NATOはどのような組織か?その基本的な組織と歴史を理解する

公開日 2022年04月12日 14:29,

更新日 2022年09月15日 10:56,

有料記事 / 政治 / 欧州 / アメリカ(北米)

  • NATOは、米国や欧州など北大西洋地域における集団安全保障のための軍事・政治同盟
  • ①共産圏への対抗 ②欧州大陸における軍国主義台頭の防止 ③欧州の政治的・経済的統合という3つの目的で誕生
  • ただし近年は「NATO域内の安全保障」を超えて「グローバルな安全保障」という広い役割を担っている

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、北大西洋条約機構(NATO)をめぐる動きが慌ただしくなっている。

そもそもロシアは侵攻に際して、NATO 加盟を目指すウクライナのあり方を批判してきた。侵攻後の停戦協議においても、ウクライナがNATOに加盟しないことを条件として含むことを求めており、一貫して NATO加盟を論点の1つに掲げている。ロシアとしては、NATO拡大によって自国の安全保障上の脅威が増すことを警戒しており、ウクライナを西側諸国との「緩衝地帯」とすることを主張している。一方のウクライナのゼレンスキー大統領も、NATO加盟は「当面は困難」と認識しており、足元でウクライナの NATO加盟が実現する可能性は低そうだ。

当のNATOは、武器供与情報提供といった手段でウクライナを支援している一方、事務総長のストルテンベルグ氏は「NATOは紛争に加わらない」と述べ、NATOによる飛行禁止区域(*1)の設定や軍事的介入に消極的な姿勢を見せている。

ところが今月12日、スウェーデンとフィンランドが今夏にもNATOへの加盟申請をおこなう意向を示した。両国はこれまで軍事的中立を掲げてきたため、今回のウクライナ侵攻によって欧州の安全保障環境が大きく変化しつつあることが伺える。

では、そもそもNATOとはどのような組織であり、どのような歴史があるのだろうか?

また冒頭で述べたように、ロシアはNATOが欧州の東側へと拡大していること(東方拡大)を嫌っており、今回の侵攻の根拠としている。東方拡大がロシアによる侵攻を招いた」という主張も一部で存在しているが、その真偽を次回記事で確認するため、まず今記事ではNATOについて概観していこう。

(*1)ウクライナのゼレンスキー大統領はNATOに、同国の上空に飛行禁止区域の設定を申し出ていたが、NATOは、同区域の設定によってNATO軍による本格的な軍事的介入が避けられないことから、区域の設定を見送っている

NATOとは?

NATOは、1949年に調印された北大西洋条約に基づいて発足した、米国・カナダおよび欧州など北大西洋地域における集団防衛や集団安全保障のための軍事・政治同盟(*2)だ。同条約は、その前文において

  • 国連憲章の遵守
  • 自由主義の擁護
  • 北大西洋地域の安定と福祉の促進
  • 集団的防衛並びに平和及び安定の維持

を謳っている。

その中核的任務は、「集団防衛」「危機管理」および「協調的安全保障」の3つだ。特徴的なのは、北大西洋条約の「第5条任務」と呼ばれる集団防衛権であり、加盟国のいずれかが攻撃を受けたり、安全保障上の脅威にさらされる場合には、加盟国による先制攻撃を含む「共同対処」が可能となっている。(*3)

原加盟国はフランス、ベルギー、オランダ、デンマーク、ノルウェー、英国、米国、カナダ、ポルトガル、イタリア、ルクセンブルク、アイスランドの12か国であり、現在は30か国(*4)まで拡大している。

