ウイグル強制労働との関与指摘の中国企業、日本の大企業も取引先に

政治・国際関係

公開日 2020/07/23 03:14,

更新日 2020/07/23 03:31

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7月20日、香港を拠点とする世界最大の織物シャツメーカーであるエスケル・グループ(溢達集團)の子会社である昌吉・エスケル・テキスタイル(Changji Esquel Textile)社が、米・商務省によってエンティティリスト(Entity List)に追加された。

著名アパレルブランドのHugo BossやTommy Hilfiger、Ralph Lauren、Brooks Brothersなどが同社から製品を輸入していることが報じられており、新疆ウイグルでの人権侵害に注目が集まる中で、問題の余波は各国に拡がっている。

また本誌は、エスケル・グループの日本支社であるエスケル・ジャパン・リミテッド株式会社が、無印良品やジャスコなど日本の大手企業とも過去に取引を持っていたことを明らかにした。

エスケル・グループ(溢達集團)とは

エスケル・グループは、香港の起業家である楊元龍(ヤン・ユアン)によって1978年に設立され、現在は長女のヤン・マージョリーが会長を努めている。

彼女はMITで学位をとった後に、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得、世界最大のメガバンクの1つであるHSBCの社外取締役や香港理工大学の評議会メンバー、全中国産業商業連合会の委員を務めるなど、香港財界を代表する人物である。

マージョリーが会長に就任した1995年、エスケル社は新疆ウイグル自治区で工場を設立、重要な生産拠点として拡大をはじめた。マレーシアやベトナムなどアジア各地にも拠点があり、現在では5万人以上の従業員を有する国際的な企業となっている。

エスケル・グループの子会社である昌吉・エスケル・テキスタイル社が商務省によって追加されたエンティティリストは、米国製品の輸出に際して確認が必要となったり、制限を課されるリストであり、エスケル・グループとの取引が直ちに全面的に禁止されるわけではない。本リストは、指定された外国企業が米国の技術にアクセスできないようにすることが目的であり、エスケル・グループのように米国への輸出をおこなっている企業にとって、直接的な制限は課せられていない。

しかし、新疆ウイグル自治区で強制労働や人権侵害への疑念が拡がっている中で、国際的なブランドが政府のリストに載っている企業と取引を続ける可能性は低い」と指摘されている。現在、こうした企業は同社との取引について声明を出していないが、何らかの対応が求められるだろう。 アパレルブランドに限らず、Apple社などのグローバル企業は、自社のサプライチェーンにおいてウイグル人の強制労働が存在している疑惑が浮上する中で、対応を余儀なくされている。こうした企業の中には、日本のパナソニック、シャープ、SONYなど日本企業も含まれている。

日本法人、日本の大手企業との取引

この問題は、日本とも無関係ではない。エスケル・グループの日本法人は、エスケル・ジャパン・リミテッド株式会社であり、同社は日本の大手企業と取引をおこなっている。

同社の登記簿情報によれば、日本法人の設立は2002年8月5日。東京都渋谷区猿楽町に本社を置いており、代表はジョン・アラン・カールソンとなっている。エスケル・グループのCEOであるジョン・チェも取締役として名前を連ねている。

同社が2014年11月20日から12月17日まで掲載していた転職サイト(キャッシュ)によれば取引先として下記の企業名が上げられている。

  • 株式会社良品計画(無印)
  • NIKE
  • ABERCROMBIE & FITCH KOHL’S
  • ANTA
  • LACOSTE
  • 株式会社AOKIホールディングス
  • FRED PERRY
  • HUGO BOSS
  • 株式会社 イトーヨーカ堂
  • 株式会社しまむら

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著者
The HEADLINE編集長。株式会社マイナースタジオを創業後、2015年に株式会社メンバーズ(東証一部)に企業売却。早稲田大学政治学研究科修士課程修了(政治学)。関心領域は、メディア論や政治思想など。Twitter : @ishiken_bot
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