2021年衆院選のポイント・各党の政策は?

公開日 2021年10月21日 16:40,

更新日 2021年10月21日 17:13,

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今月19日、第49回衆議院議員総選挙(衆院選2021)が公示され、31日の投開票に向けて12日間の選挙戦が開始された。今回の選挙のポイント、そして自由民主党(自民)や立憲民主党(立憲)をはじめとした9党(*)の政策はどうなっているのだろうか?

(*)自民・公明・立憲・国民民主・共産・維新・社民・れいわ・N国の9党。ただし本文中の図では、社民・れいわ・N国以外の主要6政党の公約が比較されている。

選挙のポイント

まず今回の選挙について、岸田文雄首相は「コロナ後の新しい未来を切りひらいていけるのは誰なのか選択いただきたい」として「未来選択選挙」と位置づけている。

これまでの「国難突破解散」や「アベノミクス解散」などのキャッチコピーと比べると、インパクトに欠けるように見えるが(岸田首相のキャラクターを反映しているかもしれない)、今回の争点がコロナ対策・経済対策の2つであることは間違いない。

また、立憲と共産などによる野党共闘の行方も注目を集めており、これらが与党にどこまで対抗できるかも注目だ。

これらのポイントを順番に見ていった後、具体的に各政策の中身を見ていく。

コロナ対策

日本でも172万人の感染者と1.8万人の死者を出した新型コロナウイルスは、世界に甚大な被害をもたらしたパンデミックとなった。そのため、コロナ対策が争点となることは当然のように思えるが、事態は少し複雑だ。

感染症対策という意味では、今年6月下旬頃から始まった第5波は、全国的に8月後半をピークとしてからは減少に転じており、19日の感染者は372人まで落ち着いている。こうしたコロナの減退傾向を受けて読売新聞などによる世論調査では、衆院選の争点について「景気や雇用」や「年金など社会保障」への関心が「新型コロナウイルス対策」をわずかに上回る事態となっている。

おなじく時事通信社による世論調査でも、経済政策を重視すると述べた人(34.7%)が、新型コロナウイルス対策の重視(19.4%)を上回る傾向が確認できる。第6波が来た場合、これらは変化する可能性もあるが、少なくとも月末までコロナの波が収まっていれば、このまま経済対策への関心が強くなっていくだろう。

差の出ない政策

加えてコロナ対策は、後述するように各政党の色が出辛いこともポイントだ。「Go Toトラベル」のように賛否が分かれる政策を除けば、感染症対策は科学的見地によって決まってくるため、どの政党であっても、そこに従う他ないためだ。自民党総裁選では、ロックダウンの法整備が争点化することもあったが、参院選ではそうした対立軸も生まれていない。

また新型コロナによって傷ついた経済の回復も、短期的には各政党ともに給付金などで乗り越えようとしており、金額の多寡はあれども同じ方向性だと言える。

経済対策

しかし、コロナ後の社会にまで目を向けた中長期的な経済対策となれば、与野党で方向性が分かれる。具体的には、再分配のあり方についてだ。

岸田首相は「新しい資本主義」というキャッチフレーズを掲げて、成長と分配のうち後者についても重視していく姿勢を見せる。これは、従来のアベノミクスが企業には高い株価と利益をもたらした一方(成長)、その資金が賃金上昇にまで至らなかった(分配)ことを反省して、より意欲的に分配政策を進めていこうという考え方だ。

分配重視という方向性自体は、たとえば「1億総中流社会」を掲げる立憲などとも共通しているが、異なるのはその具体策だ。多くの野党は消費税の減税を求めており、具体的な政策が見えづらい自民党との対比が目立っている。

財政・社会保障

再分配政策とも関係しており、国民の関心も高いのが財政政策と社会保障のあり方だ。給付金や消費税の減税などを考える上では、財源をどのように確保するかという問題がある。財政赤字は問題ないという立場の論者もいるが、世論としては「国の借金が増えないよう財政再建を優先すべきだ」と考える人が58%を占める中で、こうした国民の不安を払拭する必要はある。

