世界中で多発する洪水と気候変動。各国の対策は?

公開日 2020/07/15 09:22,

更新日 2021/07/17 18:00

有料記事 / 社会問題・人権・環境

  • 目次
  • 世界中で広がる洪水被害
  • 気候変動への認識
  • 対処療法的な対策 有料
  • 自然にアプローチする対策 有料

平成29年7月九州北部豪雨や平成30年7月の西日本豪雨、令和元年の2つの巨大台風、そして令和2年7月の豪雨と、日本各地で集中豪雨や台風による水害が頻発している。避難所での新型コロナウィルス感染拡大のリスクもあることから、こうした水害問題はこれまで以上に深刻さを増している。

一方で、国内企業は施設の浸水対策をあまりおこなわず、保険を頼って代替供給源を確保することでサプライチェーンを守ろうする傾向があることから、中小企業への経済面での打撃も大きな問題となっている。

2010年から2019年の間の年間の地滑りの平均数は、1990年代や2000年代と比較して約50%増加しており、1時間あたり50ミリメートル以上の降雨量が記録された頻度も高まっている。こうした傾向には地球温暖化による気候変動の影響があることが指摘されており、日本に限らず世界的に影響を被っている可能性が考えられる。

洪水など水害は、世界的にどのような状況となっているのだろうか?特に気候変動との関係において、各国では水害の原因をどう捉え、どのような対策を取っているのだろうか?

世界中で広がる洪水被害

世界における洪水被害はどのようなものなのだろうか。

国連防災機関(UNDRR)が運営するPrevention Webによると、アジア全域で激しいモンスーンによる豪雨や洪水が発生しており、新型コロナウィルスの感染拡大も合わさってマルチハザードの様相を呈していることが指摘されている。

例えば中国は、2020年7月に過去30年間で最悪の洪水に見舞われ、武漢をはじめ全国各地で被害が続出した。これは1998年に起きた洪水を上回る被災規模である。また、インドネシアも同年1月にジャカルタを中心に洪水が起き、各地で地滑りと鉄砲水の被害が出た。この洪水も2013年の豪雨以降、インドネシア国内で最悪の被害をもたらした。

欧米でも被害拡大

しかし、こうした豪雨や洪水による被害はアジア圏にとどまらず、ヨーロッパやアメリカ、アフリカなどにも及んでいる。

イギリスでは、2019年の冬に大規模洪水が起こり、イングランド北部から中部、サウスウェールズからスコットランドにかけて被害をもたらした。洪水リスクを抱える地域向けの割安の保険を提供するFlood Reによれば、前年比の10倍にあたる1億6千万ポンドもの保険請求があったほどである。一方で、こうした洪水の後に訪れた2020年の春は記録的な日照時間となっており、当局はイギリスが今後ますます両極端な気候になっていくことを警戒している。 

2012年のハリケーン「サンディ」によってマンハッタン南部で深刻な被害が出たニューヨークでも、海面上昇が続けば、今後ますます洪水のリスクが高まるとしており、2019年に5億ドルもの対策費を投じることが発表された。都市の半分が海抜2メートルにあり、同じく海面上昇に伴うリスクを抱えるナイジェリアの首都ラゴスも2020年6月に豪雨被害を受けており、排水システムの脆弱性や都市計画の杜撰さが浮き彫りとなっている。

このように、洪水被害は世界中で起きており、近年ますますその被害は拡大している。では、こうした洪水の原因を各国はどのように認識しているのだろうか。

気候変動への認識

洪水の被災国では、こうした異常気象による洪水の原因を多かれ少なかれ気候変動と結びつけて考えられており、背景に地球温暖化があると認識されている。

2015年にチェンナイで大規模洪水があったインドでは、二酸化炭素排出量の増加が極端な降雨につながる可能性が大学の研究グループによって指摘された。チェンナイは、人口一人当たりの温室効果ガス排出量が多い都市の1つであり、地球温暖化対策の課題とされている。

中国でも、1951年以降続く国内の平均気温と最高気温の上昇に触れながら、洪水を直接的に気候変動と結びつけることは難しいとしつつも、極端な気象現象が厳しさを増している背景に気候変動があることが専門家によって指摘されている。

国全体にも影響

インドネシアの首都ジャカルタは海面上昇で水没するリスクを抱えており、政府は首都移転や住民の他島への移住政策などを検討しているものの、水害に対する根本的な解決につながらないことや、さらなる所得格差の拡大を招くとして批判が相次いでいる。このため、インドネシアでは将来的な水害を避けるために、植林や地下水の採取制限など長期的な環境保護を含んだ対策の必要性が訴えられている

2020年6月末、1990年代以来最大規模の洪水が起こったウクライナでは、夏の高気温や降雨量の増加が観測されており、その理由として違法伐採による深刻な森林破壊が挙げられている。違法伐採が横行するルーマニア国境沿いのカルパティア山脈は、奇しくも洪水で大きな被害が出たエリアであり、気候もさることながら山の貯水力低下も洪水の一因と見なされている

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、気候変動が降雨や融雪といった洪水の原因となる水関連変数のいくつかに「検出可能な影響を与えた」ことが発表されている。このことからも、気候変動が洪水に影響を与えているという認識は、世界的に共有されていると考えられる。

では、こうした洪水に対して各国はどのように対応しているのだろうか。

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著者
法政大学ほか非常勤講師
早稲田大学文学部卒業後、一橋大学大学院にて修士号、同大学院博士後期課程で博士号(社会学)を取得。専門は社会調査・ジェンダー研究。
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