⏩ 警告自体は虚偽だが、完全にフィクションとも言えない
⏩ 太陽嵐が原因で、最も被害を受けるのは被害額24億2,000万ドルの東京と予測
⏩ 過去には送電網がストップ、Starlink 用衛星が機能停止となった事例も
2023年6月頃から、Twitter、Facebook、TikTok、Reddit などのソーシャルメディアなどを中心に、NASA がインターネット黙示録について警告をしているとする情報が飛び交っている。
たとえば、6月7日、英・Mirror 誌は「NASA の使命は、人々が何か月もオフラインになる可能性のある『インターネット黙示録』を防ぐこと」と題する記事を掲載した。
6月8日には、米国で保守派のコメンテーターを務めるローガン・オハンドリー氏が「NASA、人々を何か月もオフライン状態にする『インターネット黙示録』を警告」と題する記事をツイートした。同ツイートは約9,000回リツイートされ、約3万5,000の「いいね」がついている(2023年7月26日時点)。
さらに、6月25日に投稿された TikTok の動画内では、差し迫った「インターネットの黙示録」について NASA が警告したという内容の記事を複数紹介している。作成者は、「しかしこれは、彼らが誰にも気づかれずにグレート・リセットを静かに実行できることも意味します」と続けた。この動画には4万3,000ほどの「いいね」がついている(2023年7月26日時点)。
インターネット黙示録をもたらすのは、太陽嵐と呼ばれる、太陽から射出された高温プラズマが地球に降り注ぐ現象だ。その被害予測は甚大で、最も影響を被る都市は東京とも言われる。
果たして、彼らの主張は正しいのだろうか。そして、「このような嵐が現代のテクノロジーに与える影響は計り知れない」とも指摘されるが、人々がインターネットから遮断され、アナログ時代に戻るような “インターネット黙示録” は本当に近づいているのだろうか。
インターネット黙示録とは何か?
インターネット黙示録(Internet Apocalypse)とは、太陽嵐(後述)の影響によって、人々が数カ月、場合によっては数年もインターネットに接続できない状態に陥ることを指す。これは、カリフォルニア大学アーバイン校のサンギータ・アブドゥ・ジョティ(Sangeetha Abdu Jyothi)助教が2021年に公表した論文で用いた言葉だ(*1)。
日本の総務省は2022年、宇宙の天気が「最悪シナリオ」になった場合の被害予想を検討している。それによると、たとえば次のような被害が想定されている。
- テレビ放送の受信障害が全国の一部エリアで2週間にわたり断続的に発生する
- 船舶無線の使用が困難になり、遭難事故時の救助要請が難しくなる
- カーナビゲーションや自動運転、ドローンの位置精度が大幅に低下する
- 天気予報の精度が劣化する
- 全世界的に航空機の運航見合わせや減便が多発する
ジョティ助教によれば、実際に黙示録となるかは、太陽嵐が発生し地球に到達するまでの期間(通常なら1~3日かかるとされている)が勝負になる。ただ、一般人にできることはあまりなく、政府や企業頼みになるだろうと同助教は語る。
具体的な対応策としては、NASA や宇宙天気予報センター(SWPC)などが太陽嵐の発生を監視・予測・警告し、それを受けて電力網を一時的にダウンさせて変電所を保護したり、衛星を移動させたりすることが提案されている。
では、このインターネット黙示録をもたらす原因として指摘される、太陽嵐とは何なのだろうか。
(*1)ただし、論文のタイトルに使われただけで本文には登場しない。