各党が、財源の議論をしないまま給付金を訴える流れを「バラマキ合戦のような政策論」だと財務省官僚のトップである矢野康治事務次官が批判する異例の状況も生まれている。

また少子高齢化に伴って制度の支え手が減っている年金についても、将来世代の給付に不安があることで、国民の関心は高まっている。こうした問題も、財源の不安が残るまま各政党が制度改革のみを訴えており、問題の方向性が見えづらい状況だ。

パンデミックによって給付金をはじめとした低所得層への支援が必要であること、つまり財政出動が求められることは各党共通の見解だが、その「財源の議論は事実上置き去りのまま」となっている。こちらは国民の関心が高い割には、各党の立場が見えづらい政策だと言える。

つまり今回の争点については、

  • コロナ対策では、あまり違いが見えづらく
  • 経済対策では、給付金など短期的な政策は類似しているものの、長期的な政策は再分配のあり方などで違いがある

という状況だ。

野党共闘の効果は?

政策面以外で注目すべきは、自民・公明の与党に対して、野党共闘を図った野党がどこまで対抗できるか?という問題だ。

立憲や共産などの野党は、289選挙区のうち約210選挙区で候補者を一本化して、与野党が直接対決する構図となっている。候補者の一本化により、たとえば立憲と共産で票を食い合うことがなくなるため、与党に対して野党が揃って対抗できる利点がある。

現状の予想を見ると、自民が約40議席を減らして、立憲が約20議席の増加、日本維新の会(維新)が20議席の増加というシナリオが目立つ。たとえば、選挙コンサルタントの大濱崎卓真氏は自民39議席減・立憲23議席増・維新20議席増という予想をおこない、選挙プランナーの松田馨氏は同じく31議席減・18議席増・17議席増という予想をおこなっている。

報道でも、自民は議席減を織り込みつつ党単独での過半数となる233議席の確保が勝敗ラインだという指摘がある。現状の276議席から40議席を減らした場合は236議席となるため、まさに事前の予想通りこの水準でどこまで自民が議席を守り切れるかが焦点となる。

立憲への支持率は、自民党の38.8%に対して6.6%にとどまっており、与党の議席減は野党に対する直接的な支持というよりも、いわゆる無党派層(支持政党を持たない層)が野党に流れたこと、すなわち野党共闘の効果として解釈するべきだろう。(*2)

いずれにしても、岸田首相が「単独過半数」という保守的な勝敗ラインを掲げていることは、自身の責任問題に直結することを警戒しているという指摘もある。野党共闘によって、予想以上に自民党の議席が減った場合、岸田政権が短命に終わるリスクも浮上するため、その後の政治も混乱が目立っていくだろう。

(*2)たとえば、日本経済新聞によれば「立憲民主党や共産党など野党5党が統一候補を立てた小選挙区を中心に競り合いとなっている。野党の共闘戦略に一定の効果がみられる」と指摘されている。また現時点では、無党派層が自民よりも立憲を支持しているという調査結果も出ている。

各党の政策は?

では以上のような、衆院選自体のポイントを踏まえて、各党の政策について概観していこう。

コロナ対策

前述のようにコロナ対策については、政策が分かれづらい。ほとんどの政党が検索拡充や医療体制の強化、そしてワクチン接種の推進や治療薬の実用化などを掲げており、水際対策の強化や法改正などで僅かな違いが確認できる程度だ。

過去には「Zeroコロナ」を掲げた立憲が、ワクチンの大規模接種センターをおこなうならば、大規模検査をおこなうべきと訴えるなどの違いもあったが、蓋を開けてみればワクチン接種がかなり早いペースで進んだことで、与党も無料PCR検査所の設置など検査拡大へと舵を切っている。

経済対策(給付金など)

給付金は、コロナ対策でもあるし経済政策でもあるが、こちらも大きな差は出づらい。自民・立憲・共産・国民民主などが、数十兆円規模の経済対策と10万円前後の給付金を掲げており、生活が困窮する人への支援策として同一の方向性となっている。

これまで積極的な財政出動をおこなってきたアベノミクスに批判的だった立憲すらも、財政健全化を一旦凍結する立場を示しており、徹底した積極財政を以前から訴えるれいわをはじめ、短期的な財政出動については各党共に賛成している。

