SUV in Austin, United States(Krish Parmar, Unsplash) , Illustration by The HEADLINE

なぜ日系自動車メーカーは中国市場で売上を減らしたのか?加速する中国のEVシフト

公開日 2023年04月25日 19:48,

更新日 2023年09月14日 14:05,

有料記事 / アジア / ビジネス

この記事のまとめ
💡日系自動車メーカー、22年は中国市場で大苦戦、その理由は?

1️⃣ 中国の自動車業界全体が、ゼロコロナ政策で低迷
2️⃣ ただし、その間もEV市場は急成長
3️⃣ ガソリン車に強みを持つ日系メーカーは低迷へ

背景にある中国の産業政策、国家戦略と合わせて解説します。

日系自動車メーカーが、中国市場で苦戦を強いられている。2022年、大手3社(トヨタ、日産、ホンダ)の中国市場での自動車販売台数はいずれも前年比マイナスとなった。

中国は世界最大の自動車市場を有し、各社にとって最も重要なマーケットの1つだ。その中国市場での業績低迷は、メーカーのみならず、自動車産業を屋台骨とする日本経済にとっても見逃せない。

背景には、中国で加速する電気自動車などへのシフトに各社が追いついていないことがある。世界的に自動車業界の重心が電気自動車(EV)にシフトするなかで、日系各社はEV市場で遅れをとっている。2022年の世界におけるEVの売上順位では、日産・三菱・ルノーの3社連合が7位に入ったものの、ホンダは26位、トヨタは27位と日系メーカーの順位の低さが目立つ。

2022年の中国市場はゼロコロナ政策の影響を受けて厳しい市場環境となっており、それゆえにEVシフトへの「対応力」が各社の明暗を分けることになった。

では、なぜ中国市場でEVなどへのシフトが加速しているのか。そして、今後の見通しは一体どのようなものなのか。

2022年の中国自動車市場

日系各社による苦戦の原因を探る前に、2022年の中国自動車市場の概要を確認しておこう。

2022年、中国での自動車販売台数は約2,686万台で、前年比2.1%の増加となった。

急増する新エネルギー車

なかでも目を引くのは「新エネルギー自動車」(以下、新エネルギー車)と呼ばれる分野の好調さだ。新エネルギー車とは、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の総称で、一般的なハイブリッド車(HV)はここに含まれない。

2022年の新エネルギー車の販売台数は約689万台(自動車販売台数全体の25%)で、前年比93%増という記録的な伸び率を記録した。なかでも、売上台数が多かったのはEVで、約537万台が販売された

中国メーカーの好調、日系メーカーの苦戦

メーカーの国別シェアに目を移すと、中国メーカーによる市場シェアの増加が目立つ。中国メーカー(外資との合弁会社を除く)による2022年の自動車販売台数は前年比22.8%増で、国内乗用車市場における中国メーカーのシェアは約50%に達した。

一方、日系自動車メーカーの中国市場での自動車販売台数はいずれも減少したトヨタは前年比0.2%減の約194万台で、2012年以来、10年ぶりのマイナス成長となった。ホンダは前年比12.1%減の137万台で2年連続のマイナスを記録。日産も前年比22.1%減の105万台で4年連続のマイナスとなった。

ここからも、近年の中国メーカーの成長と日系メーカーの不振が見て取れる

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
北海道大学大学院農学院博士後期課程。専門は農業政策の決定過程。一橋大学法学部卒。
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