台湾への軍事侵攻はあり得るか?緊張の背景と「台湾統一」の蓋然性

公開日 2022年03月16日 18:55,

更新日 2022年09月15日 10:59,

有料記事 / 政治 / アジア

ロシアによるウクライナ侵攻は、中国による台湾統一をめぐる議論を活発化させている。

2月24日の侵攻後、台湾では「今日のウクライナは明日の台湾だ」というフレーズが盛んに取り上げられた日本米国などでも、強大な権限を持つプーチン大統領が軍事行動を起こしたという事実に、権力集中を強める習近平国家主席の姿を重ね合わせて、懸念を示す動きが見られた。

前回本誌で説明したように、第二次大戦後の1970年代に現在の中台関係をかたちづくる国際的なアレンジメントが成立して以降、中国と台湾の関係は近づいたり離れたりしながらも、曖昧な状態のまま保たれてきた

しかし近年、中台両者の関係は悪化し、「過去40年間で最悪」表現されるほど、両岸の緊張は高まっている。今回の世界的な情勢の不安定化において、中台関係にはさらなる注目が集まっている。

半世紀近くにわたって一定の安定を見せてきた中台関係がなぜ変化し、中国が積極的に台湾を狙うようになったのだろうか?また、中国が台湾へ侵攻する蓋然性はどの程度あるのだろうか?

前回記事:台湾有事とは何か?中台関係の歴史と現状を振り返る

台湾情勢の懸念の高まり

まずは、「アジアにとっての2022年の最大リスク」と言われるほど懸念が高まっている台湾情勢について振り返っておこう。

6年以内の軍事行動

台湾問題についての議論が顕在化したのは、米インド太平洋軍のフィリップ・デビッドソン司令官(当時)の発言がきっかけだ。2021年3月の米上院軍事委員会において、同氏は中国が今後6年以内に台湾で軍事行動を起こす可能性がある述べた

また同氏の後任であるジョン・アキリーノ司令官も、数週間後の上院公聴会において、多くの研究が「現在から2045年までのいずれかの時点」で中国による台湾に対する武力攻撃の発生を予測していると言及したうえで、中国が「多くの人が考えているよりも早く」台湾を攻撃する可能性がある証言した。

日本にも懸念事項

台湾情勢の不安定化は、日本を含む周辺国にとっても懸案事項だ。台湾周辺の海域は、日本にとって中東からのエネルギーなど資源輸入における重要なシーレーンである上に、仮に本格的な台湾有事が起きれば、周辺国の領海や領空が戦域になる可能性が高いからだ。

2021年4月におこなわれた日米首脳会談後の共同声明には、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」ことや、「日本は同盟および地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」ことが明記された。日米間の首脳レベルの共同声明に台湾に関する条項が盛り込まれたのは、実に50年ぶりのことだ。

こうした懸念の背景には、近年中国が台湾周辺で軍事活動を活発におこなっていることがある。特に2016年に独立志向の強い蔡英文氏が台湾総裁に当選してから、中国軍機による台湾の防空識別圏への進入が相次いでおり、偶発的な衝突リスクも懸念されている。

なぜ今、中国は台湾を狙うのか

ではなぜ今、中国は再び台湾に対して強硬姿勢を見せているのだろうか?

この問題を理解するためには、中国の軍事力の進化協調的アプローチの行き詰まり習氏のレガシー確立、そして中国の国力のピークという4つの側面に注目をする必要がある。

1. 軍事力の進化

まず第1の理由は、中国の軍事力の進化だ。東アジアにおいて、米国との軍事バランスの逆転が起きているという評価がある。

習氏は「中華民族の偉大なる復興」には台湾統一が不可欠だと明言し、この目標を次世代に先送りしないため、人民解放軍は準備を整えよ、と機会あるごとに命じて、中国軍を強化してきた。

実際、海兵隊は17年に組織改編が始まり当初の1万人から3倍以上に拡大し、空母を攻撃可能な弾道ミサイル、極超音速ミサイル、人工知能と連動した無人機なども整備された。中国の国防白書では、2035年までに中国軍の近代化が完了され、2049年までには米軍に比肩する世界最強の軍隊が目指されることが明記されている。

軍事オプションは整備

実際に、軍の強化は順調に進んでいる。2021年に米・国防総省が公表した、中国の軍事・安全保障分野に関する年次報告書によれば、中国は2030年までに少なくとも1,000発、2027年までに700発の核弾頭の保有が可能になる公算が大きいという。その上で、もし中国軍の増強が続けば、台湾の武力統一を実現するだけの軍事オプションが整備されつつあるとの見方を示した。

また、この年次報告書によれば、東アジア周辺の米中の戦力比較では、すでに中国が米国を上回っており、2025年の予測ではその差がさらに大きく開くという。

航空機産業や宇宙産業、人工知能や脳に関する研究の軍事利用でも中国が優位に立っており、新兵器開発状況の進度も速くなっているという指摘もなされた。

しかし現時点では米軍の介入を排除して、台湾に大規模な上陸作戦を実行する能力を中国軍が持っているとは必ずしも言いがたいという声もある。

続きを読む

この続き: 6,270文字 / 画像0枚

この記事を読むためには、月額980円のメンバーシップに参加するか単体購入が必要です。10日間の無料トライアルで、いますぐ読むことができます。

いますぐ無料トライアル

すでにメンバーシップに入っている方や単体購入されている方は、こちらからログインしてください。

メンバーシップに関するご質問、決済や支払い方法などについては、「よくある質問」をご覧ください。

✍🏻 著者
シニア・エディター
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社マイナースタジオの立ち上げに参画し、同社を売却。その後、The HEADLINEの立ち上げに従事。関心領域はテックと倫理、政治思想、東南アジアの政治経済。
最新情報を受け取る

ニュースレターやTwitterをチェックして、最新の記事やニュースを受け取ってください。

🎀 おすすめの記事