経済対策(再分配)

一方で前述したように、再分配については与野党で姿勢が分かれる。もともと岸田首相は、金融所得課税の見直しを含めた、再分配政策の重視を総裁選からアピールしていた。ところが、就任直後に課税見直しついてはトーンダウンした上で、従業員の給与を引き上げた企業への税制優遇や、看護や介護、保育などの公的価格の引き上げなどを優先するという立場へのシフトが話題となった。

これに対して立憲の枝野幸男党首は、岸田首相の姿勢を批判した上で、2023年度までに現行の金融所得税の税率20%から25%まで引き上げることを明言した。

加えて、立憲・共産・国民・れいわ・社民の野党各党が足並みを揃えているのが、消費税の減税だ。これは金融所得課税の記事でも説明したように、消費税には低所得者ほど生活費に占める割合が高くなってしまうという「逆進性」があるため、再分配をおこなうためには、消費税を下げる必要があるという主張に基づいている。コロナ禍によって生活が苦しくなった人が多いことから、野党がいずれも時限的な消費税減税を求めている状況だ。

自民党は、消費税は「社会保障を支える大変重要な財源」であるとともに、消費税の「引き下げに伴う買い控えや、将来、税率を元に戻す場合の消費減退などの副作用が大きい」ことを指摘し、野党の主張には真っ向から反対している。

このように再分配の手法については、金融所得課税や消費税などに注目する野党それらに否定的な与党という分かりやすい構図が生まれている。

外交・安全保障

外交・安全保障については、米中対立や台湾と中国の関係悪化、相次ぐ北朝鮮のミサイル実験など、東アジア全体で緊張が高まっている。そのため本来であれば、与野党の政策的立場に注目が集まってもおかしくないが、現状ではコロナや経済対策に比べて関心は劣後している状況だ。

いずれにしても、外交安保については与野党共に「日米同盟を基軸とした政策」という考え方では共通しつつ、防衛費や辺野古新基地建設問題をめぐって政策的違いも見られる。

まず防衛費については、自民党が国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に置いた増額を掲げている。これは軍備増強を図る中国や北朝鮮を念頭に置いた動きと見られ、1976年の三木武夫政権から続いてきた、防衛費をGDPの1%に抑える流れ(いわゆる1%枠)からの転換となっている。「現実に立脚した外交政策」を掲げる維新も同じく1%枠の撤廃を訴えているが、それ以外の野党からは特に明言がない。

自民と維新は、相手のミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」でも近い姿勢を取っており、他の政党との立場の違いが際立っている。

また立憲の前身である民主党は、政権下において米軍の普天間基地移設を「最低でも県外」と打ち上げたが、最終的に断念した過去がある。その流れは現在の政策でも引き継がれており、立憲と共産党が名護市・辺野古新基地の建設中止を訴えている

エネルギー政策

2050年のカーボンニュートラルに向けて、エネルギー政策もますます注目を集めている。2050年以前のマイルストーンとなる2030年時点の温室効果ガス削減目標については、小泉進次郎前環境相が「おぼろげながら見えてきた」と語っている46%という与党の目標に対して、立憲などの野党が約55%から60%以上という目標を掲げる。

また再生可能エネルギーだけでは電力の安定供給が難しいという懸念から、原発再稼働を進めるべきだという与党の立場に対して、立憲と共産は反対、国民民主は与党と同じく賛成の立場を示している。

人権・憲法改正

選択的夫婦別姓や同性婚、LGBT法案については、自民党とそれ以外の党の立場がくっきりと分かれている問題だ。18日におこなわれた党首討論でも、選択的夫婦別姓とLGBT法案について賛成する党首の挙手を促され、岸田首相のみが手を挙げない場面があった。

また憲法改正については、コロナ禍で優先しないと語る立憲と9条改正を批判する共産党以外は、賛成を示している。

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著者
編集長
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。Abema TV『ABEMAヒルズ』、日テレ系『スッキリ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説をおこなう。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジア、テクノロジー時代の倫理と政治など。
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