EVは、本当に環境にやさしいのか?ライフサイクルアセスメント、エネルギーの脱炭素、レアメタルなど各種論点も

公開日 2022年08月23日 19:10,

更新日 2022年09月15日 11:10,

有料記事 / 脱炭素

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  • 自動車の使用によるCO2排出量は、電気自動車(EV)が最も少ない。
  • ただし、EVの製造段階では多くのCO2が排出。そのため走行距離の短い使用では、ガソリン車の方が環境負荷の少ない場合も。
  • EVの普及により、交通部門からのCO2排出量は減少。しかしエネルギー部門が脱炭素化しなければ、社会全体では逆にCO2の増加リスクも。
  • またEVバッテリーに必要なレアメタル採掘は、環境負荷が大きい。
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2021年1月、国会の施政方針演説で菅義偉首相(当時)は、脱炭素社会の実現に向けて「2035年までに新車販売で電動車100%」を目指す方針を表明した。同年6月には、トラックなどの商用車の新車販売でも、2040年までに100%電動車を目指す方針が政府から発表された

こうした政府による電気自動車(EV(*1))推進の機運は、自動車メーカーの戦略にも影響を与えている。トヨタ自動車は、2030年までにEVの年間販売台数を350万台とする目標を打ち出した。350万台は、同社の年間販売台数の約1/3に相当する規模だ。また2022年に入ってからは、EVの販売台数世界2位の中国メーカー・BYDの日本進出も発表された

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脱炭素社会を実現するための重要な要素として注目されるEVだが、インターネット上では「電気自動車は本当にエコか」というように、「EV=環境にやさしい」というイメージそのものが疑問視されることも多い。結局のところ、EVは本当に環境にやさしいのだろうか?

(*1)EVという用語は通常、エンジンを搭載せずに電気のみで走行するバッテリ式電気自動車(BEV)を指す。この他、EVには電気とエンジンの両方を動力源とするハイブリッド式やプラグイン式などもあるが、本記事では特に注記のない限り、BEVを意味する語として「EV」を使用する。

「EVは環境にやさしい」が意味するところとは?

EVが環境にやさしいのかどうかを検証する前に、そもそも「EVは環境にやさしい」という言説は、一体何を意味しているのだろうか。

本記事では「EVは環境にやさしい」という言説が、大きく2つの問いに分けられると定義する。

1つは「EVは環境にやさしい車なのか?」という問いだ。これは一般的なガソリン車やディーゼル車1台と比較して、EV1台あたりで発生する環境負荷が少ないのかどうかに注目した見方である。

他方、「EVの普及が脱炭素社会を実現するためにどれだけ有効なのか?」という問いも重要だ。これはEVが社会に広く普及した場合に、果たして社会全体での環境負荷が減るのかどうかに注目した見方である。

これら2つの問いは、前者がミクロな視点、後者はマクロな視点に立った問いとして整理できる。本記事では、ミクロとマクロの双方の視点から、EVが環境にやさしいのかどうかを検証したい。

EVは環境にやさしい車なのか?

1台の自動車としてEVが環境にやさしいかどうかを議論する上では、ライフサイクルアセスメント(LCA)という手法で測定された環境負荷の値が参照すべき簡便な指標となる。LCAとは、生産、使用、処理までの「製品の一生(ライフサイクル)」で発生する温室効果ガスの排出量を包括的に測定したものだ。

つまり、自動車の場合、部品や自動車本体の生産、走行、リサイクルなどの廃棄処理までを含めた温室効果ガスの排出量が算出される。ここからは各自動車メーカーのEVのLCAを具体的に比較してみよう。

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著者
北海道大学大学院修士課程
研究対象はEUおよび英国の食料・農業政策。一橋大学法学部卒。多摩大学ルール形成戦略研究所 客員研究員。
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