Appleがデフォルト検索エンジンを開発?:その背景は

公開日 2020年09月17日 13:14,

更新日 2020年09月17日 15:08,

有料記事 / 政治・国際関係

Appleが、デフォルト(標準)の検索エンジンをGoogleから自社製のものへ変更することを計画している可能性が高いとMacWorldが報じている

Appleがデフォルト検索エンジンをGoogleから自社製のものへ変更した場合に起きる影響は何か?そして、なぜこのニュースに注目する必要があるのだろうか。

Appleが検索エンジンをローンチするかもしれない理由

デジタルマーケティング分析企業CoyWolfの創設者のジョン・ヘンショー氏が、8月26日、Appleが独自の検索エンジンをリリースする可能性があるとの予想をして話題になった。彼によると、その見立ての根拠は主に次のとおりだ。

ひとつ目は、英国の規制当局の動きへの対応である。

今年7月のロイターの報道によれば、Googleは英国内にあるiOS、iPadOS、macOSのSafariのデフォルト検索エンジンとして設定されるために2019年に15億ドルを支払っており、この取引に対して英国競争・市場庁が目をつけている。規制当局はこの調査報告で、「プリインストールやデフォルトがモバイルデバイスに与える影響や、Appleの市場シェアの大きさを考えると、AppleとGoogleの取り決めにより、検索エンジン市場でGoogleと競合の間に参入と拡大への大きな障壁が生まれる」と述べた。

さらに規制当局は、Appleに対してデバイスのセットアップ時に他の検索エンジンも含めた選択画面を表示することを要求しており、対応しなければデフォルト検索エンジン枠の収益化を規制することも示唆している。EUでは米国のテックジャイアントに対して競争法(独立禁止法)違反などで巨額の制裁金を科すなど、データ保護を理由に規制を強める動きが見られる。今回の問題についても英国の公正取引委員会が規制の動きを見せれば、EUもそれに追随するおそれがある。これに対してAppleは何らかの対応を迫られており、その選択肢の中には独自検索エンジンのローンチも含まれる。

ふたつ目は、AppleのWebクローラーであるApplebotの挙動だ。

まず、今年の7月にAppleはApplebotのサポートページを大幅に更新した。以前のページと比較してみると、Applebotのサポートページに加えられた変更点は以下の通りだ。

・Applebotからのトラフィックを確認するための方法を具体的に追記
・デスクトップ版とモバイル版の違いなど、Applebotユーザーエージェントの詳細を具体的に記述
・robots.txtルールの拡張
・HTMLをクロールするだけでなく、(Googleと同じように)botがページをレンダリングすることを明記
・検索のランク付けと、Web検索結果のランク付けに影響する要素に関するセクションの追加

以前はApplebotの識別方法とrobots.txtへの指示の出し方という、ごく簡素な内容しか記載されていなかったことを考えると、今回の変更はWebのクロールに力を入れることを示唆する大きな変化である。

また、この更新の後からApplebotが定期的に自社サイトをクロール(巡回)し始めたとの報告もSEOコミュニティを中心に相次いでいる

以上のような状況を踏まえ、ヘンショー氏はAppleがまもなく検索エンジンをローンチする可能性があることを予想している。

Appleが検索エンジンをローンチした場合に想定される影響

検索エンジンがローンチされた場合に想定される影響を検討していこう。Appleの自社製検索エンジンについては、公式にリリースは発表されておらず、現時点では上記のようにあくまでもいくつかの兆候が見られているのみという点に留意する必要がある。しかし、後述するように、デバイスやブラウザなどのプラットフォームに標準で設定されるサービスの変更は、時には企業の命運を左右する大きなビジネスであり、このような予想を立てることも無駄ではないだろう。

まず、Appleがデフォルトの検索エンジンをGoogleに設定する見返りとして受け取っている金銭の取引が消滅することになる。調査企業バーンスタインのアナリスト、トニ・サッコナギ氏によると、Googleは見返りとしてAppleのデバイスから生まれる年間の広告売上250億ドルの30%にあたる、年間70〜80億ドルをAppleに支払っている。これはAppleの年間売上の数%にあたる額だ。

一方で、Appleが独自の検索エンジンを手に入れた場合、それは自社でiOS経由の検索を収益化できるチャンスが生まれることを意味する。たしかにAppleは検索税とも言えるGoogleからの収入を失うことになる。しかし、Appleが販売しているデバイス数の規模から考えて、少なくとも(Googleから受け取ってきた)年間70~80億ドル以上の広告売上を上げることはできるとサッコナギ氏は分析している。これはMicrosoft(Bing)の年間検索広告収入に匹敵する額だ。

第三者としては、特に世界中のサイト管理者がApplebotへの対応を迫られる可能性がある。世界のモバイルベンダー市場でAppleは約25%と一定のシェアを占めており、存在感を発揮しているからだ。また、Apple製検索エンジンの精度が十分でない場合、Bingなどのように検索スパムの対象になる懸念もある。そのため、検索エンジン直接の影響を受けやすいSEO業界を中心に、多くのサイト管理者が対応を余儀なくされるだろう。

Siriの強化が目的との指摘も

さらに、Appleの検索エンジン開発は一般的な検索エンジンとは異なり、SiriをAndroidのGoogleアシスタントのように強化する目的があるとの指摘もある。バーチャルアシスタントの課題として、さまざまな事象とその関係性についての知識を「ナレッジグラフ」と呼ばれる形式のデータベースでシステムに覚えさせることがあるが、Siriはこの点で競合各社に遅れを取っている。

例えば、2019年4月のStone Temple社による調査では、各バーチャルアシスタントへの5,000問の一般教養の質問に対する正答率が、Googleアシスタントでは91パーセントであったのに対し、Alexaは87パーセント、Siriは62パーセントにとどまった。Googleがこの種のテクノロジーで優位に立っているのは、検索エンジンの一部としてこのような機能を開発してきたからであるとされており、Appleが同様にバーチャルアシスタントによる検索のナレッジグラフ強化のためにApplebotの活動を活発化させている可能性も否定できない。

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著者
レポーター
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社マイナースタジオの立ち上げに参画後、同社を売却。その後、The HEADLINEの立ち上げに従事。関心領域は、政治思想や東南アジアの政治経済など。
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