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イスラエル・ハマス戦争は、現地のスタートアップにどのような影響を与えているのか?

公開日 2023年10月16日 20:35,

更新日 2023年10月16日 20:35,

有料記事 / スタートアップ

この記事のまとめ
💡イスラエル・ハマス戦争、現地のスタートアップにどんな変化?

⏩ 昨年から資金調達状況が悪化
⏩ 逆風の背景には世界情勢の変化と司法制度改革による不確実性
⏩ 戦争はさらに不確実性高めるものの、長期的にはプラスという見方も
⏩ パレスチナの業界には厳しい状況

2023年10月7日(現地時間)、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が、イスラエルに対して、かつてない規模の攻撃を開始した。翌日には、イスラエル側が宣戦布告をおこない、報復攻撃を始めたことで戦闘は激化している。

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世界でも屈指のスタートアップ大国とされるイスラエルだが、同国のスタートアップ従業員の10%から30%が戦闘に駆り出されているという。戦争がスタートアップの環境に大きな影響を与えることは間違いないが、同国では昨年来、すでに資金調達環境に変化が生じていた

現在、イスラエルのスタートアップを取り囲む状況はどうなっており、今回の戦争はどのような影響を与えるのだろうか。そして、パレスチナには何をもたらすのだろうか。

テック産業が主翼のイスラエル

前提として、テクノロジー産業は、イスラエル経済の主翼を担う存在だ。Intel や Microsoft、Google など世界のテック大手がイスラエルで事業を展開している。また、スタートアップの創出において、イスラエル国防軍の役割は重要とされ、Checkpoint Technologies などのサイバーセキュリティ分野における著名なスタートアップを生み出していることも特徴だ。

Microsoft イスラエル R&D センター
Microsoft イスラエル R&D センター
Amit Geron, CC BY-SA 4.0

イスラエル・イノベーション庁によれば、2022年、テクノロジー産業は同国における GDP(国内総生産)の約18%を占めており、単一セクターとしては最大の産業となっている。また、テック産業に従事する給与所得者の数は50万8,400人と、全給与所得者の約14%を占める

そして、9,000社以上のスタートアップ企業が集積して世界3位のエコシステムを築いているという。同国の2013年から2022年にかけての総資金調達額は950億ドル(約14兆円)にのぼり、これは世界6位に位置している。

とはいえ、イスラエルのスタートアップは昨年から厳しい戦いを強いられていた。

昨年来の苦戦とその背景

2022年、イスラエルのスタートアップへの投資総額は、合計で前年比ほぼ半分の159億ドル(約2兆円)に減少した。また、2023年第1四半期におけるハイテク産業の資金調達額は、前年同期比70%減の約17億ドル(約2,500億円)と、過去4年で最低の数字を記録している。

苦戦には大きく2つの要因があり、世界的な情勢の変化と、今年に入ってから進んだイスラエル国内の政情不安だ。

第1に、ロシアによるウクライナ侵攻や、シリコンバレー銀行(SVB)の破綻をはじめとした金融市場の不安定化、インフレへの懸念など世界情勢の影響が大きい。

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この点について、イスラエル・イノベーション庁のドロール・ビン(Dror Bin)CEO は、次のように指摘していた。

世界的なマクロ経済の減速、欧州での戦争、中国と米国の間の緊張、インフレと金利環境、これらすべてが過去18カ月で劇的に変化し、その結果ベンチャーファンドへの投資が激減しました。

これだけ不確実性が高いと、投資家はリスクの高いスタートアップよりも、安全な場所へ資金を預ける傾向にあり、世界中のテクノロジーハブでこうした退潮が見られます。

ただ北米の場合、スタートアップへの投資は、イスラエルと同じく2022年に急激な減少トレンドに入ったものの、2023年に入って横ばいトレンドへシフトし始めた。

それにもかかわらず、イスラエルだけが逆風にさらされ続けている。今年7月時点で、投資家の65%が米国の VC 市場にすでに回復の兆しを感じているか、今後6か月以内に回復の兆しが見られると信じているのに対して、イスラエルについて同じ回答をした投資家はわずか12%だった

このようなイスラエル市場への悲観的な見方の背景には、同国固有の事情が関係している。

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。
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