アグネス・チョウ(周庭)氏ら、逮捕翌日に保釈。香港当局の狙いは?

公開日 2020/08/12 09:00,

更新日 2020/10/10 19:27

有料記事 / 政治・国際関係

10日に逮捕された香港・民主派の活動家であるアグネス・チョウ(周庭)氏が、11日22時(現地時間)に釈放された。

あわせて同日に逮捕された、蘋果日報(Apple Daily)紙の創業者ジミー・ライ(黎智英)氏やライ氏の息子、そして同紙を発行するNext Digital(壱伝媒)社の幹部らも保釈されており、前日に逮捕された人物はいずれも保釈された

英国に滞在している活動家のネイサン・ロウ(羅冠聡)氏は、チョウ氏について「彼女は無罪だが、無期刑を受ける可能性がある」と警鐘を鳴らし、Twitterでは「#FreeAgnes」のハッシュタグが拡散されるなど、本問題への関心が高まっていた中での出来事だった。

一体チョウ氏らに何があり、香港当局の狙いは何なのだろうか。

罪状は「外国勢力との結託」

今回チョウ氏が逮捕されたのは、その罪状として当初報道されていた国家安全法の「扇動分裂罪」ではなく、「外国勢力と結託して国家安全に危害を加えた疑い」によるものだった。

保釈後におこなった記者会見では「逮捕された詳しい理由は分からない」とした上で、「これまでで最も恐怖を感じた」と語った。また、2万ドルの保釈金を支払い、パスポートは当局から没収、9月1日に再び警察に出頭することも明らかにした。

蘋果日報紙の家宅捜索では200人以上の警官が投入され、計画的な捜査であったことも伺える。香港のメディア王でもあり、著名な民主活動家であるジミー・ライ氏の逮捕には、英国政府や米・ポンペオ国務長官が続々と懸念を表明した。

チョウ氏やライ氏は、いずれも外国勢力との結託した疑いが持たれており、South China Morning Post紙によれば、チョウ氏は「香港の制裁を求めるオンライングループに関与していた疑い」があり、ライ氏とその息子は「海外の銀行口座を通じて、グループに財政支援を提供した疑い」があると警察は主張している。

具体的な結託の内容は不明だが、チョウ氏については、ソーシャルメディアを通じた言動が問題視されたという指摘もある。

保釈は容易?

今回、チョウ氏らが翌日には保釈されたことから、国家安全法による逮捕であっても、従来の香港における慣習通り42時間以内で保釈されることを意外に受け取る声も見られた。しかし実際には、国家安全法における保釈に関する規定には懸念が集まっている。

国際的な人権団体のHuman Rights Watchが指摘するように、同法第42条は「裁判官が、国家安全保障上の犯罪を犯さないと確信した場合を除いて、容疑者の保釈を拒否している」。この条文は、国家機密の開示が懸念される場合は公開裁判が拒否されたり、司法長官の指示にもとづいて陪審員裁判がおこなわれないことと合わせて、容疑者の基本的権利が奪われている条項として問題視されている。

実際、7月1日に国家安全法が施行されてから24時間以内に逮捕されたトン・キッイン氏は、保釈を拒否されている。キッイン氏は、「光復香港 時代革命」と書かれた旗を掲げながらバイクで警察に衝突したことで逮捕され、その後、裁判所は保釈申請を却下して拘留された。この逮捕をめぐる保釈の審議は、今月5日にふたたび行われたが、そこでも保釈が認められることはなかった

キッイン氏の弁護士は、「この条項が事実上の『保釈なし』の規定となっている」とした上で、「第42条は、国家安全法自体とミニ憲法である基本法とも整合性が取れていない」と主張している。国家安全法では第4条で「人権の尊重・保証」が規定されており、基本法でも「不法な逮捕、拘留、監禁」が禁じられているが、第42条の内容はこれらと矛盾をきたすことが指摘されている。

なぜ早期に保釈?

では、一体なぜアグネス・チョウ氏やジミー・ライ氏は早期に保釈されたのだろうか。現時点で当局の真意は不明だが、大きく3つの仮説が提起されている。

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著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に東証一部上場企業に売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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