BTSは、なぜ成功したのか?(1)K-POPの世界的注目

公開日 2020年11月27日 19:58,

更新日 2023年09月13日 19:50,

有料記事 / 経済

10月15日、K-POPを代表する人気グループBTSの所属事務所であるBigHitエンターテインメントが、韓国取引所に上場した。初日は株価が大幅上昇、時価総額が11兆ウォン(約1兆円)まで膨らんだ。

そして今月24日、第63回グラミー賞の候補として、BTSの楽曲「Dynamite」が最優秀ポップデュオ/グループパフォーマンス部門にノミネートされた。世界中で人気を集めるK-POPアーティストとして、初の快挙だ。

BTSは、いまから7年前の2013年にデビュー。パン・シヒョク最高経営責任者(CEO)が経営するBigHitは、大手事務所でもなく、彼らにとって初のボーイズグループだったにもかかわらず、BTSを世界的なグループへと成長させた。

いったい、なぜBTSとBigHitは大成功を収めることができたのだろうか?

なぜK-POPが世界で注目を集めているのか

そもそも、なぜいまK-POPが世界で注目を集めているのだろうか。BTSとBigHitの成功を語る上では、その理由を知る必要がある。

K-POPは、すでに主流な音楽ジャンルの一つだ。BLACKPINKは昨年のコーチェラでラインナップの2列目に抜擢され、今年もLady GagaやSelena Gomez,、Cardi Bとのコラボ楽曲を立て続けに発表した。SuperMのデビューアルバムは、昨年「ビルボード200」チャートにおいて1位を獲得した。アジアのアーティストが「ビルボード200」で1位を獲得するのはBTSに続いて2組目であり、デビューアルバムでの1位獲得は初となった。

その他にも、TWICEやITZY、GOT7、EXO、NCT 127、Red Velvetなど、新旧のアイドルグループは世界中にファンを擁し、各国のチャートアクションやツアーなどで存在感を見せている。BTSの圧倒的な活躍も、このように韓国の音楽産業界が躍進を遂げる中で達成されたものである。

K-POPはどのようにして世界的産業に成長したのだろうか?それを知るには、韓国の芸能界が確立したK-POPの方程式を、コンテンツとデリバリーの両側面から紐解くと分かりやすい。 まず、コンテンツ面では次のような特徴がある。

キャッチーなサウンド

楽曲に関しては、実験的ながらも欧米のポップソングのようなキャッチーなサウンドが一番の特徴と言える。

K-POPの楽曲には、スウェーデン人やアメリカ人ら外国人作曲家の手によるものが多く、欧米の音楽シーンと同時代性のあるサウンドを取り入れている。例えば、スウェーデンのプロデューサーユニット・Caesar & Louiは、TWICE、少女時代、Red Velvetの作品に参加し、特にRed Velvetの「Red Flavor」は、2017年のK-POP最大ヒット曲の一つとなった。(この楽曲は、当初英国のガールズグループLittle Mixに提供される予定だった)

ただし最近では、韓国人プロデューサーの存在感も大きくなっている。BTSの「Fake Love」や「DNA」を手掛けたPdogg、「Euphoria」や「Spring Day」のADORA、元々はBigHitの練習生で現在は制作を中心とするSupreme Boiなど、BigHitの成長を支えてきたのは、韓国人クリエイターだった。

また、BTSやSEVENTEENのように自ら楽曲制作に携わるアーティストはもちろん、他グループに楽曲提供するアーティストもいる。Wanna Oneのデビュー曲を手掛けたPENTAGONのフイ、Block BのZicoなどは、アイドル出身のプロデューサーとして知られる。

他にも、ヒップホップ・シーンからは、若い世代のクリエイターの台頭が著しい。そのシグネチャーサウンドが印象的な2人組のGroovy Room、自らもラッパーとして活躍するSik-K、DPR Liveなどは、K-POPアーティストに楽曲を提供したり、コラボレーションをおこなっている。彼らの存在は、単にポピュラー音楽にとどまらず、ヒップホップやR&B、アーバンなど幅広いジャンルから影響を受け続けるK-POPの根幹を支えている。

実際、K-POPの特徴的な要素として知られるのは、1曲の中に複数のジャンルが入れ替わり立ち替わり現れる、大胆な曲の展開だ。例えば少女時代の「I Got a Boy」では、Hip-Hop、Pop Rock、EDMなど、ジャンルからジャンルへの転調が9回以上起きる。

このように、多くの楽曲でジャンルのマッシュアップが駆使されており、アメリカの平均的な楽曲は、メロディーを4-5つ程度使用しているのに対して、K-POPの曲では平均で8つのメロディーが使われているという指摘もある。ポップソングでありながらラップのヴァースが含まれていることも珍しくない。

繰り返されるフレーズ、忘れられないフック、そして印象に残るシグネチャーサウンドなど、K-POPを特徴づける要素は多数あるが、そのサウンドはすでに1つのジャンルとして確立されている。

視覚的要素

ビジュアルアートのようなミュージックビデオや、ダンスパフォーマンスといった視覚的要素も、K-POPの強烈なシグネチャーだ。どのレーベルもミュージックビデオの制作には力を入れており、曲ごとに振り付けや衣装・メイクのみならず、セットや小道具までを一つのコンセプトで統一して完璧なコンテンツを作り上げる。

イースターエッグ(ファンへのメッセージや他のポップカルチャーの参照など、作品に隠された仕掛け)が仕込まれていることも多く、ファンはそれを画像やGIFや動画に編集してシェアする。芸術性がありながらファン心理にも巧みにアプローチする技もK-POPの特徴だ。

K-POPの中でもBTSは特に、MVで描かれる壮大なストーリーと繊細なモチーフで知られる。ファンにとっては新曲がリリースされた際に、その意味やメッセージを読み解くことが1つの楽しみとなっている。

才能あふれるアーティストと育成システム

アーティスト自身の才能という要素も避けては通れない。アイドルをプロデュースする各芸能事務所では、才能あるアーティストを選抜・育成・マネジメントするシステムが確立されている。

基本的にはスカウトやオーディションで人材を集め、歌・踊り・語学・演技のトレーニングをし、選抜されたメンバーでグループを結成、その後デビューをすることとなる。この過程には数年かかることもあり、練習中からデビュー数年後までは事務所が所有する宿舎で共同生活をすることが多い。

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BTSは、なぜ成功したのか?

✍🏻 著者
シニア・エディター
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社マイナースタジオの立ち上げに参画し、同社を売却。その後、The HEADLINEの立ち上げに従事。関心領域はテックと倫理、政治思想、東南アジアの政治経済。
編集長 / 早稲田大学招聘講師
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。日テレ系『DayDay.』火曜日コメンテーターの他、『スッキリ』(月曜日)、Abema TV『ABEMAヒルズ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジアなど。
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