⏩ 半導体不足を背景に、政府主導で工場誘致
⏩ 一方、すでに半導体不足は解消したとの見方も
⏩ それでも半導体工場が国内に新設される意義とは?
2023年9月、国土交通省が2023年7月1日時点での全国の地価調査の結果を公表した。
これによると、前年調査からの地価上昇率が大きかった地点のトップ5は以下の通りとなり、熊本県菊池郡大津町と北海道千歳市が独占する形となった。
1位 熊本県菊池郡大津町大字室門出176-4(32.4%↑)
2位 熊本県菊池郡大津町大字室字狐平1576-1(31.1%↑)
3位 北海道千歳市北栄2-1345-27(30.8%↑)
4位 北海道千歳市栄町5-3(30.7%↑)
5位 北海道千歳市東雲町5-52(30.5%↑)
この両市町の地価上昇の背景には、同じ要因の影響がある。半導体工場の建設だ。
熊本県菊池郡では、大津町と隣接する菊陽町に、台湾の半導体メーカー・TSMCと、日本のソニー、デンソーが共同出資する合弁会社 Japan Advanced Semiconductor Manufacturing 株式会社(通称:JASM)が大規模な半導体工場の建設を進めている。一方、北海道千歳市では、トヨタ自動車やNECなどの国内企業8社の共同出資で設立された「Rapidus株式会社」(通称:ラピダス)が半導体工場の建設に着手している。
半導体をめぐっては、コロナ禍を契機とする急激な需要増加などにともない、2020年頃から深刻な半導体不足が世界を直撃した。とりわけ、日本企業は半導体生産の多くを海外に依存しており、いわゆる「産業のコメ」である半導体が確保できない事態は、経済安全保障の観点からも深刻な問題となった。
こうして半導体不足が深刻になるなか、日本国内では半導体生産拠点を新設する動きが加速した。2021年10月には、半導体受託生産の世界最大手である台湾のTSMCが日本に新たな生産拠点を設置することを発表。さらに、2022年11月には政府が主導する形で国内企業が共同出資するラピダスの設立も発表された。
国内での半導体生産の行方に注目が集まるなか、それらの工場の“お膝元”では、従業員住宅や関連工場用地などの需要を背景に地価が大きく上昇している。そして、一部メディアはこうした現象を「半導体バブル」と呼び、大きく報道している。
一方、半導体市場の状況をみると「すでに半導体不足は峠を越えた」との見方が広がっており、市場統計などのデータからも、その傾向がうかがえる。
では、半導体不足は本当に解消されたのか。そして、もし解消されたのであれば、熊本や北海道で建設が進む半導体工場は本当に必要なのだろうか。
半導体不足は解消したのか
まず確認するべきは「本当に半導体不足は解消したのか」ということだ。