(*2)厳密には、 北大西洋条約(第9条)に基づいて設置された同条約の執行機関で、北大西洋理事会での議決事項を実施する機関を指す。
(*3)正確には、国家の集団的自衛権(および個別自衛権)は、国連による集団安全保障の枠組みが機能するまでに、国連憲章51条によって例外的に認められた補完的な武力行使の権利を指す。国連の集団安全保障は、全加盟国が武力行使を慎み(国連憲章第2条4項)、ある国による侵略や破壊行為が安全保障理事会によって認定される場合には、その国への軍事的手段を含む集権的な対抗措置がとられる(国連憲章39・41・42条)ことで、それたの侵略や破壊行為の抑止することを意図する。だが、こうした枠組みが機能するか否か、そして機能するまでに時間がかかる可能性は否定できず、したがって、国連による集団安全保障が機能するまでの補完的な対抗手段として、集団的自衛権(および個別自衛権)が認められている。北大西洋条約第5条は、ある国の防衛に助勢する国としての関係を加盟国間で定めたものとなる。
(*4)加盟国(加盟年)は以下の通り。ギリシャ、トルコ(1952年2月)、ドイツ(1955年5月当時「西ドイツ」)、スペイン(1982年5月)、チェコ、ハンガリー、ポーランド(1999年3月)、エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア(2004年3月)、アルバニア、クロアチア(2009年4月)、モンテネグロ(2017年6月)北マケドニア(2020年3月)。

NATOの組織

NATOは、北大西洋理事会(NAC)と国際事務局(*5)、軍事委員会(*6)から成り立っており、本部はもともとロンドンやパリに置かれていたが、現在はベルギーのブリュッセルに置かれている。

またNATOでは、全会一致の原則が採用されており、加盟国による多数決の原理は採用されていない。軍事作戦の展開や新たな加盟国の承認なども全加盟国の賛同がなければ、実行できない。したがってNATOによる決定は、全加盟国の総体的な意志の表れと見なされる。

(*5)北大西洋理事会における意思決定とその履行に関する行政的な支援や助言を行う。
(*6)北大西洋理事会を軍事面で補佐する機関であり、軍事作戦を計画して実行する欧州連合最高司令部や、軍事能力の変革や改善を主導する変革連合軍司令部を従える。

NATOの活動

NATOの活動は、先制攻撃を含む軍事的介入から平和構築や災害援助といった人道的介入にまで及ぶが、現時点(2022年4月)では、以下のような活動が展開されている。

こうした活動からもわかるように、NATOの活動領域は北大西洋のみならず、アジアやアフリカといったグローバルな規模へと拡大している。後で詳しく触れるが、こうしたグローバルな安全保障主体としての役割を担うNATOの背景には、北大西洋地域外の不安定化や地域紛争・テロリズムをも、加盟国に対する安全保障上の新たな脅威として捉えるようになったことがある。

そして、こうしたグローバルな展開を下支えするのは、膨大な軍事費とNATO域外との協力関係だ。

NATOの軍事費

NATOの活動は、各国の軍事支出とNATOへの拠出金や投資によって成り立っている

NATO加盟国は、国内総生産(GDP)に対して国防費支出を 2% 以上に増やす目標(*7)を定められており、2021年の軍事支出総額は約11兆47億ドル(約1,270兆円)を記録し、これは世界全体の軍事支出のうち約8割を占める

また加盟国は、各国の軍事支出とは別にNATOへの拠出を定められており、2021年には総額で25億ユーロ(約3,360億円)が拠出されている。負担率は、各国の国民総所得に基づいて決定されている。

(*7)この目標値を2021年に達成しているのは11カ国で、ギリシャ・米国・クロアチア・英国・エストニア・ラトビア・ポーランド・リトアニア・ルーマニア・フランス・ノルウェーだが、国別の支出額で見ると、NATO全体における米国の割合は50%を超えており、同国はより公正な負担のために目標の遵守を求めている

NATOの域外関係

NATOのグローバルな展開を支える域外との協力関係は、地球規模に及んでいる。

平和のためのパートナーシップは、ソ連崩壊後に独立した国々や欧州における中立国との軍事面を中心とした連携をおこなう枠組みで、欧州のNATO非加盟国(アイルランド・フィンランド・スウェーデン・オーストリア・スイス)やロシア、ベラルーシ、ウクライナなど計20カ国が参加している。

ここにロシアの名前があることからも分かるように、ロシアとNATOは決して敵対関係にあるわけではなく、むしろ1991年に当時のエリツィン大統領が将来的な加盟意向を示すなど、早い段階から協力関係を築いてきた。

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✍🏻 著者
ウォーリック大学政治学修士課程
The HEADLINEリサーチャー. ウォーリック大学(英国)政治・法理論修士課程. 関心領域は、平等論やケイパビリティアプローチ、倫理と公共政策、ホームレス問題など.
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