Black Shelby in San Francisco, United States(Joey Banks, Unsplash) , Illustration by The HEADLINE

なぜEUは、エンジン車の新車販売を一転して認めたのか?日本への影響も

公開日 2023年03月30日 22:55,

更新日 2023年09月08日 16:35,

有料記事 / 欧州 / 脱炭素 / ビジネス

この記事のまとめ
💡EUが「エンジン車の新車販売禁止」を撤回、e-fuelと呼ばれる合成燃料を利用すればエンジン車の販売可能に

背景には

① 自動車大国・ドイツの反対と、同国内のe-fuel開発事情
② 大国に有利なEU独特の採決方法

e-fuelの開発促進、日系メーカーにとっても追い風か

EUの自動車政策に注目が集まっている。内燃機関(エンジン)を搭載する乗用車などの新車販売を禁止する方針が、条件付きながら撤回されたためだ。

EUは、2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロ達成を目指している。そのための目玉政策の1つが「エンジン車の新車販売禁止」だったが、今月28日、この方針は正式に撤回された。

方針転換の大きな要因となったのが、自動車大国・ドイツによる反対だ。

では、なぜドイツはEUの目玉政策に異を唱え、その“異議申立”は成功したのか。そして、今回の方針転換は今後どのような影響をもたらすのだろうか。

方針転換の経緯

そもそもエンジン車の新車販売禁止の方針(以下、エンジン車販売禁止法案)は、EUの行政府にあたる欧州委員会が2021年7月に提案した。具体的には、乗用車と小型商用車のCO2排出基準を改正する規則案が提案され、2035年までに新車のCO2排出量を2021年比で100%削減する目標が掲げられた。

この目標は事実上、ハイブリッド車を含めたエンジン搭載車の販売が、2035年から禁止されることを意味する。

EUは、2050年までの温室効果ガス(GHG)排出量の実質ゼロ達成を目指す長期計画「欧州グリーンディール」を掲げている。本法案も、2030年までに1990年比でGHG排出量を55%削減する政策パッケージ「Fit for 55」の一部として提案された。

難航する立法手続き

2023年に入り、エンジン車販売禁止法案の立法手続きは本格化していた。

EUでは新たな規則などを立法する際に、加盟国から選出された議員で構成される欧州議会と、加盟国の閣僚で構成されるEU理事会の双方で承認されることが必要になる。本法案は今年2月に欧州議会で承認されたが、問題となったのはその後のEU理事会での議論だ。

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
北海道大学大学院農学院所属。専門は農業政策の歴史・決定過程。関心領域は食料・農業政策、環境政策など。一橋大学法学部卒。
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