バンクシーは、なぜウクライナに壁画を描いたのか?

公開日 2023年04月20日 19:02,

更新日 2023年04月20日 19:02,

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この記事のまとめ
💡戦地のバンクシー壁画、ポイントを解説

⏩ バンクシー、作品でウクライナ支援。壁画は記念切手として発売
⏩ わかりやすさで大衆に受け入れられるも、バンクシーの活動には批判も
⏩ 壁画の措置は議論の的。過去には窃盗や売却の事例

覆面アーティストとして知られるバンクシー(Banksy)は、反戦や反暴力を訴えるメッセージをたびたび発信してきた。

ウクライナの紛争地帯にも、昨年11月、ロシア侵攻を批判するような壁画が描かれた。首都キーウ周辺で、7つの壁画が見つかったのだ。バンクシーは続けてチャリティ作品を発表するなど、ウクライナを支援する姿勢を見せている。

バンクシーは戦地に壁画を描くことで、何をしようとしたのだろうか?

バンクシーとウクライナ侵攻

ウクライナ侵攻に関連して、バンクシーはまずキーウ周辺に7つの壁画を描いて話題を呼び、続いてチャリティ作品を発表してウクライナへの寄付を表明した。このバンクシーの活動は、自身の手を離れたところまで波及し、壁画のひとつが記念切手として発売された。

それぞれの出来事は、具体的にどのような内容だったのだろうか。

7つの壁画が出現

昨年11月、キーウ周辺で7つの壁画が発見された。Instagramに制作風景の動画が公開されたことによって、7つとも正式なバンクシー作品であることが明らかになった。バンクシーの新作発表は、イングランド東海岸に《A Great British Spraycation》が出現した、2021年8月以来となる。

壁画が描かれた町のひとつボロジャンカは、ウクライナの首都キーウから約50km北西にある住宅街だ。ロシアの侵攻により集合住宅が崩壊し、200人以上が行方不明になるなど、キーウ近郊では最悪の被害を受けた街の1つだ。ロシア軍が撤退した今でも、町には攻撃の爪痕が残っている。

バンクシーはその瓦礫の中に作品を制作し、Instagramに投稿した。本人は各作品についてコメントしていないが、壁画の中には明らかにロシアを揶揄するような図像もある。

最初にInstagramで発表された作品は、瓦礫の上で逆立ちのポーズをとる少女像だった。同じく大きな被害を受けた町イルピンには、首にサポーターを巻いてリボンを持つ少女像が描かれた。いずれも、新体操大国として知られるロシアを彷彿とさせる。

キーウ市内では、「Z」マークをつけた軍用トラックの作品が見つかった。この図像では、もともとあった男性器の落書きが大砲に見立てられている。「Z」の意味には諸説あるが、ロシア軍の装備に描かれるマークであり、ウクライナ侵攻支持者のシンボルとして広まっている。

ロシアのウクライナ侵攻のシンボル「Z」は、何を意味するのか?
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共同通信によると、これらの壁画を「ロシアに負けるな」というメッセージだと受け止め、励まされた地元住民もいるという。

ただしInstagramの投稿にはウクライナから感謝のコメントが寄せられる一方、「町を美術館にするくらいなら、家を建て替えたほうがいい」「復興のための資金集めをしてほしい」という批判的な声も挙がった。

チャリティ作品販売

壁画公開の翌月、バンクシーは新作プリントを販売し、収益の全てをウクライナ復興のために寄付する発表した。この新作には、バンクシーの代表的なモチーフであるネズミが描かれている。プリントではあるが、仕上げに手作業が施されているため一点モノに近い。

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✍🏻 著者
リサーチャー
東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)にて修士号取得。専門はイタリア近代絵画。アートの領域を中心にライターとして活動中。
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