クリエイターエコノミーとは何か?(2)多様な収益化モデルと活発な動向

公開日 2021年06月17日 22:44,

更新日 2021年07月11日 16:20,

有料記事 / テクノロジー

-(1)より続く

前回見てきたように、クリエイターエコノミーには多様なバリューチェーンがあり、「未来の仕事(the Future of Work)」としての経済圏が整備され始めている。中でもポイントは、クリエイターにとって収益化の手段が多様化していることだ。

アテンションエコノミーにおいて、大衆からの注目・関心を集めて広告収益を伸ばすことだけに腐心していたクリエイターたちは、今や多様な手段でマネタイズに成功しつつある。

クリエイターの収益化手段

Voxによる下記チャートでわかるように、The New York Times 紙は広告売上からサブスクリプション(以下サブスク)売上にシフトすることで「自らを救済した」。同紙が、2010年から変わらず広告1本足のビジネスを展開していたら、今頃身売りは避けられなかっただろう。


NYT紙の売上比率(Vox

広告からサブスクへという流れは、大手報道機関の間で急速に進んでいるが、クリエイターでも同様だ。たとえばOnly Fansのクリエイターであるジャスミン・ライス氏は、サブスクを始めた動機を以下のように語っている。

スポンサードコンテンツをツイートすることで、収益を稼いだことはありませんでしたが、ブランドが25ドルを支払うことは分かっていました。ある時、これは「私のフィードを貸し出している」のだと気付きました。「自分が誰か」ではなく、「コンテンツの配布」に対して支払いを受けているということです。そこで私は、自分のフォロワーから収益を得るためには、もっと良い方法があるはずだと思いました。

ライス氏が述べるように、スポンサード・コンテンツはFacebookやTwitterのフィードに表示される広告とそれほど大差はない。最近のオーディエンスは、インフルエンサーによる広告やスポンサードコンテンツを積極的に避けているというデータもある。

また前回述べたように広告単価は下落しており、トランプ政権下ではTikTokが突如として禁止される事態も発生した。こうした中で、クリエイターが収益化の方法を多角化させはじめたのは当然の結末だ。

一般的に、クリエイターによる収益化といえばサブスクが広く知られているが、その方法は様々だ。具体的に、整理をしながら見ていこう。

コンテンツの収益化

Substackや、Twitterによって買収されたRevueなどのニュースレターサービスで、クリエイターは自身が制作したコンテンツを有償提供することで収益を得ている。日本のnoteのように、コンテンツを単体で購入できるサービスもあるが、現在のトレンドはサブスクだ。

一方、Twitterの創業者でもあるエヴァン・ウィリアムズが創業したMediumは、月額5ドル(あるいは年額50ドル)のサブスク費用をオーディエンスに請求するが、直接クリエイターに収益が支払われるわけではない。そのため、上記のサービスとは異なる立ち位置だと言える。Substackやnoteはクリエイターが収益化するためのサービスであり、Mediumは従来の出版社とクリエイターの間に位置している。

テキストに限らず、動画や音声コンテンツの収益化も生まれ始めている。ポッドキャストをサブスクで提供するSupercastは200万ドルの資金を調達しており、Appleも2021年6月にApple Podcastsのサブスクについて、世界展開を発表した。Apple Podcastsには、ベス・シルバーズ氏とサラ・スチュワート・ホランド氏の「Pantsuit Politics」、グリン・ワシントン氏の「Snap Judgement」などクリエイターによる人気ポッドキャストのほか、CNNやThe Washington Postなど大手報道機関のコンテンツも含まれている。

また音声コンテンツには、BandcampやSoundCloudなど、クリエイターが作成した楽曲を有料配信できるプラットフォームも存在する。Spotifyなどと異なり、BandcampやSoundCloudはクリエイター自身が販売価格を決められ、制作から販売までを一貫しておこなえる。

グッズの販売

テキストや音声、動画などのコンテンツを無償提供する代わりに、グッズやサービスなどを販売するケースもある。


チャーリー・ダミリオ氏(TikTokより)

総フォロワー1億人以上のTikToker、17歳のチャーリー・ダミリオ氏はファッションブランドのHollisterやダンキンドーナツとのコラボ商品を続々と販売しており、いずれも記録的な売上を突破している。後述するが、彼女は投資家でもあり、広告やグッズ販売によって売り上げた資金を次なる成長企業に投じている。


100 Thieves(スクリーンショット)

Eスポーツで最も成功した企業の100 Thievesは、もともと人気ゲーム「Call of Duty」のプロ・プレイヤーだったマシュー・ハーグ氏によって設立された。彼らはEスポーツのチームであると同時に、SupremeのようにスウェットシャツやTシャツ、パーカーなどを販売するアパレル企業となっている。COOのジョン・ロビンソンは、自身のブランドを「わたしたちは(バスケットボール・チームの)ロサンゼルス・レイカーズに似ているが、(デジタルメディア企業の)Barstool SportsやSupremeにも似ている」と表現する。

