Chandrayaan-3(DOS/ISRO

インド、月面着陸に成功 = なぜ宇宙大国を目指す?

公開日 2023年09月06日 20:54,

更新日 2023年09月06日 20:54,

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この記事のまとめ
💡月面着陸で話題のインド、なぜ宇宙を目指すのか?

⏩ ハリウッド映画より低いコストでミッション成功をアピール
⏩ 中国を念頭に宇宙開発の場で主要なプレイヤーを目指すほか、国内の混乱を収めるねらいも
⏩ ロシアに取って代わる期待もありつつ頭脳流出が課題か

2023年8月23日(現地時間)、インドは、旧ソ連・米国・中国に次いで4カ国目となる月面着陸を成功させた。さらに、月の南極への着陸は世界初だ。

月探査機チャンドラヤーン3号(サンスクリット語で「月の乗り物」の意味)が着陸する様子が YouTube でライブ配信されると、800万人を超える視聴者が集まった。

インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は、「インドは月にいます。私たちはこれまで誰も到達したことのない場所に到着しました。私たちはこれまで誰もやったことのないことを成し遂げたのです」と述べ、科学者や技術者たちに敬意を表した。


チャンドラヤーン3号に搭載された着陸船と探査車(TAVD / URSC

そして、9月2日には、立て続けに同国初となる太陽観測ミッションを開始、衛星アディティヤL1(サンスクリット語で「太陽」の意味)を打ち上げ、こちらも成功を収めている。約4ヶ月かけて太陽の周回軌道に入り、地球でオーロラを発生させる太陽からの粒子「太陽風」について調べるという

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インドのジテンドラ・シン(Jitendra Singh)科学技術相は、「インドにとって『晴天』の瞬間だ!」と述べ、打ち上げ成功を祝福した。

こうしたインドが宇宙を目指す動きは、打ち上げコストの低さから注目を集めている。詳しくは後述するが、コストの低さは、低い人件費によってのみ実現しているわけではない。たしかに、インド宇宙研究機関(ISRO)長官の月給は約25万ルピー(約40万円)と決して高額ではないが、高い技術力もコストの抑制に一役買っている

また一連の宇宙政策は、国際政治の舞台で、インドがより主導的な役割を発揮しようとする動きとしても理解できる。ロシアが力を失いつつある中、米中に次ぐ、あるいはそれと並び立つような宇宙大国としての地位を築きたい考えだ。

宇宙産業における「眠れる巨人」とも称されるインドは、なぜ宇宙大国を目指そうとしており、それは注目を集めているのだろうか。

1960年代から宇宙を目指すインド

そもそも、インドが宇宙を目指し始めた時期は、1960年代にまでさかのぼる

1961年、インドの初代首相ネルー(任期:1947-1964)は宇宙開発を原子力省の管轄にすることを決定した。そして、1962年に設立されたインド国立宇宙研究機構(INCOSPAR)が、1969年にインド宇宙研究機関(ISRO)へと改組され、1972年には宇宙省の管轄になった。

その後、インドの宇宙事業は、あまり大きな成果を挙げられずにいた

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。
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