なぜ政府は節電を呼びかけているのか?電力使用制限令や需給ひっ迫警報とは

公開日 2022年06月08日 22:49,

更新日 2022年06月08日 23:45,

有料記事 / 社会

政府は7日、7年ぶりに全国規模の節電協力要請をおこなうことを決定した。今夏および今冬が対象となり、特に厳しいエネルギー需給が予想される冬には、数値目標の設定や電力使用制限令の発出、万が一に備えた計画停電の準備なども検討されている。

政府は、2011年の東日本大震災から2015年までの毎年、夏冬の需要期に節電要請をおこなってきたが、太陽光発電の普及や一部原発の再稼働によって供給が増えたことから、それ以降は要請がされていなかった。

では、なぜ再び節電要請がされているのだろうか?具体的には何に気をつければ良いのだろうか?

節電要請の背景

節電要請の背景には、4つの要因によって電力需給が不透明になっていることが挙げられる。

1. 老朽火力発電所の休廃止

まず電力供給の不足として挙げられるのは、老朽火力発電所の休廃止だ。近年、電力自由化の進展や脱炭素、コスト構造などを背景として、火力発電の休廃止は増加傾向にある。2016年度からの5年間で、休止状態の火力発電は増加しており、毎年度200-400万kW程度の火力発電が廃止となっている状況だ。

たとえば今年3月、東京電力ホールディングス(HD)と中部電力が出資するJERAは、同社が保有する9基の火力発電所(*1)廃止している。いずれも長期計画停止中の発電所であるため、即時に影響があるわけではないが、火力発電所の減少を象徴する出来事だ。

そもそも火力発電については、日本のエネルギー政策を定義する『第6次エネルギー基本計画案』においても、脱炭素を踏まえて「できる限り電源構成に占める火力発電比率を引き下げる」や「非効率な火力のフェードアウトに着実に取り組む」と言及されている。代わって進められているのが再生可能エネルギーの比率向上だが、太陽光発電は悪天候時や午後5-8時にかけて発電量が減ってしまうため、依然として火力発電の役割は重要となっている。

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世界的にカーボンニュートラルに向けた過渡期にある中、火力発電所のあり方は変化しており、こうした状況がエネルギー供給量の不安定化が生させている。

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(*1)東京都・大井火力1-3号機、横浜火力5-6号機、愛知県・知多火力(愛知県知多市)1-4号機の計9基。

2. 今年3月の福島県沖地震の影響

また今年3月に福島県沖で発生した地震によって、福島県・原町⽕⼒発電所や仙台⽕⼒発電所など近隣の火力発電所が被害を受けたことも、短期的な電力供給を厳しくさせている。

この地震では、新仙台火力発電所1号機・2号機、原町火力発電所1号機が停止したが、いずれも現在までに運転再開に至った。ただし、当時点検中だった仙台火力発電所4号機と原町火力発電所2号機については、補修のため停止期間が延長されており、復旧予定は7月となっている。

日本の火力発電所は全体的に老朽化しており、相対的な故障リスクが高いとされる。老朽火力発電所の休廃止と地震の影響は、不可分の問題だと言える。

3. コロナによる社会経済構造の変化

コロナ禍によってライフスタイルやワークスタイルが変化したこと、具体的にはテレワークによる働く場所の多様化やデジタル化による電力需要の高まりなどで、気候以外の需要変動が予測困難になったこと挙げられる

たとえば家庭用電力需要について、コロナ前と比べて2020年3月から翌年2月までの需要が、世帯あたり約150kWh(約4%)増加したという指摘がある。

また今年3月に需給ひっ迫警報(後述)が発令された際は、まん延防止等重点措置の解除とも重なっており、電力需要の予想が難しくなっていた。今夏についても、停滞していた経済活動の再開による電力需要の高まりで、同様の事態が生じている側面がある。

4. ウクライナ情勢

またロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー供給が国際的に不安定化していることも背景にある。

欧州連合(EU)は、今月2日にロシア産石油の輸入禁止などロシアへの追加制裁を決定しており、エネルギーの脱ロシア依存を加速させている。石油の 34% をロシアに依存するドイツや、石炭の 56% を依存するイタリアなどEU諸国にとって、脱ロシア依存はエネルギー政策の大転換を意味する。こうした政策転換は中長期に渡って進められる予定だが、短期的には各国におけるエネルギー供給は不安定化している。

日本は、石油(4%)天然ガス(9%)石炭(11%)ともにロシアへの依存度は低いものの、そもそも一次エネルギー自給率が低いため、国際的な不安定化の影響を受けやすい。日本の同自給率は 11% にとどまり、米国(106%)や英国(75%)、ドイツ(35%)、イタリア(25%)などG7諸国の中で最も低い数字となっている。

エネルギーの調達リスクの顕在化は、今夏および今冬の電力供給の不透明性を高めている。

電力不足の対策、講じられていた?

こうした短期的な背景があるとはいえ、2011年の東日本大震災以降、日本は断続的な電力不足に陥ってきた。前述した太陽光発電のリスクなどが予め分かっていた中で、国や事業者らは十分な対策を講じてきたのだろうか?

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著者
編集長
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。日テレ系『スッキリ』月曜日コメンテーターの他、Abema TV『ABEMAヒルズ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説をおこなう。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジア、テクノロジー時代の倫理と政治など。わかりやすいニュース解説者として好評。
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