・出遅れた米国は急ピッチで対応中、EUは打倒米中を目指す。
・中国では独自のエコシステムが発展、日本は税制見直しが高いハードルに。
Web3というワードがビジネストレンドとして注目される中、各国政府も急速にこの分野への対応や法整備などを進めている。
Web3とは、ブロックチェーン技術を活用した分散型のウェブネットワークや、その技術を使った次世代のウェブのあり方のことだ。GoogleやFacebookのような米国発の巨大IT企業(ビッグ・テック)によって支配されるようになった、Web2.0の枠組みを塗り替えるインターネットの新たな潮流として期待を集めている。
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Web3に着目しているのは、民間企業だけでなく、各国政府も同様だ。Web3を経済成長の機会と捉えて国の成長戦略に組み込むとともに、マネーロンダリングなどの金融不正の抜け穴として利用されることを避けるべく、適切な規制を設けるための枠組みを検討しはじめている。その背景には、Web2.0で米国に大敗した経験を踏まえ、経済的な成功を収めたいという各国の狙いがあることも指摘できるだろう。
それでは、Web3の世界では、どの国が覇権を取ることになるのだろうか?具体的な各国のWeb3対応、Web3政策を比較してみよう。
Web3でも覇権を狙う米国
暗号資産に強く批判的だったトランプ政権下において、Web3政策で遅れを取ってきた米国政府は、Web2.0に続いてこの分野でも世界の覇権を獲得すべく、現在急ピッチで法整備と国家戦略の検討を進めている。
すでに米国では、世界最大規模の暗号資産取引所Coinbaseを含む数々のWeb3サービスが台頭してきており、大手VCのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のような投資家もWeb3を国家レベルの成長機会であるとしてロビー活動の一大キャンペーンを張っているなど、マーケットの動きは活発だ。にもかかわらず、これまで米国政府の対応は遅れており、暗号資産業界からは批判が集まっていた。
米国政府がまず取り組んでいるのは、Web3の中核を担う「トークン」に関連する国レベルでの規制の策定だ。トークンとは、暗号資産を始めとするデジタル資産の一種で、これを通じてユーザーはWeb3関連のサービスやコンテンツを所有したり、収益を得たりすることができる。
先述したとおり、こういったデジタル資産の法整備について、これまで米国では対応が遅れていた。連邦準備理事会(FRB)や証券取引委員会(SEC)などが個別に規制を設けるのみで、政府として統一された規制が示されなかったからだ。
その背景には、トランプ政権が暗号資産に対して極端に否定的な立場をとったために、建設的な議論が進まなかったことや、ドルの安定性の維持や金融不正の防止のために規制当局が保守的な姿勢を崩さなかったことがあるとされている。
遅れを取り戻すべく方針転換
しかし、今年3月、バイデン大統領はこれまでの方針を転換し、大統領令を発出して早期に国家レベルでの暗号資産戦略を示す意向を示した。
この大統領令は、米国内の関係する各機関・省庁へ、暗号資産に関する利点とリスクをまとめた上で、適切な規制を検討するための報告書を180日以内に提出するよう命じるものだ。合わせて、暗号資産に関連する6つの政策目標も示している。
今回の大統領令の特徴は、従来と比べて暗号資産に対してかなり前向きな立場を取っていることだ。そして、その内容はこれまで政府の方針に批判的だった暗号資産業界からも好意的に受け止められている。大手暗号資産取引所CoinbaseとNFTプラットフォームOpenSeaの取締役を務めるキャサリン・ハウン氏からは、「Web3におけるアメリカのリーダーシップにとって正しい方向への一歩であり、現在のひどく断片的な規制状況に秩序をもたらす可能性がある」という評価を受けた。
このような方針転換がなされた理由は、やはりWeb3政策の遅れに対する危機感だ。中国でのデジタル人民元の台頭への懸念や、暗号資産市場の急速な膨張も、米国政府が巻き返しを急ごうとするきっかけとなった。
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もちろん、大統領令に対する反応は一様に肯定的なものだけではない。大統領令では、金融不正や環境問題などの問題への対策を検討することが示されたが、それでもまだこれらのリスクを懸念する声がある。また、民主党内でも、暗号資産やその関連技術に対して、金融システムの安定性に対する脅威を高めているとして批判を強めるエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)ら懐疑派がいる。
しかし、多くの場合、今回の大統領令は、バイデン政権がWeb3の関連市場を米国にとっての重要な経済活動の一部だと認識している証拠として受け取られており、今後この新しい技術領域におけるイノベーションとルールづくりの両方に、米国政府が積極的に取り組んでいくことが予想される。
ロビー活動も超活発
米国でもう一つ印象的な動きは、民間におけるWeb3の推進に向けた政策的な熱量が高いことだ。