中国は、なぜ脱炭素目標を表明したのか?

公開日 2020/12/23 19:08,

更新日 2020/12/24 03:43

有料記事 / 社会問題・人権・環境

中国の習近平国家主席は9月22日、世界193ヶ国の首脳が参加する国連総会で「2060年に二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロ」とすることを宣言した。2060年までにカーボンニュートラルになり、今後10年以内には排出量を減少に転じさせるという。

中国はなぜ、脱炭素目標を表明したのだろうか?そしてそれはどのように実現されるのだろうか?

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、地球温暖化の原因のひとつとされるCO2の排出・吸収の結果をプラスマイナスゼロにする(地球上のCO2の総量に変動をもたらさない)ようなエネルギー利用のあり方指す

カーボンニュートラルな状態を実現するためには、そもそもCO2を排出しない、植林や森林保護などの温室効果ガスを吸収する自然物を通じて排出したCO2を除去する、温室効果ガスの排出権を取引するなどの方法がある。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年10月に宣言したところによると、世界は2030年までに人為的なCO2排出量を2010年の水準から45%削減して、2050年までにネットゼロに到達しなければならないとされている。そのため、現在では国や自治体、多くの企業が取り組みを提唱・推進している。

2015年に合意された温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の下では、約120ヶ国が2050年までにCO2排出量実質ゼロ、つまりカーボンニュートラルな状態を目指すとしている。日本は「50年までに80%削減」にとどまり、主要7ヶ国(G7)では米国と並んで実質ゼロを表明していなかったが、10月26日、菅首相が所信表明演説でカーボンニュートラルな脱炭素社会の実現を目指すことを宣言して、各国と足並みを揃えることとなった。

なぜ中国は脱炭素目標を宣言したのか

日本より1ヶ月ほど先んじてカーボンニュートラルを宣言した中国だが、この発表は驚きをもって迎えられることとなった。なぜなら、中国は長年にわたって、自国が発展途上国であることを理由に排出量削減を拒否してきたからだ。

先進国は、途上国に先んじて数十年も温室効果ガスを排出し続けてきた。中国はこれを踏まえて、これから経済発展を迎えようとする発展途上国が、先進国と同量の排出量削減の負担を強いられるべきではないという主張を続けてきた。

また、目標達成の実現可能性をいぶかる向きもある。中国は現在、世界最大の二酸化炭素排出国である。中国では、化石燃料に全エネルギー供給の90%を依存しており、最も炭素消費量の多い石炭が総発電量の60%を占める。そのため、今後も経済成長を見込む中で、目標達成のためには急ピッチの変革が必要と考えられるからだ。

逆に、これは中国政府の強い自信を示唆しているとも言える。中国外交の傾向を踏まえると、彼らは国際的なコミットメントの発表について慎重な姿勢を取ることが多い。しかし、今回は強いコミットを明確に打ち出しており、確信めいたものを感じさせる。

そのため、再生可能エネルギー分野における技術進歩によって、自国の経済発展を妨げることなくカーボンニュートラルを達成できるようにな見込みを、中国政府が持っていると考えることもできるだろう。

いずれにしても「60年までにゼロ排出」は野心的な目標であるが、中国が脱炭素を推進する背景にはどのような狙いがあるのだろうか。

気候変動問題への対応

まず、当然ながら、気候変動問題への対処という理由が挙げられるだろう。気候変動が中国の生態系や社会に及ぼす負の影響は大きく、中国国内においてもその影響は危惧されている。 過去100年間で、中国の年間平均気温は0.5〜0.8℃上昇、同時期における世界の気温上昇幅の平均値をやや上回り、ここ50年間の温暖化が特に顕著である。

1990年以降、ほとんどの年で全国の年間降水量が例年を上回り、南部では水害、北部では干ばつなどの災害が頻繁に発生している。四川では今年4月に、温暖化の影響を受けたと思われる異常に激しい山火事が発生し、消火隊員ら19名が死亡、約2万5000人が避難を強いられたことも記憶に新しい。

