Coinbase、仮想通貨取引所として初の上場。注目ポイントは?

公開日 2021/04/18 19:00,

更新日 2021/04/18 19:00

有料記事 / テクノロジー

  • 目次
  • Coinbaseの基本情報、仮想通貨取引所としての特徴
  • ビジネスの特徴、S-1の記載
  • バリュエーションの考え方、投資家の見方 有料
  • 仮想通貨市場への影響、今後のCoinbase 有料

2021年4月14日、仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)が米NASDAQに上場した。初値ベースで時価総額760億ドル(8.3兆円程度)となり、過去最大級のダイレクトリスティング(Direct Listing、直接上場)としても注目される。

仮想通貨は、2008年に匿名の開発者サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)が考案したブロックチェーン技術に基づき、「お金」「金融」を進化させうる大きな可能性を持つ分野だ。一方、マネーロンダリングに悪用される懸念や過去の大規模ハッキング事件の報道から、アンダーグラウンドな印象がどうしても拭えなかった。しかしこれを機会に、1つの産業としてクリーンに成長していく道筋ができたのではないか

日本のブロックチェーン、仮想通貨の企業で働く個人としてもエポックメイキングとなる出来事だったと考え、いくつか注目ポイントを解説していく。

Coinbaseの基本情報、仮想通貨取引所としての特徴

Coinbaseは、2012年に米国で設立された仮想通貨取引所の運営企業で、今回開示されたKPI(Key Performance Indicator)、主要財務諸表は以下の通りだ。


出典: Coinbase S-1、プレスリリースより筆者作成

ユーザー数(MTUはMonthly Trade User、月次取引ユーザー)、預かり資産、取引高ともに2020年後半からの伸びが顕著で、特に2021年に入ってから大きく延びている。2021年3月末には、預かり資産2230億ドル(24.5兆円程度)のうち50%超が機関投資家のアセットとなっている。

日本の自主規制機関JVCEAの開示によると、日本における仮想通貨取引所の利用者口座数は2月末時点で363万件、預かり資産が1.3兆円となり、ユーザー数で15倍*、預かり資産で17倍の規模になる。(* CoinbaseのVerified UsersはKYCが終わっていないユーザーも含み、JVCEAの開示数値はKYC済みのユーザーのみなので単純比較は適切ではない。)

業界11位の取引所

ではCoinbaseは「世界最大の仮想通貨取引所」かというと、実は異なる。

仮想通貨情報サイトCoinhillsによる直近24時間の取引高ランキングを見ると、2021年4月17日時点での上位5位は以下の顔ぶれで、Coinbaseは11位となる。 Coinbaseは、業界において非常に堅実・保守的な取引所という印象だ


source: Coinhills

以下のような事業は、現時点で米国の規制によって禁止もしくはグレーな取り扱い(明確にルールが決まっていない)となっている。

  1. 自社トークン発行
  2. 仮想通貨のレバレッジ取引(これが取引高が増える要因)
  3. 疑似株式トークンの取り扱い

これらは見込まれる収益が大きい事業であるものの、Coinbaseは厳格に規制に従うことで、いずれの事業も展開していない。

取り扱い仮想通貨も、上位5社に比べるとCoinhills記載上では54種類と少ない(1位のBinanceは339種類)。また米国で仮想通貨交換業を営むライセンスを必要州で取得しており、規制対応に相当のコストをかけていることも、高い販管費の要因であると推察される。

今後の成長戦略についても、具体的な施策は効率的なデジタルマーケティングによって個人を増やす、法人営業の強化など非常に堅実な展望だ。

ビジネスの特徴、S-1の記載

Coinbaseの収益の90%近くが「TransactionFee」、すなわち取引手数料など取引に対するものとなっている。これ以外の、同社が「Subscription and Service」とカテゴライズしているビジネスであるPay、Save、Stake、Borrow&Lendなどの収益貢献は10%程度だ。

ブライアン・アームストロングCEOは「Subscription」セグメントを伸ばしていきたいと語るが、まだ十分な結果は出ていない。


出典:Coinbase S-1

ボラティリティ依存のビジネスモデル

開示書類では、同社のビジネスモデルが取引手数料依存であり、その手数料を規定する取引量は、仮想通貨価格などマーケットのボラティリティ(変動の幅)に依存するビジネスモデルだと強調される。

以下は、S-1(目論見書)に掲載されている月間取引ユーザー数と仮想通貨のボラティリティを示したチャートだ。ボラティリティが低くなると取引ユーザー数が下がる傾向(取引ユーザー数が下がる→取引高が下がる→彼らの収益の90%を占める取引手数料が下がる)にあることがわかる。


出典:Coinbase S-1

また、2021年1-3月の業績は前述の通り非常に好調だったものの、Crypto Asset Price Cycle(仮想通貨の価格サイクル)の存在を説明した上で、業績にもシナリオがあることを説明している。

2021年の予測について、MTUベースで最も良いシナリオが700万人、中間シナリオが550万人、最も悪いシナリオが400万人と仮定している。2021年第1四半期のMTUは650万人であり、中間シナリオでも現状の数字が続かないと考えていることが分かる。


出典:Coinbase S-1

リスクファクターや今後の損失も

また、S-1のリスクファクターも60ページにわたり、ビジネスリスク(ボラティリティが高い・仮想通貨の価格自体が下がることで収入は減る・BTCとETHからの収入が大半・競争が激しい等々)の詳細を明示し、かつ、サイバー攻撃・当局規制・AML(トラベルルール対応コスト増のおそれ、EUの今後規制強化もリスクとして具体的に明示)・秘密鍵・システム障害等種々のリスクが延々と書かれている。

S-1の最初のセクションにある「Letter from CEO」にも「仮想通貨の価格サイクルがあるので、今後損失を計上することもあるだろう。投資家にはプライスサイクルに惑わされず長期で自分たちのビジョンを見てほしい」と記載されている。

彼らが目指す、仮想通貨で「Economic Freedom」を実現する企業になるにはまだまだ時間がかかる、それまでの収益のボラティリティは必ず存在する、ということが執拗に書かれており、株式上場の開示書類としては妥当な記載であるものの、Coinbase社の誠実で堅実な社風が伺えると個人的に思えた。

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著者
株式会社bitFlyer Blockchain取締役、株式会社bitFlyerトレジャリー部長。米系投資銀行資本市場本部でデリバティブ、CB案件のストラクチャリング、執行に10年間従事した後2016年からbitFlyerでコーポレート業務等を担当。一橋大学経済学部卒。
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