また日本でもリリースされた写真共有アプリのDispoは、YouTuberのデビッド・ドブリック氏によって創業された。同氏は、過去の性的暴行が明らかになったことでサービスの取締役から退任しているが、クリエイターが独自のプロダクトを開発して起業した有名なケースだ。

日本でも、インフルエンサーが商品を製造販売するケースは珍しくない。しかしこうしたトップクリエイターは、自身のキャラクターとブランドを分離させはじめているという意味で、異なるトレンドが生まれてきている。

彼らにとって、商品やサービスの販売は「ステータス」ではなく、中核的な戦略だ。自身の影響力によってそれらを販売できるという利点以外にも、自身の求心力が落ちてきた時に、個人のキャラクターとは独立したブランドが構築されていることでリスクを低減できるメリットや、ビジネスモデルを多角化できる利点などがある。

コミュニティの収益化

コンテンツや商品ではなく、コミュニティへの参加権を販売するモデルもある。前回紹介したように、良質なコミュニティの構築は、成功するクリエイターにとって重要な要素だ。


NewNew(スクリーンショット)

コミュニティ構築プラットフォームCommunityでは、クリエイターや経営者などがコミュニティを作成し、ユーザーとのコミュニケーションを取っている。今年4月、Salesforce Venturesから4000万ドルの資金調達をおこなっており、クリエイターには人気スケートボーダーのトニー・ホーク、俳優のアシュトン・カッチャーやジェニファー・ロペス、音楽家のスティーヴ・アオキらがいる。


ShotCall(スクリーンショット)

ゲーム配信者向けのコミュニティ構築プラットフォームShotCallは、著名なゲーム配信者とユーザーが直接ゲームをプレイできる。視聴者は今まで、配信などで著名人のプレイを視聴するだけだったが、ShotCallのコミュニティに参加することによって、有料で配信者たちと対戦できる。配信者は1対1やトーナメント、コーチングセッションなどの企画をコミュニティ内でつくり、ファンとの参加型コミュニケーションを楽しむことできる。同社は昨年10月、220万ドルの資金調達を果たしている。

ニュースレターサービスのSubstackも2019年、コミュニティ機能を発表した。クリエイターはコミュニティを構築することができ、ニュースレターを配信するだけでなく、スレッドで読者と直接会話ができる。

OnlyfansPatreonは、そのサービス上でコンテンツが提供されているという意味では、コンテンツ販売に近いモデルでもあるが、クリエイターのファンという意味合いも強いため、コミュニティの収益化に分類できる。

クリエイター自身の収益化

クリエイター自身が、直接的に収益につながっているケースも存在する。


NewNew(スクリーンショット)

2020年にリリースされたソーシャルメディアのNewNewは、「人間の株式市場」を銘打っている。ユーザーはクリエイターへの投票権を購入して、今日なにをするか?どこへ行くか?などクリエイターの行動に投票できる。

これは、ギグエコノミーの代表格であるタスク依頼サービスのTaskRabbitで、単発仕事を依頼するために労働者の時間を購入する仕組みに似ている。ただし重要な違いは、ギグワーカーにタスクを依頼することが目的ではなく、クリエイターが「他のSNSよりもファンやフォロワーとはるかに密接につながり、その繋がりを収益化する」方法となっていることだ。


PearPop(スクリーンショット)

同じく2020年にTikTokクリエイター向けにリリースされたPearPopは、ユーザーが250ドル以上を課金することでインフルエンサーやミュージシャンなどのクリエイターと、TikTok上でコラボレーションできる。著名クリエイターの他に、MarshmelloやSnoop Dogg、The Weekndも参加している。

コラボレーションのために1万ドル支払ったケースも出てきており、今後はTikTok以外にYouTubeやClubhouse、Instagramなどにも対応していく予定だ。今年4月に、1600万ドルを調達している。

学習コースやイベントの収益化

続きを読む

この続き: 4,694文字 / 画像1枚

この記事を読むためには、月額980円のメンバーシップに参加するか単体購入が必要です。10日間の無料トライアルで、いますぐ読むことができます。

いますぐ無料トライアル

メンバーシップに関するご質問、決済や支払い方法などについては、「よくある質問」をご覧ください。

著者
編集長
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。Abema TV『ABEMAヒルズ』、日テレ系『スッキリ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説をおこなう。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジア、テクノロジー時代の倫理と政治など。
リサーチャー
The HEADLINEリサーチャー。立教大学文学部文学科文芸思想専修所属。関心領域は文学、西洋哲学、人権・LGBTQ問題など。
最新情報を受け取る

ニュースレターやTwitterをチェックして、最新の記事やニュースを受け取ってください。

おすすめの記事