新エネルギー経済の支配

中国がすでに主導的な地位を占めている新しいグリーン技術に大きなチャンスがあることも、中国政府が気候変動にコミットする理由のひとつである。

続きを読む

この続き: 4,020文字 / 画像0枚

この記事の全文を読むためには、メンバーシップ(月額980円または3200円)に参加していただくか、単品購入する必要があります。持続可能で良質なメディアをつくるため、下記のリンクよりメンバーシップについてご確認ください。

メンバーシップについて知る

または、記事を単体購入する

SNSでおすすめする
著者
早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社マイナースタジオの立ち上げに参画。関心領域は、政治思想や東南アジアの政治経済など。Twitter : @akabaneshuta
最新情報を受け取る

Twitterをフォローして、最新の記事やニュースを受け取ってください。

おすすめの記事

1月21日に知っておきたいニュース

無料記事 / 今日知っておきたいニュース

こんにちは、最近ダイエットをしている編集長の石田です。ちょっと痩せてきた気がしますが、引き続きやっていきます。では、今日もやっていきます〜!1. 河井案里参院議員に有罪判決 東京地裁 確定すれば当選無···

1月20日に知っておきたいニュース

無料記事 / 今日知っておきたいニュース

こんにちは、編集長の石田です。今日もやっていきます〜!1. Biden Inaugurated as the 46th President Amid a Cascade of Crises(The N···

電気代、10倍のリスクも。なぜ電気が不足、料金が高騰しているのか?

有料記事 / 社会問題・人権・環境

年明けから全国的な電力需要の逼迫が生じており、危機感が強まっている。東京電力ホールディングス株式会社らが、今月10日と12日の2回に渡って照明や電気機器の使用を控えるなど「電気の効率的な使用」を求めた···

なぜコロナ禍以降、アジアへの差別が強まっているのか?「中国ウイルス」から黄禍論

有料記事 / 社会問題・人権・環境

コロナ禍に見舞われた2020年から2021年、あるゲームが物議を醸している。『サイバーパンク2077』は、キアヌ・リーヴスが登場キャラとして参加するなど、600億ドルを超えるゲーム市場に向けた期待の新···

韓国、衝撃の「n番部屋」事件とは

無料記事 / 社会

今月17日、韓国で衝撃を呼んでいる「n番の部屋」事件の首謀者として1人の男性が逮捕された。すでに筆者は、本事件について下記YouTube動画を公開しているが、動画では扱えなかった事件の全貌について、現···

日本学術会議の任命拒否問題とは何であり、何が問題なのか?

無料記事 / 政治・国際関係

今月1日、日本学術会議(学術会議)の新会員について、同会議が推薦した会員候補のうち6名を菅義偉首相が任命しなかったことが、しんぶん赤旗によって報じられた。これに対して、野党から批判が集まった他、Twi···

K-POPの光と闇。世界的な成功の裏に、活動休止や極端な選択が相次ぐ理由

有料記事 / 社会問題・人権・環境

韓国の大手芸能事務所JYPエンターテインメントの女性グループNiziU(ニジュー)のミイヒが、体調不良のため休養することが発表された。同事務所のグループTWICEの日本人メンバーであるミナも、2019···

フェミニズムとは何か?:なぜ女性の権利ばかりが主張されるのか

無料記事 / 社会問題・人権・環境

わたしたちは、フェミニズムの時代に生きている。フェミニズムを時代性やブームのように捉えることに異論はあるかもしれないが、#MeTooムーブメントや韓国の書籍『82年生まれ、キム・ジヨン』のベストセラー···

なぜ日本は核兵器禁止条約に参加しないのか?

有料記事 / 政治・国際関係

8月9日は、6日の広島市につづく長崎市への原爆投下の日である。毎年この時期になると話題になるのが、日本の核兵器に関する立場だ。6日に広島市で開かれた平和記念式典であいさつした安部首相は、「唯一の戦争被···