Donald J. Trump(Whitehouse, Public domain) , Illustration by The HEADLINE

トランプ2.0で何が変わるのか?政治システム・経済・外交・テック・移民・社会問題

公開日 2024年11月11日 10:43,

更新日 2024年11月11日 10:43,

有料記事 / 政治 / アメリカ(北米)

この記事のまとめ
💡トランプ2.0で起きる変化とは?

⏩ トリプル・レッドを超える、政治システム全体の共和党化
⏩ 中国は関税強化を警戒も、なぜトランプの復帰を歓迎?
⏩ 日本経済・テクノロジー・移民・ジェンダー・環境問題への影響

2024年11月5日(現地時間)に投票がおこなわれたアメリカ大統領選挙で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が民主党候補のカマラ・ハリス副大統領を破り、第47代大統領に選出されることが確実となった(太字は筆者による、以下同様)

トランプは、19世紀後半のグロバー・クリーブランド(第22代、第24代大統領)以来、非連続で任期を務める2人目の大統領となる。

ただ、2期目のトランプ大統領(トランプ2.0)は、1期目とは異なる大統領になるとも言われている。トランプ2.0の世界では、各政策にどのような変化が訪れるのだろうか。

政治システム全体のトランプ化

前提として、トランプには1期目と大きく異なるポイントがある。それは、政治システムの全体的な保守化だ。米メディア・Vox のアンドリュー・プロコップによれば、それは「民主主義のガードレール」の破壊を意味している。

トランプは1期目の時、政敵の訴追など数多くの論争的な問題に取り組もうとしたが、そのほとんどは成果をあげなかった。それは、彼が他の機関や自身の補佐官、あるいは連邦政府の公務員たちによって制約を受けていたからだ。Vox のプロコップに言わせれば、民主主義の抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)が機能していたということだろう。

ただ、2期目は事情が異なる。すでに、ホワイトハウス・議会の上院・下院を共和党が占めるという状態(トリプル・レッド)については取り沙汰されているが、政治システムの実態はそれ以上の “レッド化” が進むと予測される。

公務員保護制度の弱体化

たとえば、あまり注目されていないが、トランプは連邦政府の公務員保護制度を弱体化させようとしている

1883年に制定された連邦法(ペンドルトン法)によれば、連邦公務員の雇用(解雇)に関する基本的な考え方は、特定の大統領や政党への忠誠心ではなく、職務に対する適性や能力、実績に基づいて選ばれるべき、というものだ。

これは同時に、公務員たちが、大統領や政治家の報復を恐れることなく職務を遂行できる保証を与えており、彼らを保護する制度でもある。実際、公務員は別の連邦法(ハッチ法)によって、ほとんどの政治活動に従事することを制限されている。

1期目の時点で、トランプは公務員保護制度の弱体化を狙う動きを見せていた。彼が2020年10月に発令した大統領令(スケジュールF)は、公務員の採用時に大統領への忠誠表明を奨励し、大統領に不忠実とみなされる公務員の保護を剥奪するものだった。

この大統領令は、翌月の選挙で勝利したバイデン大統領によって撤回された。しかし、バイデンが簡単に大統領令を撤回できたという事実は、トランプが簡単にそれを復活させられることを意味している。

そうした事態に反抗する公務員たちには大きく2つの選択肢がある。1つは、退職すること、もう1つは、司法の場で争うことだ。その場合にポイントとなるのは、裁判所の判事がどのような人々で構成されているかという点だろう。

連邦最高裁判所

連邦最高裁は現在、9人いる判事のうち、保守派が6名でリベラル派が3名という構成だ。

彼らは終身制で、自ら引退を決断する(か死亡する)まで職務を担うことが通例となっている。バイデン大統領は2024年7月、最高裁の「極端な意見」によって、彼らの判断に対する国民の信頼を損なっていると指摘、最高裁判事の終身制撤廃案を発表していた。トランプら共和党はバイデン案に反発しており、次期政権で改革がおこなわれる見込みは低い。

現在、3名いるリベラル派判事のうち最年長のソニア・ソトマイヨール判事は、70歳で1型糖尿病を患っている。


ソニア・ソトマイヨール判事(Supreme Court of the United States, Public domain

同判事が引退するかは不明だが、仮に引退した場合、後任の判事は大統領つまりトランプが指名する。そして、その指名が有効になるためには、議会上院で過半数の賛成を得る必要がある。

したがって、次のポイントは議会上院の趨勢だ。

議会

今回の大統領選挙と合わせて、議会選挙もおこなわれている。

11月5日夜までに、上院での共和党の勝利が確定した。下院については、本記事公開時点で決着が着いていないものの、共和党の勢いが民主党を上回っている

これを踏まえれば、最高裁判事の指名承認に必要な、上院の多数派は共和党が占めることが確定的だ。それはすなわち、連邦最高裁判所判事の保守化が少なくとも維持され、場合によっては強化されることを意味している。そしてこの展望は同時に、トランプによる公務員保護制度の弱体化に異議を唱える人々にとって、不利な状況になることを示唆している。

このように、トランプ2.0における政治システムは、トリプル・レッドをさらに超えた共和党色の強い構成になることが予測される。

以上を踏まえたうえで、具体的な政策レベルでは、どのような変化が訪れるのだろうか。

トランプ2.0で何が変わるのか

トランプが勝利した場合、どのような変化が訪れるかについては、大きく5つの視点から理解することができる。

  1. 経済
  2. 外交
  3. テクノロジー
  4. 移民
  5. イデオロギーと社会争点

1. 経済

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。
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