブは、生物多様性に関係する目標だ。生物多様性の保全・回復が、気候変動と両輪をなす環境問題の重大な論点の1つとなるなか、すでにEUでは生物多様性分野の情報開示を企業に義務付ける規制が施行されている。
こうした法的な義務付けはいまだ各国に広がる状況にはなっていないが、株式市場では今後、気候変動と同様に生物多様性分野についても、上場企業へ情報開示を求める動きが広がる可能性がある。2023年9月にはTNFDと呼ばれる国際的なタスクフォースが、生物多様性に関する情報開示の枠組について提言をまとめた。
こうした生物多様性をめぐる動きの旗印として掲げられているのが、ネイチャーポジティブである。カーボンニュートラルを合言葉として、世界が温室効果ガスの排出削減へと動き出したように、ネイチャーポジティブの実現が各企業にも求められることだろう。
ネイチャーポジティブとは、どのような概念であり、なぜ企業にとって重要なのだろうか?
ネイチャーポジティブとは何か
ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を食い止め、さらにそれを回復させることを目指す概念だ。つまり、自然・生物多様性(ネイチャー)の回復(ポジティブ)を指している。
生物多様性条約(COP15)における合意を受けて、日本政府が2023年3月にまとめた「生物多様性国家戦略2023-2030」も「地球規模で生じている生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる『ネイチャーポジティブ』に向けた行動が急務となっている」と指摘している。
ネイチャーポジティブの具体像「30by30」
ネイチャーポジティブの実現に向けて、1つの区切りとされているのが2030年だ。